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2020.12.16

不意の動きを回避せよ!ギックリ腰の予防法・治療法【ギックリ腰・後編】

kencom公式ライター:黒田創

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時と場所を選ばず襲って来ては、生産性を大幅に落としてしまうやっかいなギックリ腰(急性腰痛症)。
その発生は突発的ながらも、日常生活において腰に負担をかけるさまざまな行動やストレス、睡眠不足などが元となっていたり、昨今のコロナ禍におけるテレワーク時間の増大や、運動不足が原因となっている可能性も。
その意味では年齢や性別を問わず、誰にでも罹りえる疾患と言っても過言ではありません。

前回はその概要と原因、主な症状について、整形外科医として長年の治療経験を持ち、運動療法にも力を入れている東京・中央区のリバーシティすずき整形外科院長、鈴木秀彦先生に説明して頂きました。
今回は鈴木先生に、ギックリ腰の治療法や予防について伺います。

■通称「魔女の一撃」「ギックリ腰」強烈な名前の急性腰痛症の基本を知る

辛すぎる急性腰痛症の治療はしっかりとした診断から

急性期は無理に動かすのは禁物!

ギックリ腰になった直後は腰周りの筋肉や椎間板、関節、靱帯などに炎症が起こっている可能性があるため、まずは安静にすることが必要となります。そのうえでもし熱っぽい感じがあればアイシングなどで患部を冷やすよう心掛けてください。

一晩経って痛みが治まらないようなら、必ず整形外科を受診しましょう。診察の結果、特に椎間関節付近や筋・筋膜に痛みが出ている場合はブロック注射やトリガーポイント注射などを用い、激しい痛みを取り除くケースもあります。
そこまでひどい痛みでなければ、炎症を抑える湿布などを使い治療を進めていきます。

痛みが引いたら動くことも大事

従来、ギックリ腰はとにかく安静に努めるべきと言われてきましたが、ある程度痛みが引いてきたら、普段通りの行動をし、日常生活を送った方が早期回復が望めます。
もちろん無理のない範囲で行ってください。

痛みの度合いに応じて、来院なさったその日のうちに運動療法を行うこともあります。ストレッチングや徒手療法を施すと、みるみるうちに腰が楽になっていく患者さんも多いです。
あとはストレッチや腹筋、背筋運動のやり方を覚えていただき、家でもそれらの運動療法を習慣にしてもらう。患者さん自らの力で治すことも大切です。

画像診断など詳しい所見を求めよう

もうひとつ、骨盤の骨である仙骨と腸骨の間にある仙腸関節に炎症や微少なずれが起こり、ギックリ腰になっているケースも少なくありません。そうした場合は理学療法士が徒手療法を用いて治療にあたります。

また、まれにギックリ腰だと思って受診したら、椎間板ヘルニアや圧迫骨折、内臓系の重大疾患が見つかるケースもあります。そうした場合は、当然ながらその疾患に応じた治療がなされることになります。

腰痛、特にギックリ腰はさまざまな疾患が隠されている可能性があります。そのため、画像診断はもちろん臨床所見などあらゆる方面から原因を突き止め、根本的治療にあたる必要があるのです。

予防のカギは「スロー」&「イージー」

過剰な負荷を与えず適度な運動を

腰に急激かつ大きな負荷をかけないことがギックリ腰予防の大前提です。あまり持ちなれない重い荷物を持とうとしたり、無意識のうちに無理な体勢を取らないよう注意してください。

あらゆる腰の痛みに対して有効なのが運動です。
特にギックリ腰は運動不足や長時間のデスクワークといった不良姿勢が原因になっているケースが多く、腹筋および背筋の強化や、柔軟性の向上が予防策としては有効です。
簡単な筋トレやストレッチなどを日々の習慣にすることで、ギックリ腰はかなり防ぐことができるのです。

私どもの患者さんの中にも、ご自身でストレッチをやるようになったことで腰痛がすっかり治ったという方は多いです。

体重コントロールも予防の一環

あと、体重増加も腰に大きな負荷をかけることになり、ギックリ腰の遠因となります。昨今のコロナ禍で在宅時間が増え、体重が増えた方は、運動や食事制限でダイエットしたり、体重をこれ以上増やさないよう意識する必要があります。

今後もテレワークが続く可能性が高い方は、家庭内の仕事環境を整えることもギックリ腰予防になります。ソファなどに座り、腰を曲げた姿勢で長時間デスクワークを続けていると、当然腰に負担がかかります。オフィスチェアや高さの合ったデスクなどを導入することを考えましょう。

テレワーク時代だからこそ運動を取り入れてリスクを減らそう!

ギックリ腰は年齢を問わず誰でも罹る可能性がある疾患です。テレワークが進み、移動が減ったことでリスクは高まるかもしれません。
そんなことにならないよう、普段から運動習慣をつけ、できるだけ腰に負荷をかけないよう心掛けましょう。

鈴木 秀彦(すずき・ひでひこ)先生

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1993年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。東京慈恵会医科大学、国立療養所東宇都宮病院勤務などを経て米国留学。その後東京都職員共済組合青山病院、国立病院機構西埼玉中央病院で整形外科医長、東京慈恵会医科大学整形外科学講座医局長を務める。2015年リバーシティすずき整形外科を開院。22年間の大学での臨床経験を足掛かりに、よき「街のかかりつけ医」を目指す。

著者プロフィール

■黒田創(くろだ・そう)
フリーライター。2005年から雑誌『ターザン』に執筆中。ほか野球系メディアや健康系ムックの執筆などにも携わる。フルマラソン完走5回。ベストタイムは4時間20分。

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