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2020.11.21

「お酒のカロリーでは太らない」医学的な根拠|ビールより「糖質ゼロ」のほうが油断ならない

東洋経済オンライン

「お酒は太る」とされるのは、実は「お酒よりもおつまみのせい」というのは本当なのだろうか(写真:foly/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/389561?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

「お酒は太る」とされるのは、実は「お酒よりもおつまみのせい」というのは本当なのだろうか(写真:foly/PIXTA)

「お酒は太る」とは、もう何十年も前から言われているが、実際どうなのか? 実はいまだに決着がついていない。……と言ってしまうと終わりなのだが、科学的にわかっていることもある。以下、できるだけ「太らない」飲み方を目指すために、知っておくべきことをまとめてみたい。

まず、「お酒が太る」と簡単に断言できない理由は単純で、太るメカニズムが複雑なうえに、酒類によっては糖質が多かったり、飲酒と食事が切り離せなかったりと、純粋にアルコールだけの影響を考えて済む話ではないからだ。

つまり「お酒で太る」にも、①アルコールが直接の原因となる場合、②酒類に含まれる糖質(炭水化物のうち食物繊維を除いたもの)に原因がある場合、③飲酒と行動パターンに関係がある場合があり、それぞれが関与しあっている。

「1日2缶」でメタボ1.42倍

世界各国のさまざまな肥満に関する研究結果をまとめた論文では、少量~中程度の飲酒では結果がまちまちで、過度の飲酒はおおむね体重増加につながる、と結論づけている。左党の方々に追い打ちをかけるようだが、少量の飲酒でも体重増加につながるとの研究報告も、2020年9月の国際欧州肥満学会で報告された。

1日当たり缶ビール(355ml)半分以上のアルコール摂取で、肥満やメタボリックシンドロームのリスクが高まったという。純粋なアルコールにして約7g、ワインだったら小グラス(118ml)半分ちょっと飲むのと同じだ。

この傾向は男女とも量が多いほど強まり、とくに男性で顕著だった。1日当たりビール半~1缶分のアルコールを摂る男性は、非飲酒者と比べて肥満やメタボのリスクが1.1倍だった。1~2缶分では肥満1.22倍・メタボ1.25倍、2缶分以上では肥満1.34倍・メタボ1.42倍だった。

この研究は韓国で実施され、20歳以上の約2700万人のデータ(男性1400万人超、女性1200万人、2015~2016年)を解析した結果だ。同じ東アジア人の大規模データを用いた研究として、示唆に富んでいる。なお、年齢や運動、喫煙、収入など、潜在的に影響している要因は計算で差し引いてある。

純粋なアルコールのカロリーは、7.1kcal/g(1kcal=水1000ccを1℃上昇させる熱量)とされている。1973年にFAO/WHO合同特別専門委員会が示した数値で、今日まで世界中で採用されてきた。

一般に糖質やタンパク質は4kcal/g、脂質は9kcal/gとされているから、なかなかの数値だ。例えばビール1缶分のアルコールは14g、単純計算で約100kcal(コンビニのおにぎり約0.5個分)に相当する。飲みすぎれば太るのも当然とも思える。

一方で、どこかで「アルコールのカロリーはすぐ消費されるから太らない」という話を聞いたことがないだろうか? 

アルコールを摂取すると、1~2時間のうちに胃や小腸で吸収され、肝臓~筋肉・臓器で分解される。その中間生成物である酢酸が、筋肉などで最終的に炭酸ガスと水に分解されるときに、熱エネルギー7.1kcal/gを放出する。これがアルコールのカロリーの正体だ。

ポイントは、酢酸が「短鎖脂肪酸」ということかもしれない。短鎖脂肪酸は、近年「体に脂肪がつきにくい」健康オイルとして注目の中鎖脂肪酸(MCTオイル)よりも、さらに分解されやすい脂肪酸である。体内で優先して使われるので、「太らない」と言われるのだろう。しかし、長鎖脂肪酸よりは消費されやすいかもしれないが、短鎖脂肪酸もエネルギーを有し、摂ればとっただけエネルギー摂取過多になる。

