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2021.04.19

シニア世代の元気ごはん ~減塩と美味しいを両立するコツをロジカル解説~

kencom公式:管理栄養士・前田 量子

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美味しい食事に塩分はつきもの。日本人は1日平均10gの塩分を摂っているといわれていますが、健康のための食塩摂取量をご存じですか?

1日の塩分摂取量(食塩摂取量)の基準は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020年版」によると、男性7.5g未満、女性6.5g未満で、日本高血圧学会では1日6g未満、WHO(世界保険機関)では1日5g未満とされています。そのため多くの方が摂りすぎといえるでしょう。

塩分の摂り過ぎによりリスクが高まるのが「高血圧」です。高血圧は健康診断などで判明しても自覚症状がないため放置してしまうことが多く、動脈硬化や腎臓病、脳梗塞や心臓病と様々な病気の要因になるとされているため、普段から血圧を正常に保つことが大切です。

高血圧は塩分の摂り過ぎだけでなく不規則的な生活やストレス等、様々な要因がありますが、今回は「減塩」についてご紹介します。いつものあの料理を塩分カットし、減塩しながらも美味しく作るコツをお伝えいたします。

減塩・低脂質・高栄養素・超簡単!全て叶えるホイコーロー

中華料理の中でも人気の「ホイコーロー」。中華は塩分と脂質が多くなりがちですが、今回はどちらも抑える方法をご紹介します。

調味料は1つだけ。一切準備していなくても10分ほどで完成する優れものです。また、この一皿で1日の1/3のたんぱく質と野菜が摂れる上に、塩分もわずか1.5g!まさに、減塩・低脂質・高栄養素・超簡単を全て叶える一品です。

材料(1人分)

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豚もも肉 100g
春キャベツ 80g(大1/2枚)
チンゲンサイ 20g(1枚)
赤ピーマン 30g(1個)
焼肉のたれ 大さじ1と1/3
片栗粉 小さじ1

主な栄養素(1食分)

・208kcal
・たんぱく質 23g(男性の1/3以上、女性の約1/2)
・食塩相当量 1.5g(男性の20%、女性の20%弱)
・野菜量 130g(1日の1/3以上)

※()内は、成人男女共に1日に必要な量の割合です。

作り方

1.豚もも肉は3cm幅に切る。キャベツは大きめのざく切りに、チンゲンサイはそぎ切り、赤ピーマンはせん切りにする。(チンゲンサイはそぎ切りにすることで味がよく染みます)

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2.耐熱容器に豚もも肉、焼肉のたれ、片栗粉を加え、よく揉みこむ。

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3.他の材料を全て加え、お肉が全体に散るように混ぜる。

4.ラップをして600Wの電子レンジで6分加熱する。

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5.取り出したら全体をお箸などでよく混ぜ、豚肉に火が通ったら出来上がり。

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ホイコーローの減塩ポイントは?こうすれば物足りなくない!

その1:味にメリハリをつける

ホイコーローのような肉も野菜もたっぷりのおかずは、全体にまんべんなく調味すると調味料の量が増えてしまい、塩分が高くなってしまいます。しかし主役であるお肉にしっかり味がついていれば、全体にメリハリがつき美味しく感じられます。

今回の分量であれば一般的なホイコーローで2.2gほどの塩分が必要ですが、このレシピでは塩分が1.5gと3割程度減塩しています。これが減塩!?と思うほど想像よりも非常にしっかりとした味に仕上がっているはすです。

その2:水分はなるべく入れない

料理は水分が多く入ると塩分が水分の方に流れてしまいます。そのため料理自体がぼやけた印象になってしまい、調味料を増やすことにつながります。

今回のレシピでは、野菜に含まれる水分があるため、加えるのは焼肉のたれ20mlのみ。こうすることで食材にしっかり調味料が付着し、美味しく感じられるのです。

その3:電子レンジを使う

料理は同じ塩分量でも、味付けのタイミングや調理法で感じ方はずいぶんと変わるものです。

電子レンジは食材がもともと持っている水分を使って加熱することができるため、食材の旨味を損失することなく料理ができる、というメリットがあり、これが結果減塩につながるのです。

また、電子レンジは「少量調理にむいている」「油を大幅にカットできる」「野菜の栄養素を損なうことなく摂取できる」「焦げない短時間調理のため老化を促す物質AGEの生成が少なくて済む」、さらに「洗い物が少なく済む」とシニア世代には良いことがいっぱいなのです。

