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2020.10.22

自分は不幸だと思う人は脳の使い方を知らない|従来の脳科学では引き出せなかった脳の鍛え方

東洋経済オンライン

「島皮質」を鍛えないと、脳は成長できません(写真:Graphs/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/383379?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

「島皮質」を鍛えないと、脳は成長できません(写真:Graphs/PIXTA)

世界の脳科学者たちが「島皮質」という脳の部位に注目している。島皮質は、脳全体をバランスよく協調的に働かせるために必要な「ハブ(中継基地)」の役割を果たしている部位だ。脳科学者で『科学的に幸せになれる脳磨き』の著者が、島皮質の持つ力を解説する。

ここ10年で解明された「島皮質」の役割

これまで脳といえば、高次機能を司つかさどる前頭前野、記憶に深く関わる海馬、あるいはモチベーションに関与する中脳のドーパミン細胞などが注目されていました。

ところがあまり研究が進んでいなかった「脳の部位」に、その人が豊かで幸せに生きられるかどうかが大きく関わっていることがわかってきました。

そのひとつが「島皮質」と呼ばれる部位です。

島皮質は、大脳のひだ奥深くに隠され、他の部位に覆われていることもあり、これまであまり注目されてきませんでした。

しかし最近になって、この島皮質を鍛え、脳全体をバランスよく協調的に働かせることが、その人の人生を豊かに幸せにすると科学的にわかってきたのです。

脳では、この部位は記憶を担当、この部位は理性の担当というように、各部位でそれぞれの役割担当が決まっています。

島皮質が担当する分野はかなり幅広く、社会的感情、道徳的直感、共感、音楽への感情的な反応、依存、痛み、ユーモア、他者の表情への反応、購買の判断、食の好みなどに関わります。

また島皮質に障害が起きると、無気力になり、口にしたものが腐っているかどうかの判断ができなくなります。さらに島皮質からの情報は、脳の他の部位、とくに前帯状回や前頭葉に伝えられて意思決定にも関わります。

このように島皮質は幅広く活躍しているのですが、もっとも大きな特徴は脳のなかで「ハブ(中継地点)」のような役割をしている点です。

自分の外側から来る感覚と内側の感覚を繫つなぐ、他人の気持ちと自分の気持ちを繫げる、また、過去の自分といまの自分や、いまの自分と未来の自分のイメージを繫げるといった時間的なハブの役割もします。

このハブの働きによって、私たちは他者のことを理解したり、他者に共感したりすることができます。

つまりこの島皮質の機能を高めれば、他の人と心の繫がりを持ちやすくなり、たとえどんな過去を持っていようと、過去の自分を受け入れやすくなります。

それだけでなく、島皮質は脳のいろいろな箇所を繫いでいるため、脳全体が活性化され、脳が本来持っている力が引き出されるのです。

イギリス・スターリング大学のルイス博士らの研究では「ウェルビーイングと島皮質の厚みは正の関係にある」という結果を出しています。ウェルビーイングとは幸福の概念を指します。

つまり、幸せな人というのは島皮質が厚いのです。

これは逆に考えると、島皮質が厚くなるような脳の使い方をすれば私たちは幸せになれるということです。

誰でもできる! 島皮質を鍛える6つの方法

エビデンスにもとづいた島皮質を鍛える脳の使い方を私は「脳磨き」と呼んでいます。
そのポイントは6つあります。

① 感謝の気持ちを持つ

誰かに何かをしてもらったときの感謝だけでなく、常に感謝の気持ちを抱くことが脳の活性化には有効です。

韓国・ヨンセ大学のキョン博士らの研究では、被験者に「感謝のワーク」を行ってもらい、そのときの脳の状態を調べました。

その結果、感謝しているときには脳内で複数の領域がプラスに繫がり、脳の活動が活発化しました。

② 前向きになる

気持ちが前向きだと、脳は活性化され、脳全体が働きやすくなります。

スペイン・マドリード大学のマーチン・ローチ博士らの研究では、「ポジティブな言葉」と「ネガティブな言葉」を投げかけられたときの人の脳波を測定しました。

その結果、ポジティブな言葉を投げかけられた場合には、脳全体が活性化したのに対して、ネガティブな言葉の場合、脳のアクセルはあまり活性化が起こりませんでした。

③ 気の合う仲間や家族と過ごす

孤独は人の脳にとって「毒」になります。アメリカ・シカゴ大学のカチオポーロ博士らの研究によると、孤独の状態が続くと、新しく脳細胞を生み出す脳内ホルモンの生産が減り、また、他の脳内ホルモンや神経伝達物質も減少することがわかりました。

このように人が豊かに生きていくためには、豊かな人間関係が欠かせないと脳科学的にもわかっているのです。

④ 利他の心を持つ

「まずは自分」と考えるのではなく、まずは他者のことを考える。これが「利他の心を持つこと」です。

スイス・チューリッヒ大学のハイン博士らの研究では、利他行動をした人は、脳内で島皮質と前帯状回、線条体という3つの部位がうまく繫がって活動したことが確認されています。

⑤ マインドフルネスを行う

ビジネス界でも注目を集めるマインドフルネスも、脳にいい効果をもたらします。マインドフルネスが脳の老化の防止に繫がるのです。アメリカ・ハーバード大学のガード博士の研究では、普段から、マインドフルネスを実践している人たちは、70歳になっても45歳のときの脳機能のままでストップしていたことがわかりました。

⑥ Awe(オウ)体験をする

大草原や大海原、あるいは星空など、自然を前にして圧倒される経験を、Awe体験といいます。カナダ・トロント大学のステラー博士らの研究では、Awe体験をすると自分の自我(エゴ)を少なくし、謙虚な気持ちを起こすことがわかりました。

脳の使い方を変えない限り、脳は成長しない

6つのポイントは、考え方や行動そのものはオーソドックスなものが多いと感じたかもしれません。

そして、「もっと豊かに幸せに生きたい」「脳の機能を強化したい」と思うときの考え方や行動としては、意外なものが多いと感じたかもしれません。


『科学的に幸せになれる脳磨き 』(サンマーク出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

「もっと収入を増やしたい」と思うとき、「だったら感謝しなさい、前向きになりなさい」と言われてもピンと来ない人は多いでしょう。私もそうでした。

でも、なぜピンと来ないかといえば、それは従来の脳の使い方にとらわれているためです。

たとえば「もっと収入が増えさえすれば、幸せになれるはず」「もっと良い学校に入れていたら、違う人生を歩めたはず」などと、私たちが「幸せになりたい」と願うときの脳の使い方には、いくつかのパターンがあります。

そして、私たちは普段そのような一定のパターンの脳の使い方を無意識にしてしまっています。ですが、豊かで幸せに生きるには、まずこの従来の脳の使い方を変えていく必要があるのです。

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岩崎 一郎:脳科学者、医学博士

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