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2021.05.13

子どもの「ネガティブ発言」否定してはいけない訳|どんな声かけが強い心を育むことにつながるか

東洋経済オンライン

「なんでできないの? 」
「そうやってやる気がないからダメなんだ」
「そんなクヨクヨしないの! 」

“ストレスに弱い"“自信がない"“すぐあきらめる"――。子どもにそんな様子が見られると、ついついこんな言葉をかけてしまいがち。

逆境に負けず、心の強い子どもに育てるには、いま注目のキーワードである“レジリエンス(立ち直れる力、逆境を乗り越える力)"を鍛えることが必須です。そして、このレジリエンスは、子どもを批判したり、非難する言葉では育たないのです。

新著『子どもの心を強くする すごい声かけ』では、毎日の子どもへの声かけで、レジリエンスをはぐくむ秘訣が紹介されています。本稿では、同書から一部を抜粋しお届けします。

ネガティブ感情は否定しないで受け止める

親であれば、子どもにはいつでも明るく、幸せな気持ちでいてほしいと願うものです。そのために、ある日子どもが悲しみや怒りの気持ちを態度や言葉にあらわしてきたとき、ついついそれを否定するようなことを言ったり、子どもの気を紛らわそうとしたりしてしまいます。ときには、叱りつけてしまうことさえあるかもしれません。

しかし、実は困難や逆境に直面して、子どもがネガティブな感情を抱いたときこそ、強くしなやかな心を育てるうえで重要なターニングポイント。このときに、子どもが抱いたネガティブ感情を否定せず、親としてどう受け止め、どう声かけをするか? 

それによって、その後の子どものレジリエンスに大きな差が生まれます。
では、このネガティブ感情をどう受け止め、どんな声かけをすれば心を強くはぐくむことにつながるのか、お伝えしていきましょう。

私たちは日々、さまざまな気持ちを感じていて、その感じ方は成長するにしたがって変化していきます。たとえば、赤ちゃんのころの「快」か「不快」か、という単純な感じ方から始まり、成長するにしたがって、徐々に「喜び」「怒り」「悲しみ」「恐れ」といった気持ちまで、より複雑な感情を感じられるようになります。

ところが、この子どもの「気持ちの成長」について、親はつい見逃してしまいがちです。「歩けるようになった」「ひらがなが書けるようになった」などの成長はわかりやすいのですが、心の成長については、目に見える変化がない分、気がつかないことが多いようです。きょうだいにやきもちをやいて悪さをしたとき、その感情を感じられるようになったことを親が喜ぶことはあまりないかもしれませんね。

そのため、子どもの気持ちの成長において、とても大切な親のサポートが抜け落ちてしまうことが少なくありません。しかし、たくましく、幸せな人生を送るためには、外から見える成長に加えて、目には見えない心も育てていくことが欠かせません。

「気持ち」と仲良くなることが大事

子どもの心を育てるうえで基本となるのが、「子どもが自分自身の気持ちと仲よくなる」ように導いていくことです。感情知能を育てていくことともいえます。感情知能とは、自分や他人の感情を認識、理解し、うまくとり扱う能力のことです。この力は、よりよい選択や行動につながり、良好な人間関係を築いたり、学業によい影響を与えたりすることがわかっています。

そして、この力は自宅や学校で接する大人に影響されます。ですから、親が子どものコーチとなって、子ども自身や他人の感情について話し合うことで、気持ちと仲よくなる力を伸ばすことができるのです。

「そう言われても……具体的に何をすればいいの?」と途方に暮れてしまうかもしれません。そこで、まずは「気持ち」について理解を深めてみましょう。

私たち人間が日々感じているさまざまな気持ちについて、心理学においては一つの考え方として「ポジティブ感情」と「ネガティブ感情」とに分類できます。楽しい、うれしいといった、感じると心地よさや喜びを覚えるのが、ポジティブ感情。そして、悲しみや不安やイライラなど、体験すると不快な感じになるのがネガティブ感情です。

どちらの気持ちがよい悪いということではありません。感じると快か不快かという分類です。どちらのタイプの感情もそれぞれに意味があり、生きていくうえでは大切であり、誰もが持っているものです。

