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2021.01.13

ロックダウン等の行動制限はどれくらい感染抑止に有効か?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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東京をはじめ新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される都道府県に、再度の緊急事態宣言が発出・検討がされています。

対象のエリアの住人には、外出や外食などの行動を控えるように求められていますが、この行動制限にはどの程度効果があるのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、Lancet Infectious Diseases誌に、2020年12月23日にウェブ掲載された、イギリスにおいて施行されたロックダウンの効果についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

行動制限は感染防止にどれくらい効果があるか

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新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。ここで問題となるのが、飲食店などの閉鎖や旅行や外出の制限などの、社会活動の制限の有効性です。

人間同士の接触を物理的に制限すれば、感染が予防されること自体は確実です。ただ、人間同士の活動を大きく制限すれば当然社会生活は大きく制限され、経済的にも甚大な影響が生じます。

そのために、経済的補償をするなどして一定の期間そうした社会活動の制限を行い、感染が減少した段階で解除するという方針が取られます。

しかし、感染を防御するという観点からは長く制限を行う方が良い一方、経済的なダメージを最小限にするには、制限は最小限に留めることが望ましいというジレンマがあります。

どのような対策を講じるかどうかは、感染防御的な観点のみからは決定することは難しく、政治的な問題でもあり、世論の支持や理解も必要という意味で非常に難しい問題なのです。

イギリスのロックダウンの効果を検証

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今回の研究はイギリスにおいて、実際に行なわれた社会生活制限やロックダウンの有効性を、施行後の入院患者数や死亡数、グーグルなどのデータを活用した人間同士の接触の減少度などから、数理的に推計して比較しています。

イギリスにおいては、段階的な社会活動の制限が規定されています。まず第一段階の制限は、飲食店やバーなど接触を伴うサービスのある店舗の、22時までの時間制限と、人間同士の交流は6人以内が骨子です。

第二段階の制限は家族以外の交流の禁止と、不要不急の旅行の禁止が加わり、第三段階の制限では、飲食店やバーなどの営業停止が加わります。更に厳しいロックダウンにおいては、住民は生活に必要最低限の外出を除いては、原則家にいることが求められます。

他に北アイルランドにおいて行われたロックダウンは、2家族以上で10人を超える交流は禁止され、ウェールズにおいて行われたロックダウンは、生活必需品などを除く店舗は閉鎖され、原則外出も禁止で家族以外との交流も禁止という、最も厳しいものになっています。

その結果はこちらをご覧下さい。

ロックダウンの有効性を一覧表としたものです。その有効性は、実効再生産数(R: effective reproduction number)の低下という指標で推計されています。

何度かご紹介している基礎再生産数(R0)は、新しい感染症が入って来たような場合に、患者1人から二次感染する患者数のことですが、実効再生産数というのは、ある程度感染が拡大した時において、同じように患者1人から二次感染する患者数のことです。

その集団には既に免疫を持っている人もいる可能性があるので、最初とは数値のニュアンスが変わって来るのですが、数値が1を切らないと感染は拡大するという点は同じです。

何も対策を講じない時と比較して第二段階の制限を行うと、実効再生産数は2%低下します。第三段階の制限を行うと、実効再生産数は10%低下します。

ロックダウンで一時的に感染を抑止できても、解除後にリバウンドが発生

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一方で北アイルランド型のロックダウンで、学校も閉鎖した場合には実効再生産数は35%、学校は継続した状態では22%実効再生産数は低下します。

ウェールズ型のロックダウンで、学校も閉鎖した場合には44%、学校は継続した状態では32%、実効再生産数は低下すると推計されました。

このように、人間同士の交流を物理的に制限することにより感染は一時的には減少します。しかし、ロックダウンが解除されると、免疫のない人が大多数の集団であれば、速やかにリバウンドが起こります。

これがロックダウンが感染拡大を、一時的に抑えはしてもしばらくしても次の感染拡大が起こるという、世界中で起こっている出来事の、1つの説明なのです。

様々な意味でも厄介な感染症

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学校の閉鎖は感染抑止に一定の有効性がありますが、学校を閉鎖することは青少年への影響が大きく、現状は余程のことがない限り、学校は閉めないというのが基本的な考え方となっています。

今回の感染症は色々な意味で厄介で、テレビのコメンテーターの言う通りにすれば解決、というほど簡単なものではないことは間違いのないことだと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36