しかも、実際の酒類ではアルコール度数だけでなく、含まれる糖質の量がカロリーに大きな影響を与えている。酒類によって“1杯”の量(提供単位)も異なる。

ビール派のほうがワイン派より分が悪い、意外な理由

酒類ごとの違いを見てみよう。

文科省の食品成分データベースによれば、ビール1缶(350ml)には11~12gの糖質が含まれ、アルコール由来と合計で150kcal前後にはなる。150kcalと言えば、体重60㎏の人が10分間、階段を駆け上がり続けてやっと消費できるだけの熱量だ(基礎代謝を除く、厚労省『実践的指導実施者研修教材』より計算)。

これがワインだと、小グラス1杯(118ml)でアルコール11g程度(約80kcal)、糖質2~5g弱にとどまり、合計でも90~100kcal程度に収まる。カロリーだけ見ると、ビールよりワインのほうが「太りにくい」ように見える。実際、英国の健康な高齢男性3000人を対象にした調査では、ビールよりワインのほうが太りにくかった。

ビール愛好家への福音として、実験的研究のレビューでは、ビールの太りやすさは否定されている。被験者に数週間、毎日ビールあるいはワインを飲んでもらったところ、いずれも1~2缶/杯程度であれば体重や体脂肪率に大きな変化はなかった。

ただし、ビールには別の問題があるようだ。欧米で実施された複数の研究で、ワイン愛飲者と比べ、ビール愛飲者には太りやすいライフスタイルの傾向が見られた。野菜や果物の摂取が少なく、油脂類や加工食品が多いなど食生活が貧しく、また、運動量が少なかった。これが日本人に当てはまるかは検証が必要だが、同様の傾向があるように感じる。

日本酒と肥満に関する研究はとくに見当たらなかったが、日本酒はビールやワインに比べアルコール度数が高く、糖質も多い。しかも飲食店で提供されることの多い1合(180ml)には、アルコール約22g(150kcal超)、糖質7~9gを含み、合計では200kcal近くなる。日本酒1合はおにぎり1個と心して味わう必要がある。

「糖質ゼロ」飲料の落とし穴、甘味料で太る?

焼酎やウイスキー、ブランデーなどの蒸留酒は、糖質は0gで、カロリーはアルコール由来のみだ。これら度数が高めの蒸留酒では、“割もの”の選び方が肝要で、水割り、お茶割り、ハイボールなどが、「太りにくい」飲み方と言えるだろう。フルーツジュースで割るのでは、せっかくの糖質ゼロがもったいない。

では、近年よく見かける「糖質ゼロ」の酒類はどうなのだろうか? 糖類は、単糖類(ブドウ糖、果糖など)と二糖類(砂糖、乳糖など)の総称だ。つまり「糖類ゼロ」でも、単糖が2~10個くっついたオリゴ糖類や、糖アルコール(キシリトール、エリスリトールなど)といった、糖質は含まれる可能性がある。

他方、「糖質ゼロ」では、上記はいっさい含まれない。糖質は体内でエネルギー源となる栄養素であり、糖質ゼロの酒類では、カロリーはアルコール由来分のみだ。

「糖類」と「糖質」の違いにだまされないことが大切だ。

だが、落とし穴が2つある。1つは、糖質を含まない分、食が進みがちになることだ。蒸留酒もそうだが、飲んでも血糖値が上がらないので、空腹感が解消されない。そのうえ、アルコールには食欲増進効果もある(後述)。

もう1つは甘味料のワナだ。

「糖質ゼロ」をうたった酒製品の多くには、甘みとして甘味料が使われている。天然甘味料のステビアや、人工甘味料のスクラロース、アセスルファムK、アスパルテームなどがその例だ。

甘味料が厄介なのは、カロリーゼロなのに甘みを感じ、インスリン分泌を促進するホルモンの値を高める可能性があることだ。スクラロースやアセスルファムKなどは、試験管レベルで実証されており、ヒトでもそれを示唆する結果が出ている。

