メニュー

2020.12.30

痛くて腕が上がらない!?それって五十肩?【五十肩入門・前編】

kencom公式ライター:黒田 創

記事画像

吊り革につかまろうとすると腕が上がらない、クルマから駐車券を取ろうとすると機械に手が届かない。洗濯物が干しづらい……。加えて夜、床につくと肩がズキズキと痛んで眠れないなんてことも。
40~50代に差し掛かり、こんな症状に苦しむようになった方も少なくないと思います。そのような症状が40代で出た場合は四十肩、50代で出た場合は五十肩と呼ばれますが、なぜ四十肩、五十肩になるのでしょうか。

今回は、整形外科医として長年の治療経験を持ち、運動療法にも力を入れている東京・中央区のリバーシティすずき整形外科院長、鈴木秀彦先生に伺いました。

鈴木 秀彦(すずき・ひでひこ)先生

記事画像

1993年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。東京慈恵会医科大学、国立療養所東宇都宮病院勤務などを経て米国留学。その後東京都職員共済組合青山病院、国立病院機構西埼玉中央病院で整形外科医長、東京慈恵会医科大学整形外科学講座医局長を務める。2015年リバーシティすずき整形外科を開院。22年間の大学での臨床経験を足掛かりに、よき「街のかかりつけ医」を目指す。

歳をとったらみんな罹る?五十肩とはなんなのか

五十肩の正式名称は「肩関節周囲炎」

四十肩や五十肩は医学的には『肩関節周囲炎』と呼ばれ、肩関節周囲に炎症が生じることで痛みをきたし、肩全体の動きが悪くなった状態です。
どちらも同じものと考えていただいて構いません。以下のようなときに痛みが出たら、五十肩を疑いましょう。

記事画像

自己判断は禁物「肩こり」とは別物です

五十肩は誰でもなるし、大したことはないとよく言われます。しかし五十肩のような症状に別の病気が隠れているケースもありますから、自分で勝手に判断したり、楽観視するのは危険です。
五十肩を訴えている患者さんのなかには、上腕骨と肩甲骨をつなぐ腱板が擦り切れて「腱板損傷」が起こっていたり、腱板に石灰がたまる「石灰沈着性腱板炎」になっているケースがあります。

そうした場合は、五十肩とは異なる追加の処方、治療が必要になってきます。

また、中には肩こりと五十肩を混同される方もいると思いますが、肩こりは首由来の症状、五十肩は肩関節周りの炎症です。
肩こりは一般的に、首周りの筋肉の緊張が引き起こす血液循環の悪化や頚椎由来の疾患が原因です。悪い姿勢が習慣化したり、運動不足やストレスによって筋肉疲労が生じ、張りや痛みにつながります。

両者には明確な違いがありますので、症状を見極めて混同しないようにしましょう。

五十肩の原因は不明

大抵の場合、五十肩という肩関節の拘縮は加齢によるもので、それ以上の原因ははっきりしていないというのが実際のところです。
筋肉、腱、靱帯など関節周囲組織は、長年使っていると徐々に柔軟性を失い、微細なほつれを生じていくのが自然ですから、多くの場合やはり「加齢」が大きな原因と言っていいでしょう。

女性の場合は、更年期になるに従い女性ホルモンが減少し、関節の周囲組織に炎症や浮腫が生じやすくなることで発症するケースも少なくありません。

レントゲンやエコー、MRIで調べた結果、先に挙げたような損傷がないのに痛みがあったり、腕や肩を動かしづらい場合は、まず五十肩と考えていいと思われます。

ある日突然襲いくる痛みに注意!

今まで何ともなかったのに、ある日突然発症することもあるのが五十肩の特徴です。また、症状が出るのは主に40~60代で、それ以外の世代には少ないのも不思議なところです。

一般的には肩関節を構成する筋肉や腱、靱帯など周囲の組織が炎症を起こし、それが肩関節を包み込む関節包に広がることで腕や肩を動かした際に違和感を覚えたり、痛みが生じて発症します。
生活するうえで腕や肩を動かす機会はかなり多いため、症状が重い場合は整形外科を受診することをおすすめします。肩関節というのは皆さんの想像以上に複雑な構造なので、専門の整形外科医が診察しないとわからないことが多いのです。

五十肩とひと口に言っても、そのプロセスは大きく3つに分けられます。

記事画像

時期別に見てみましょう。

①炎症期(えんしょうき)

発症後約2週間頃までの最も痛みが強い時期。
肩や腕を動かすと痛むのはもちろん、じっとしていても痛みが走ったり、まれにしびれを伴うケースも。夜、ズキズキ痛んで眠れないこともある。

②拘縮期(こうしゅくき)

特に期間は定まっていないが、人によってはこの状態が何ヵ月も続くことも。
炎症期のような強い痛みは治まってくるが、肩周りの組織がより固くなって動きが悪くなる。
肩を上げたり、腕を後ろに回す動きが困難になり、無理に動かそうとすると痛みが生じることも。

③回復期(かいふくき)

痛みが徐々に解消して回復に向かっている時期。
腕や肩を動かしても痛みが出ず、動かせる範囲も広くなっていく。

もしかして……と思ったら迷わず受診を

ここまで五十肩の概要と原因・症状を見てきましたが、中にはご自身の症状とぴったり当てはまる方もおられるのではないでしょうか。
その場合は我慢せず、一度整形外科の門を叩いてみてください。

次回は、五十肩の治療法と予防策についてお話しします。

■どう治す?どう防ぐ?五十肩の治療についてはこちらから

著者プロフィール

■黒田創(くろだ・そう)
フリーライター。2005年から雑誌『ターザン』に執筆中。ほか野球系メディアや健康系ムックの執筆などにも携わる。フルマラソン完走5回。ベストタイムは4時間20分。

この記事に関連するキーワード