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2021.02.22

最近疲れやすいあなたは要注意?現代にも潜む「栄養失調」の話 ~オトナの食育~

kencom公式:管理栄養士・前田 量子

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世界でもトップクラスの長寿国である日本。その背景には、栄養バランスの良い日本型食生活があると言われています。しかし最近は脂質の摂取が多い傾向にあり、そのバランスが崩れ始めています。

さらに、食材にも恵まれ栄養をしっかり摂れる環境にありながら「現代型栄養失調」が課題となっています。そこで今回は、どの年代にも潜む「現代型栄養失調」について解決策とともにお伝えします。

どの年代でも可能性がある「現代型栄養失調」とは?

あなたは日頃、どんな食事をしていますか?野菜といえばコンビニで買う野菜ジュース、ラーメンや揚げ物などを好み、夜は家族と晩ご飯を食べた後、さらにビールにスナック菓子…といった方も多いのではないでしょうか?

こんな食生活の人は要注意!エネルギーと糖質、脂質を摂り過ぎ、タンパク質やビタミン、ミネラルが不足しており、実はこの状態のことを「現代型栄養失調」と言います。

私は関係ないと思っている女性やシニア世代の方、そんなことはありません!無理なダイエットも同じような状態を引き起こし、食が細くなりがちなシニア世代も例外ではありません。まさにどの年代にも潜むのが「現代型栄養失調」なのです。

口当たりの良い食べ物には要注意!

日本人の食生活が変化し、ファストフードやインスタント食品、コンビニ弁当など、食べたい時に手軽に食べることができる時代です。また、忙しい人は作るのも面倒で外食をするケースも少なくありません。

ご飯・パン・麺類など、調理が簡単で手軽に単品でも食べられる食事には糖質がたっぷり含まれています。小腹が空いた時に菓子パンを選べば、糖質過多の状態になってしまいます。

また食生活の欧米化に伴い、揚げ物や脂身の多い肉、ポテトチップスなど、脂質の摂取も増えています。それと反比例して、肉や魚を食べる量は減少傾向にあります。たんぱく質は取り過ぎた分を体内に蓄えておくことができないため、コンスタントにとる必要があり、簡単な食事ばかりでは不足してしまうのです。

さらに不足している食材といえば野菜でしょう。厚生労働省の「平成28年国民健康・栄養調査結果の概要」によれば、野菜の摂取量の平均は男性が290.9g、女性が273.3g、全体平均が281.4gとなっており、目標値の350gには達していません。野菜の小鉢1皿分が不足している状況です。

「現代型栄養失調」がもたらす不調

カロリーを摂っていても、それが体内で代謝しなければ利用することができません。例えば糖質をとっても、代謝するためにはビタミンB1が必要であり、不足するとエネルギーに変えられず脂肪として溜め込んでしまうのです。

栄養素は1つで働いているわけではなく、複数の栄養素が身体の中で互いに協力し合っています。そのため、ビタミンやミネラル、たんぱく質が不足する「現代型栄養失調」では、肥満、貧血、免疫力の低下、味覚異常、冷え症、生理不順、アレルギー、薄毛、などの不調を引き起こす可能性がありバランスの取れた食事が大切となるのです。

自分に必要な栄養素を知るには?

「日本人の食事摂取基準」をご存じでしょうか。日本人の1日に必要なエネルギーや栄養素量を示した基準で5年ごとに改定されます。最新は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」です。

健康な個人または集団を対象に国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防やフレイル予防を目的とし、エネルギーおよび各栄養素の摂取量の基準を示したものです。これをみれば自分に必要な栄養素を知ることができます。

年齢別、1日に必要なエネルギー量

厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020年版)より推定エネルギー必要量(kcal/日)

厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020年版)より推定エネルギー必要量(kcal/日)

例えば28歳男性・事務職の方を例にすると、1日に必要なエネルギーが2650kcal、たんぱく質60g、食物繊維は20g以上でビタミンAは850μgRAE、といった具合です。

しかしあまりに細かいとわかりにくく、数値を見ても結局何をどれだけ食べればいいの?となるのではないでしょうか。そこで、量りも計算機も必要ない栄養バランスを整える方法をご紹介します。

自然と栄養バランスが整う「手ばかり法」を覚えよう

気軽に食事バランスを整えるために、「手」を使って1食に必要なおおよその食事量を覚える方法をご紹介します。基本は3食で、献立は、主食・主菜・副菜を組み合わせましょう。また乳製品や果物を組み合わせるとさらにバランスが整いますよ。

1食あたりの量の目安

・主食(炭水化物)
ごはんの量は、軽く握ったこぶし1つ分を目安にしましょう。パンや麺類は、同量か少し多い量を目安にします。

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・主菜(たんぱく質)
手の平にのる大きさ1つ分を目安にしましょう。肉・魚・卵・大豆製品など、どれかに偏ることなくいろいろな食材を選択するとバランスが整います。ちなみにお肉の選び方は、脂質が少ない部位を選ぶとたんぱく質が多くなります。魚は旬のものを意識するとよいでしょう。

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・副菜(ビタミン・ミネラル)
ビタミンやミネラル、食物繊維を含む野菜のこと。生なら両手に山盛りにのる量、加熱した場合は片手に山盛りにのる量を目安にしましょう。野菜・海藻・きのこなどの中から多種類を組み合わせ、茹でる・煮る・炒めるなど調理方法にも変化をもたせるようにします。

野菜の選び方は、緑黄色野菜の方が栄養価が高くなります。また旬の食材を取り入れると、その時期に必要な栄養素を自然と摂ることができます。

果物や牛乳をプラスし、さらにバランスよく

・果物(ビタミン)
果物は1日1回、握ったこぶし1つ分を目安にしましょう。みかんなら1~2個といった具合です。果物にはビタミンCが多く含まれる傾向がありますが、果糖も含まれているので食べ過ぎは要注意です。

・乳製品(カルシウム)
カルシウムも不足しがちな栄養素。カルシウムを豊富に含む乳製品は1日1個を目安にしてください。牛乳ならコップ1杯、チーズならプロセスチーズ(個包装)1つで十分です。

まずは意識することからスタート!

どの年代にも潜む「現代型栄養失調」にならないためには、普段からバランスの良い食事を心がけることが大切です。ご紹介した「手ばかり法」をぜひ実践し、少しずつ意識することから始めてみましょう。

▼参考文献

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著者プロフィール

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■前田 量子(まえだ・りょうこ)

管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、最新著書『おうちで一流レストランの味になるロジカル洋食』(全て主婦の友社)が好評発売中。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

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