つまり、甘みを感じた時点で脳は糖質を期待し、その吸収を高める態勢に入る。インスリン放出に向けたスイッチが入るが、実際には甘味料では血糖値は高まらない。そのため脳や体が混乱し、糖代謝に異常を来す。インスリンの作用が低下し(インスリン抵抗性)、高血糖状態が続いて、メタボや肥満、ひいては2型糖尿病へと悪循環が生じる。

また、カロリーゼロの甘味料は、腸内細菌叢に影響を与えて炎症を引き起こし、それがインスリン抵抗性につながることもわかってきた

先にも触れたが、「お酒は太る」とされるのは、実は「お酒よりもおつまみのせい」といった話もよく耳にする。

「お酒を飲むとこってりした、塩辛いものが食べたくなる」とか、「締めにラーメンが食べたくなる」という人も多いだろう。これは気のせいなどではないらしい。アメリカの大学生を対象にした調査でも、飲酒後には塩辛いおつまみやピザなどを好み、飲んでいない日よりも野菜や豆などの健康的な食品を摂らない傾向が見られた。

しょっぱいもの、つまり塩分(ナトリウム)が欲しくなるのは、2つの原因が考えられる。

従来の説は、お酒を飲んでいるとトイレが近くなり、尿と一緒にナトリウムなどの電解質が失われるため、というものだ。アルコールは、「バソプレシン」という抗利尿ホルモンの分泌を妨げる。バソプレシンは、体内の水分を適度に保つよう尿量を調節しており、その分泌が抑えられると必要以上の尿が作られてしまう。

もう1つの説は、アルコールを摂ると、体内水分量とは無関係に「喉が渇いた」という感覚が生じ、必要以上の水分を摂ってしまうため、というものだ。体液が薄まって電解質バランスが崩れ、体が塩分を欲する。近年の研究で、喉の渇きを誘発する「FGF21」と呼ばれるホルモンの分泌が、アルコールによって促されることがわかってきた。

お酒を飲んでいてしょっぱいものが食べたくなったら、カロリーの高い唐揚げやフライドポテトはやめておこう。代わりに野菜の浅漬けや大根のおでんくらいがいいかもしれない。

“締め”のラーメンはなぜあんなにおいしいのか?

「飲んだ後の締めのラーメンがやめられない」のは、肝臓(肝細胞)でのアルコール分解にエネルギーが使われ、急激に血糖値(血中のブドウ糖)が低下するからだ。

エネルギー源となるブドウ糖は、食事に含まれる炭水化物から消化作用で取り出されるか、肝臓に蓄えられたグリコーゲンから合成(糖新生)される。ところが、アルコールは人体にとっては毒に等しいので、体は糖代謝よりアルコール分解を優先する。その結果、消化作用も、糖新生も遅滞してしまう。

血中のブドウ糖が減ると、脳は「糖の補給が必要」と判断し、空腹感を生じさせる。こうして「締めのラーメン」が欲しくなる、というわけだ。もちろん、これはちょっとしたタイミングのずれで、実際にはお酒を飲みつつ食事から炭水化物を摂っているし、後から肝臓での糖新生も追いついてくる。

それなのに「締めのラーメン」を食べてしまうと、アルコール分解が一気に進みすぎる。その先のアセトアルデヒド分解が追い付かず、頭痛や吐き気といった悪酔いや二日酔いの原因になる。もちろん、糖質の摂りすぎにもなり、結果として肥満を招きやすくなる。

見方を変えれば、アルコールには食欲増進効果があり、食前酒をたしなむのは理にかなっているとは言えるが……。

お酒に“飲まれる”と、理性のコントロールは緩んでしまう。飲みすぎたり、余分なラーメンを食べてしまったりするかもしれない。誘惑に負けた翌朝は、胃への負担の少ない消化のいいものを少し食べて、適度に体を動かしながら、大いに反省しよう(自戒)。

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久住 英二:ナビタスクリニック内科医師

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