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2021.03.06

住宅ローン減税「13年間控除」の意外な落とし穴|「知らなかった」と後悔しないための注意点

東洋経済オンライン

住宅ローン減税で誰もが13年間還付される、というわけではないようです(写真:タカス / PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/414950?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

住宅ローン減税で誰もが13年間還付される、というわけではないようです(写真:タカス / PIXTA)

・令和2年分の確定申告会場では、混雑回避のため「入場整理券」が必要になります。

・入場整理券の配布状況に応じて後日の来場をお願いすることがあります。

これは「会場内での感染防止対策と来場される方へのお願い」と記されたお知らせからの抜粋だ。新型コロナウイルス感染拡大の影響が税務署にまで及んでおり、来場者の削減・分散を図ろうと躍起になっている。

無理もない。国税庁によると昨年(2019年分)、所得税の確定申告をした人は約2204万人で、単純計算、全人口の6分の1近くの人が足を運んだ計算になる。それゆえ、税務署が3密を回避しようと感染防止策を講じるのは必然の流れといえよう。前年同様、今年も申告・納付期限を1カ月延長する措置を講じている。

住宅ローン減税は自ら申告しないと還付されない

ただ、コロナ禍にあっても変わらないのが、住宅ローン減税の適用を受けるには確定申告が必要な点だ。今年はパソコンやスマートフォンからの申告を積極的に推奨しているが、いずれにせよ申告手続きは避けられない。

これでいいのだろうか? 会社員の場合、所得税は自動的に給与から天引きされる。本人の意思に関係なく無条件で源泉徴収される。にもかかわらず、住宅ローン減税は還付申告しないと控除されない。ご都合主義との批判は避けられないだろう。

政府は“取りっぱくれ”を防ごうと強制的に所得税を徴収する。その一方、逆に支払い(税還付)は本人からの請求がないと対応しない。くどいようだが、住宅ローン減税は自らアクションを起こさないと、その恩恵には一切あずかれないのだ。自治体や税務署から自動的に還付金が入金されることはない。

税制は知っているか知らないかで、成否を二分する。住宅ローン減税には、いくつもの盲点が存在している。それだけに「知らなかった」「こんなはずでは……」と自責の念を抱かなくて済むよう、以下、とくに注意してほしいポイントを解説する。

その関心の高さから、住宅ローン減税の適用を受けるための条件を説明した雑誌やウェブサイトは数知れない。しかし、一度適用された後、途中で適用条件を満たせなくなると、その年分は税還付が受けられない仕組みについて解説している記事はあまり目にしない。

2019年度税制改正では適用期間が10年から13年へと延長されたが、誰もが当然に13年間還付されると思っているのではないか。この13年間という数字は「最長」であって、万人に約束されているわけではない。

いったいどういうことなのか? 住宅ローン減税の創設目的はマイホーム取得の後押しにある。「マイホーム」=「本人が所有かつ居住するための住まい」と定義され、そこに生活拠点としての実態(生活基盤)を伴って初めて「マイホーム」と認知される。

そのため、住宅ローン減税の適用を受けるためには「新築または取得の日から6カ月以内に居住の用に供し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること」が求められる。

これに反し、「会社員の宿命」である転勤が勤務先から命じられると、その間は住宅ローン減税が受けられなくなるのだ。せっかく控除期間13年間の「権利」を取得しても、その間、たとえば5年間転勤してしまうと、実際に税還付される期間は差し引き8年間(控除期間13年間-転勤期間5年間)になる。

つまり、マイホームに「住み続ける」という条件を満たさなくなると、その分、控除期間は短縮されるのだ。当然、期間が短縮されれば、同様に控除額も減額する。控除額を満額もらえると思っていた人には、想定外の事態が訪れる。

単身赴任の場合は救済措置が適用される

しかし、悲観する必要はない。さすがにこのルールは厳しいとの観点から、「住み続ける」という条件には例外規定が設けられている。たとえ転勤が言い渡されても、本人が単身赴任する場合、家族が住み続けていることで「本人も転勤期間中、居住している」とみなされ、税還付は継続する。

ストップするのは家族全員で転勤し、マイホームが留守(第三者への賃貸も含む)になった場合だけなのだ。たとえば親世帯と子世帯が2世帯で同居しており、扶養関係(子供世帯が親世帯を扶養)にある親世帯が住み続けていれば、子世帯が全員で転勤してしまっても、住宅ローン減税は継続される。

つまり、居住実態があるかどうかが重要となるのだ。単身赴任する会社員にとっては、大変ありがたい措置といえるだろう。

盲点としては「会社都合によるやむをえない転勤」の場合のみ、例外規定が適用されること。たとえば自らの希望で海外へ長期留学するなど、自己都合でマイホームを留守にした場合は救済されない。

こうした背景には企業戦士たるサラリーマンを支援しようという狙いがあった。年単位で自宅を留守にする場合、自己都合では税還付がストップすることを覚えておいてほしい。

住宅ローンを借り換えた場合はどうなる?

