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2020.11.18

「フレイル」に関する疑問を解決!1分で読める医師Q&A

kencom公式ライター:森下千佳

健康寿命を伸ばす上で、大切な鍵を握る「フレイル」について、疑問&質問を国立長寿医療研究センターの荒井秀典理事長に伺いました。

「フレイル」に関する4つの疑問

Q.新型コロナによって行動範囲が制限され、家に閉じこもりがちになってしまった両親がフレイルになるのではと心配です。コロナ禍でフレイルにならないために、特に心がけること、できることはありますか?

A.散歩やジョギングなどのため一人で外出することは全く問題がありません。もちろん、人が多く集まる場所や時間帯などは避けることが望ましいのですが、できる限り自粛以前の運動習慣を続けて欲しいと思います。

今は、どうしても行動範囲が狭くなりがちですから、日常生活の中でちょこちょこ動くことを意識しましょう。例えば、歩いて買い物に行くとか、エスカレータを使わず階段を登る、庭やベランダの掃除をするなども有効です。また、声を出すことや、人や社会との繋がりを途絶えさせないことも予防には大切です。感染対策をしっかりとした上で、出来るだけ人と交流し、活発な生活を維持して欲しいと思います。

Q.両親がフレイルにならないために、予防などを心がけて欲しいのですが、他人事だと思って真面目に受け止めてくれません。何か興味を示してもらえるような良い方法はありませんか?

A.まずは、一緒にフレイルチェックをしましょう。
それも叶わない場合は、「40センチほどの椅子から、片足で立ち上がれるか?」または「ペットボトルのふたを開けられるか?」を試して、筋肉の衰えを確認してみましょう。立ち上がれない、ペットボトルを開けられない場合は、フレイルの入り口にいるサインなので、食事や運動による生活改善を頑張っていただくように勧めてください。

Q.筋肉量が落ちてしまい心配です。食事の改善だけでなく、サプリメントやプロテインなどを取り入れる事は有効でしょうか?

A.サプリメントでの栄養補給は、噛んで食事ができるようであればお勧めしていません。自分の歯で噛んで食事をとることは、栄養補給の意味合いだけでなく、口の周りの筋肉や飲む力を鍛え、口腔機能を維持・改善につながるといった健康維持に欠かせない効果があるからです。

ただし、口腔内にトラブルがあって咀嚼がしづらいといった時には、一時的にサプリメントや栄養補助食品を頼ることもあるでしょう。その際にはパッケージの栄養成分表示を確認し、たんぱく質とビタミンDがしっかりと入っているものを選ぶと良いですね。基本的には普段の食事で、たんぱく質がたっぷり入ったバランスのメニューを考えて、しっかりと噛んで食べることを心がけるようにしましょう。

Q.ウォーキングや筋トレが長続きしません。長く続けるコツを教えてください。

A.長く続けるコツは「運動の中に楽しみを作る事」。
ご自身で何か工夫をしていただく必要があると思っています。例えば、ウォーキングは好きな音楽を聞きながら行う、ペットと一緒に歩く、友達と少し距離を置きながら歩くなども良いでしょうし、日によって水泳や自転車、その他のスポーツを取り入れてみるのも楽しいと思います。

筋トレは、なかなかハードルが高いと思いますが、インターネット上ではさまざまな運動のメニューが公開されていますので、自分に合う動画を見つけて実践してみるのも手です。運動は、長く続けていれば必ず効果が出ます。健康な自分を楽しんで、運動を続けていただけたらと思います。

身体機能が低下していると、ちょっとしたアクシデントで怪我をすることもあるので十分注意してください。

荒井 秀典(あらい・ひでのり)先生

国立長寿医療研究センター理事長

【プロフィール】
1984年 京都大学医学部卒
1991年 京都大学大学院博士課程修了
専門領域:老年医学一般、フレイル、サルコペニア、脂質代謝異常
専門技術・資格:日本老年学会理事長、日本老年医学会副理事長、日本サルコペニア・フレイル学会代表理事、Chairman of Asian Working Group for Sarcopenia、Vice President of Asian Association for Frailty and Sarcopenia、President of Asian Academy for Medicine of Ageingなど多数
著書:フレイル診療ガイド編集、サルコペニア・フレイル学会指導士テキスト編集、診療ガイドラインUp-To- Date分担執筆

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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