その4:片栗粉を使う

今回、お肉に焼肉のたれと片栗粉をもみこみましたよね。加熱中に出てくる肉汁と調味料を受け止め、うま味の沢山詰まった糊状のものになります。

それが野菜全体に絡まるため、口に入れたときに最初に味の濃い部分が味蕾(味覚を感じるセンサー)にあたるため十分美味しいと感じられるのです。片栗粉を使うことで調味料が食材から滑り落ちることなく絡んでくれるのも減塩テクニックのひとつです。

その5:五味を活用する

味覚は塩分だけではなく五味といって、甘味、酸味、苦味、うま味がありそれらが複雑に絡まり美味しさを表現しています。

醤油だけよりもほんの少量の砂糖を加えるとグンと味が感じられるようになりますし、生姜やにんにく、大葉などの風味のあるものはそれだけで美味しさを感じられるものです。他にレモンなどもとても有効です。

今回使用した焼肉のたれは塩味の他に甘味とうま味がプラスされており、生姜やにんにく、ごま油など風味を増してくれるものがバランスよく入っているため少量でも十分美味しく感じられるのです。

今回のホイコーローは以上のポイントを掛け合わせているため、30%減塩しても十分美味しく感じられる、というわけです。

減塩のためにプラスしたいもの、控えてほしいもの

酢の物をプラスする

今回のホイコーローはこれ一品でたんぱく質も野菜もとれてしまうので、副菜は必要ありませんが、減塩中、是非取り入れて欲しいのが「酢の物」です。

その時の合わせ酢は是非手作りをしてください。酢の物には塩分がかなり入っており、実は塩を無くしても意外と大丈夫なものなのです。

お酢と砂糖を2:1で合わせただけのものをかけてみてください。最初は物足りなく感じても、徐々に慣れてきますよ。他には、ただカットしただけのトマト、ちょっと塩をしたブロッコリーなど、その食材の味で楽しめるものがおすすめです。

食後のデザートで品数を増やす

副菜の他、ヨーグルトやフルーツを食後にプラスするのもいいでしょう。品数が少ないと満足感が得られないものです。ヨーグルトはシニア世代に特に大切な栄養素、カルシウムを効率よく摂取できますし、フルーツには塩分を体外に排出してくれるカリウムが豊富。どちらも積極的に摂りたい食品です。

逆に控えて欲しいものは汁物です。汁物には約1.2gの塩分が含まれており、どうしても塩分過多の原因になってしまいます。食べる際は汁の量を半分にし、1日1回までとしましょう。

その代わりカリウムの豊富な緑茶に置き換えると塩分の排出だけでなく、抗酸化物質も摂取できるためおすすめです。

まだまだある!減塩コツ

今回のレシピでは紹介できませんでしたが、他にも減塩や高血圧予防となるコツはまだまだあります。以下の方法もぜひ参考にしてみてください。

1.香ばしい焦げの風味をつける
焼く・揚げるなどしてついた焦げの風味は、香ばしさをプラスしてくれます。

2.料理は適温にする
料理は温度も美味しさのうち。熱い料理は熱いうちに、冷たい料理は冷たいうちに食べると、塩分が少なくても美味しく食べられます。

3.食物繊維をたくさんとる
野菜、いも類、こんにゃく、きのこ類、海藻類などに含まれる食物繊維には腸内で塩分(ナトリウム)を吸着し便と一緒に排泄する働きがあります。結果的に塩分の体内への吸収が減少するので是非取り入れてください。

4.カリウムを含む食品をとる
野菜、いも類、海藻類、果物など、カリウムには体内の余分な塩分(ナトリウム)や水分を尿と一緒に排泄し、塩分の摂り過ぎによる血圧の上昇を抑える作用があります。

減塩生活は無理なくコツコツと

塩分は美味しさの鍵となるものなので、むやみやたらと減らすと続きません。コツコツとコツを積み重ね、日ごろから気を付けていつまでも元気に過ごしたいですね。

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著者プロフィール

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■前田 量子(まえだ・りょうこ)

管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、最新著書『おうちで一流レストランの味になるロジカル洋食』(全て主婦の友社)が好評発売中。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

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