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2021.09.24

温泉だけじゃない!魚のうまみを味わう大分県の万能調味料「ごまだし」【ニッポン地元メシ#5】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

日本一の温泉県としても知名度の高い大分県。

実は温泉以外にも食や文化、アートに至るまで魅力が多いのですが、特に海産物は有名です。第5回は、そんなおんせん県大分から「ごまだし」を紹介します。

手荷物レーンから握り寿司!?

みなさんは、大分空港に降りたことはありますか?空港で預けた手荷物が流れてくる手荷物レーンが動き始めると、最初に出てくるのは荷物…ではなく「握りずし」(模型)です!
マグロやエビ、ウニなど、なにが流れてくるかはお楽しみ。これは地元の海産物をPRする取り組みで、ここからも大分県は海の幸が魅力なことが伝わってきます。

今回ご紹介する「ごまだし」は、豊後水道で獲れる絶品の海産物が集まる漁港、大分県佐伯市の普段の食卓に欠かせない郷土調味料です。

ごまだしってどんなもの?

提供:大分県

提供:大分県

その名前から「ごま」が含まれていることと、「うま味」が感じられそうというイメージがわきますね。

ごまだしはエソという魚を焼いてほぐし、香り良く煎ったごまとともにすり鉢ですり合わせ、さらに醤油やみりん、砂糖を加え混ぜ合わせて作る調味料です。宮崎県の郷土料理・冷や汁とも似ていますが、味噌が入っていないのが大きな違いです。

あまり聴き慣れないエソという魚は、スラっと細長い体と小さな頭、鋭い歯をもつという見た目の特徴から「蛇のよう」といわれることもあります。西日本ではかまぼこやさつま揚げなどで使われる、高級すり身の材料として知られています。

大分県の佐伯地方で良く獲れ、味は良いのですが小骨が多く、サイズが小さいためあまり市場で出回りません。そんな魚をもったいないから何かにできないかという思いから生まれたのが、ごまだしなのです。

ごまだしを使った郷土料理として親しまれているのが「ごまだしうどん」です。
作り方はとても簡単。茹でたうどんにごまだしやお好みの薬味をたっぷりとのせ、お湯を適量注ぐだけ。うどん以外にも和え衣として使ったり、おにぎりに塗って焼く、オイルと混ぜてドレッシングとして使うなどのアレンジレシピも多くみられます。

タンパク質とビタミンEが豊富

ごまだしの魅力は何といっても「魚」をおいしく手軽にいただけること。

魚料理は「生ごみが出る」「捌くのが大変」「鮮度が保てず難しい」と敬遠されがちですが、ごまだしは魚を加工し瓶詰になっていることでそれらをクリアし、使いやすいのが嬉しいところ。

魚に含まれる良質なタンパク質は、筋肉や骨など私たちの身体の土台となる欠かせない栄養素。成長期の子どもたちはもちろん、大人にとっても大切です。また、ごまには「若返りのビタミン」とも言われる強い抗酸化作用を持つビタミンEが含まれています。

秋は夏に比べて過ごしやすい季節ですが、まだまだ紫外線も強く、夏バテを引きずりやすい季節でもあります。タンパク質やビタミンをしっかりと補給することで「秋バテ予防」にも役立ちます。

ごまだしだけじゃない。大分のすり身料理

さいき 海の市場〇(提供:大分県)

さいき 海の市場〇(提供:大分県)

海産物が有名な大分県では、ごまだし以外にも知る人ぞ知るすり身を使った郷土料理がもう一つあります。それは「すり身いなり」です(海鳴り寿司とも呼ばれています)。

佐伯市蒲江という地域で昔から親しまれてきた郷土料理で、普通のいなりずしとの違いは、いなりの皮が魚のすり身でできているということ!
魚のすり身を油で揚げ、和風だしで甘辛く煮込んだものがいなりの皮となるため、油揚げの皮と比べるとプリプリとした食感とうま味が特徴です。

こちらも魚を丸ごとすり身にしているためタンパク質が豊富で、ごはんとあわせることで栄養価もアップ!さらに酢飯を使うため、さっぱりといただけます。このように魚をすり身にして加工するというのは、新鮮でおいしい魚がたくさん取れる地域ならではの食文化です。

おうちご飯でも活用してみて

提供:大分県

提供:大分県

ごまだしは魚特有の臭みや苦味がなく、うま味や香ばしい風味、甘みがあるために子どもでも食べやすいのが特徴です。味付けもシンプルで添加物を含まないものが多いため、安心して口にできますね。
最近ではエソ以外に鯛やアジを使ったごまだしもあるので、食べ比べてみるのも楽しいでしょう。

大分県のスーパーはもちろん、成城石井、AKOMEYA、DEAN&DELUCAなど一部食料品店でも取り扱いが増えています。旅行に行きにくい昨今ですが、お近くのお店やオンラインショップでご当地調味料が手軽に購入できるのは、今の時代ならではかもしれません。

ごまだしうどんのように、とても手軽に作ることができて栄養も含まれる料理は、おうち時間が増えて料理を作るのに疲れてきた方には強い味方になるのではないでしょうか。ぜひおいしく調理された「ごまだし」を活用してみてくださいね。

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

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大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

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