多くの人が、できるならば味わいたくないし、遠ざけておきたいと思うネガティブ感情には、どのような意味があるのでしょうか? たとえば、夜道を歩いているとき、背後からカサッと物音がしたとします。心臓がドキドキして、冷や汗をかくと同時に「怖い!」と感じ、その気配に意識は集中し、命を守ろうと逃げる態勢になるのではないでしょうか。

恐怖を感じるから、危険な状況から逃げようと試みることができます。ほかのネガティブ感情も同じように意味があります。「怒り」は自分の大切なものが侵害されたというサインであり、大切なものを守ることにつながります。「悲しみ」は失ったものの大切さを教えてくれますし、「落ち込み」は体を休めて心身を守る必要があるというサインになります。

つまり、ネガティブ感情は進化論的に、生存本能として私たちが自分の命を守るために存在しているのです。このような重要な役割があるため、人はネガティブな感情を感じやすく、ネガティブな出来事がより頭に残りやすいといわれています。これを「ネガティビティ・バイアス」と呼びます。その日のいやな出来事がずっと頭に残ったり、子どものできない部分のほうが気になったりしてしまうのも、この特徴のせいです。

ネガティブ感情も成長には必須

私たち大人は、子どもがネガティブ感情を示したときに、ポジティブな気持ちになるようにと盛り上げたり、機嫌を直そうと試みたりすることがあります。しかし、ネガティブな感情を感じられること、そして、ときにネガティブな感情を持ちながらも行動する力を育てることは、強い心を育てるうえで欠かすことができません。

お子さんがネガティブな感情を表現したときは、無理に気持ちを変えようとしたり、判断したりすることなく、まずはじっくり話を聞き、そのままの気持ちを認めて受け止め、感情を感じられる時間を与えてください。そのうえで、子どもが気持ちを立て直して問題を解決していけるよう、サポートをしていきましょう。

子どものネガティブ感情を受け止めたあと、私たち親はどう心をサポートすればよいのでしょうか? それは、「子どもの気持ちを言葉にしてあげる」ことです。

自分の気持ちをあらわした言葉を親からかけられることで、その出来事から少し距離をおくことができ、出来事へのストレスを軽減し、気持ちを楽にしてくれる効果があります。また、子どもは「私の気持ちを正しくわかってくれている。受け止めてくれている」と感じ、傷ついた心を癒やすことができます。

この繰り返しによって、親子の絆が深まり、よい関係性を築いていくことができるのです。私たち大人も不安なとき、イライラしたとき、その気持ちを抑え込まずに、頭の中であっても言語化することで、気持ちが落ち着くことがわかっています。

では次に、実際にあった出来事で、「ネガティブ感情を受け止め、言語化する」ということを、わかりやすく解説してみましょう。

クラス替えでなじめない子にどう接する?

9歳の女の子、あおいちゃんは、学校のクラス替えでいちばん好きなお友達といっしょのクラスになれなかったと落ち込んでいました。学校から帰宅し、しょんぼりと「大好きなお友達と同じクラスになれなかったよ」と言いました。

お母さんは「そう。別のお友達がすぐできるよ。大丈夫よ。別のクラスでも放課後は遊べるでしょ」と答えたそうです。それでも涙ぐむあおいちゃんに、さらにお母さんは「めそめそしていたら、新しいクラスのお友達もできないわよ」と言ったそうです。

お母さんは、別のお友達の存在に気づかせてあげたり、励ましたりするために、そう声をかけたのでしょう。これらのことは前に進むためには大切ですが、お母さんは、その前にいちばん大切なことを忘れてしまっていたといえます。

それは、子どもの気持ちに目を向け、それを受け止めるということ。そして「子どものネガティブな気持ちを言葉にして声をかけてあげる」ことなのです。その言葉が、子どもの気持ちを楽にして、状況を乗り越えるために必要になるからです。

