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2021.03.03

風邪をひくと眠くなるのはナゼ?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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風邪をひくと頭がぼんやりして眠くなることがありますよね。これは発熱のせいではなく、体内にある炎症性物質の働きによるものなのだそう。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、Brain Behav Immun. 誌に2015年に発表された論文です。少し古いものなのですが、最近読む機会があって、なかなか面白かったので今日ご紹介をさせて頂きます。

▼石原先生のブログはこちら

風邪をひくと眠くなるのには科学的根拠がある

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風邪を引くと普段より眠くなり、グッタリして長く眠ってしまいますね。ただその一方で、高熱が出ていたりして本当に体調の悪い時には、かえって寝ることも出来ない、と言うような状態になることもあります。

この事実は、風邪のような感染が身体に起こるということと、眠りの状態とは密接に結びついている、ということを示しています。

しかし、それを結び付けているものは何でしょうか?

最近の多くの研究により、それが「インターロイキン1」という炎症性サイトカインであることがほぼ明らかになっています。

インターロイキン1は代表的な炎症性物質で、身体が風邪ウイルスのような病原体に感染されるとそれを感知して免疫細胞から産生され、炎症を起こすことによって免疫力を高め病原体の侵入を撃退しようとします。

その副産物が、発熱や痛みなどのいわゆる「風邪症状」です。

睡眠をコントロールするインターロイキン1

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実はこのインターロイキン1は、脳細胞にある受容体にも結合し、睡眠をコントロールするような働きを持っています。

インターロイキン1を投与することにより、それが低用量であればノンレム睡眠が増加します。
低用量であればレム睡眠にはあまり影響を与えません。
一方で高用量のインターロイキン1を投与すると、ノンレム睡眠とレム睡眠の両者が減少し、発熱が起こります。

この現象は、風邪をひくと眠くなり深い眠りに落ちるけれど、高熱が出ているような重症では、逆に眠れなくなる、という実際の症状と合致しています。

脳へのインターロイキン1の刺激は、睡眠をコントロールすると共に、免疫を活性化させて感染を抑え込みます。

インターロイキン1が働かない時は、風邪でも発熱や睡眠の反応がない

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上記論文では脳でのインターロイキン1の作用発現に、重要な働きをしている神経特異的インターロイキン1受容体アクセサリータンパク質(the neuron-specific interleukin-1 receptor accessory protein)に着目し、その遺伝子発現を出来なくしたネズミを利用してその働きを検証しています。

脳におけるインターロイキン1の働きは、この受容体アクセサリータンパク質に依存していて、その発現を出来なくしたネズミの脳にインフルエンザウイルスを感染させると、通常起こる睡眠の反応や発熱の反応が起こらず、そのネズミの生命予後は低下しました。

よく眠れば早く治るのは科学的事実

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「よく眠れば風邪は早く治る」というのは、広く使用されている月並みな言説ですが、それはどうやら科学的事実でもあるようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36