続いて、今度は住宅ローンの「借り換え」と「繰り上げ返済」に潜む盲点へ話を進めよう。

住宅ローン減税の適用対象となる住宅ローンは「償還期間が10年以上」でなければならない。と同時に、マイホームの取得や増改築を目的とした借入金でなければならない。ところが、住宅ローンを借り換えた場合、その借入金は既往の住宅ローンを返済するための借入金とみなされる。

そのため、たとえ控除期間が残っていても、住宅ローン減税は打ち切られてしまう。借り換えローンはその目的が、本来の融資目的と一致していないとダメなのだ。こうした住宅ローン減税の複雑な仕組みを正確に理解していないと、予期せぬ落とし穴に落ちる恐れがある。

ただ、ここでも緩和措置が用意されている。借り換えローンが「償還期間10年以上」であることなど、住宅ローン減税の適用対象となる住宅ローンの要件をすべて満たしていれば、借り換え後も税還付は継続される。

柔軟性を持たせ、できるだけ長く税制支援が持続するよう取り計らわれているわけだ。と同時に、借り換えのハードルを下げたいという狙いもあるのだろう。注意点として、借り換えても控除期間は延長されないので(最長13年のまま)、誤解のないよう気を付けてほしい。

では、今度は繰り上げ返済した場合はどうなるだろうか? こちらも繰り上げ返済後の住宅ローンが「償還期間10年以上」かどうかで継続の可否が判断される。

繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があるが、期間短縮型の繰り上げ返済を行い、その結果、住宅ローンの償還期間が10年を下回ってしまうと、以降、税還付は終了してしまう。2つのモデルケースで見てみよう。

≪ケース1≫

償還期間12年の住宅ローンを組み、現在、3年返済し終えた。本来であれば完済まで残り9年だが、まとまった資金ができて期間短縮型の繰り上げ返済を行った結果、住宅ローンの返済期間が3年短縮され、完済までの返済期間が6年となった。

⇒この場合、以降、住宅ローン減税は受けられなくなる。

≪ケース2≫

償還期間15年の住宅ローンを組み、現在、3年返済し終えた。本来であれば完済まで残り12年だが、まとまった資金ができて期間短縮型の繰り上げ返済を行った結果、住宅ローンの返済期間が3年短縮され、完済までの返済期間が9年となった。 

⇒この場合、引き続き住宅ローン減税は受けられる。

どちらも短縮期間は3年で変わらないのに、《ケース1》では税還付が終了し、他方、《ケース2》では継続される。

償還期間の計算方法

なぜ、こうした結果になるかというと、償還期間をどのようにカウントするかにかかってくる。その計算方法は下記のようになっている。

「住宅ローンの返済を開始し、実際に支払い終わった期間」

              +

「期間短縮型の繰り上げ返済後、ローン完済までの残りの返済期間」

=10年以上、残っているか?

《ケース1》では「支払い済み期間3年」+「繰り上げ返済後のローン期間6年」=9年となり、税還付はストップする。これに対し、《ケース2》では「支払い済み期間3年」+「繰り上げ返済後のローン期間9年」=12年となり、住宅ローン減税は継続される。

通常は30年近くにも及ぶ長期の住宅ローンを組むため、たとえ期間短縮型の繰り上げ返済を行っても、ただちに償還期間が10年を下回ることは考えにくい。そのため、予備知識として頭の片隅にとどめておけば問題ないだろう。

その誕生から半世紀。もはや住宅ローン減税は経済対策の柱として、ゆるぎない不動の地位を築いている。税制を通じて住宅投資を刺激しようという狙いだ。

繰り返しになるが、マイホームに「住み続ける」という条件を満たさなくなると、控除期間は短縮される。13年間という数字は「最長」の値であって、当然に13年間、税還付されるわけではない。住宅ローン減税にはいくつもの盲点が潜んでいる。その仕組みを正確に理解し、最大の控除額を手にしてほしい。

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平賀 功一:e住まい探しドットコム代表 住宅コンサルタント

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