たとえば、残念そうな表情で「さみしいね……大好きなお友達だものね」「一緒のクラスになれなくてがっかりだよね」「違うクラスになって寂しくて心細いよね」、そうお母さんから声をかけられたとしたら、あおいちゃんは、自分の気持ちを理解してもらえたと感じられたことでしょう。また、一歩踏み込んで「今までと違う変化があるって、怖くて不安になるよね」と、直面している出来事の意味を言語化していくことで、子どもは自分の心の整理をすることができます。そこでやっと出来事に対する
ストレスが軽減し、前向きな視点を持てるようになるのです。

すぐに前を向くように励ますことより、まずは今感じている気持ちを受け止めて、言葉にしてあげることが立ち直る力を発揮するには近道となります。感じている心の痛みの存在を認め、そこに「共感の言葉」で命を吹き込むことは、心の苦しみを軽減することにつながるのです。

感じている気持ちを言葉で言いあらわすことを「気持ちのラベリング」といいます。カリフォルニア大学のマシュー・リーバーマン教授らの研究では「自分の感情を言葉にすることが、嫌な出来事に関するネガティブな感情やストレスをやわらげるのに効果的である」ということが報告されています。

怒りの感情を爆発させて暴れたり、泣きわめいたりといった問題行動は、この気持ちのラベリングがうまくいっていない可能性もあります。自分の感情を自分で言語化できるようになると、感情の抑制がうまくいくこともあります。

また、大人がさまざまな場面で感情をあらわす言葉を使うことは、子どもたちが自分の感情に気がつく力を育てることにもつながります。たとえば、「お母さん、探し物が見つからなくて、イライラしちゃうよ」「お父さん、大好きな野球チームが負けてくやしいなあ」というように、日常生活の中で感情をあらわす言葉を使っていきましょう。自分自身がどんなときにどんな感情になるのかを知ることは、自分を知ることにもつながります。

「よい/悪い」の表現には要注意

このとき注意したいのは、「気分がいいな」とか「最悪の気持ちだ」というような、よい悪いという表現を使うこと。「さまざまな感情を持つことはいいこと」と伝えるうえで、子どもたちに混乱を招く可能性があります。

子どもたちは「ネガティブ感情は悪いもの」「悪い感情を持つ自分はダメな子だ」と考えがちです。ふだんの会話の中でも、よい悪いを使用せずに感情について表現するようにしましょう。

自分の感情に気がつけるようになると、他者の感情にも気づくことができるようになります。「お兄ちゃん、今日はずっと下を向いていて、お話ししないね。落ち込んでいるのかな……」といったように、他人の気持ちを推測することができるようになります。

他者の気持ちを理解する能力が高くなれば、相手に対してかける言葉選びや行動も変わります。社会の中でのコミュニケーションにも大きく影響することは、まちがいありません。

気持ちをあらわす言葉をたくさん用意しておく

子どもたちは大人が想像するよりも、毎日、さまざまな感情を感じているものです。

私の娘が4歳のとき、それを感じた出来事がありました。ある日、お友達が遊びに来るはずだったのが、急遽家庭の都合で来られなくなったときのことです。私は「お友達と遊べなくて悲しいね」と声をかけましたが、娘はピンとこない様子だったのです。そこで、少し考えて「がっかりしたのかな?」と聞いてみたところ、「うん!」と大きくうなずき、納得した様子を見せました。

私は、まだ幼いからと、単純でわかりやすい「悲しいね」という言葉を当時よく使いましたが、「がっかり」という言葉の持つニュアンスや意味を、いつの間にか理解していた娘にとても驚かされました。


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子どもは気持ちをぴったりあらわす言葉に大きく反応します。だからこそ、子どもの感情を言語化して、「感情のラベリング」を行うときには、私たち大人はできるだけ実情に沿っていて、その子の心のままを表現して声をかけることが望ましいといえます。同時に、感じている感情は子ども自身のものであって、たとえ親であっても全く同じ気持ちを持つわけではないことを認識できるようにすることも大切です。

ですから、先の私と娘の例のように、「こんな感じかな」と例を挙げながら子どもの感情を探ってみるのもおすすめです。大事な点は、子どもの気持ちを言いあらわす言葉をできるだけ数多く用意すること。そして、気持ちは受け止めながらも、感情移入しすぎず、子どもの感情を映す鏡となって見せてあげることです。

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足立 啓美 :一般社団法人日本ポジティブ教育協会代表理事

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