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2020.09.09

デスクワークで「体がつらい」をラクにするコツ|現役医師が考案した「押し流しマッサージ」

東洋経済オンライン

デスクワーカーの典型的な悩みであるひどい肩こりや腰痛。筋肉を「数回なでる」だけで効果があるという「押し流しマッサージ」をご紹介します(写真:8x10/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/372906?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

デスクワーカーの典型的な悩みであるひどい肩こりや腰痛。筋肉を「数回なでる」だけで効果があるという「押し流しマッサージ」をご紹介します(写真:8x10/PIXTA)

ひどい肩こりや腰痛で悩んでいるデスクワーカーは少なくないでしょう。マッサージや整体に行けば、そのときはラクになるけれど、数日するとまたつらくなる、の繰り返し。クリニックに行っても「異常ありません」と言われ、解決しない。心身ともに、なんとなく不調で、仕事に身が入らない……。

そんな、こりや痛みの真の原因が医学の進歩によって解明されつつあるというのは、『肩・首・腰・頭 デスクワーカーの痛み全部とれる 医師が教える最強メソッド』の著者であり現役の医師である遠藤健司氏です。筋肉をもみほぐすのではなく、「数回なでる」だけで効果があるという「押し流しマッサージ」について聞きました。

最新の研究でわかってきた「こり」「痛み」の原因

肩がガチガチにこっていて、パソコン作業がつらい。

寝ても疲れがとれない。

朝起きると、全身が痛い。

頭痛薬が手放せない。

腰痛で座り仕事がきつい。

これらの症状は、デスクワーカーの典型的な悩みです。皆さんはいかがですか?

こういった「こり」や「痛み」に対して、もみほぐすマッサージを行っている方も多いと思います。かたくなった筋肉に外から力を加えることでやわらかくする、という方法です。

しかし、実はこってしまった筋肉を強くもむのは逆効果です。筋肉に強い力を加えると、「こり」「痛み」をかえって悪化させ、慢性化させてしまうというのが医学的な常識なのです。

実は、筋肉には、もんだり、器具を使ったりして、外から1点に力を加えると、よりかたくなる性質があります。つまり、症状がより悪化するのです。マッサージ店に行ったり、健康器具を使ったりしても、しばらくするとまた患部が痛くなるのはこのせいです。

ひと昔前まで、肩こりや腰痛は骨や関節の問題だと考えられてきましたが、現在では「筋肉」がかたくなったり、水分や疲れ物質がたまってむくんだりすることが原因であることがわかっています。

体を動かさずに作業するデスクワークなどによって、筋肉がかたまって血流が悪くなり、「こり」や「痛み」が起こるわけですが、これをもう少し詳しく言うと、筋肉そのものがかたくなることはもちろん、筋肉の周りにある「ファッシア」がかたくなることも含んでいます。

このファッシアというのは、筋肉の周りにある“緩い”組織です。皮膚と筋肉、筋肉と筋肉、筋肉と腱の隙間は、このファッシアで満たされています。ファッシアという水分を含む「ゆるゆる」な組織が「潤滑油」のような役割をし、筋肉は自由に動くことができるのです。

同じ姿勢を続けて動かないでいると血流が悪くなって、流れるべき水分が流れなくなり、ファッシアに「浮腫」(むくみ)が生じます。この水分が多すぎてむくんだ状態になってしまうと、今度は筋肉の動きを邪魔するようになってしまいます。結果として、筋肉全体がかたまってしまうわけです。

最近の研究では、このファッシアがむくむことで、「こり」や「痛み」を感じやすくなるということがわかってきました。つまり、ファッシアがむくむことで筋肉が動きにくくなってかたまり、なおかつ、むくんだファッシアが「こり」や「痛み」を感じやすくすることでよりひどくなる、というわけです。

もむのではなく指で数回さするだけ

ここからは、この「ファッシアにたまった水を流してむくみをとる」ための「押し流しマッサージ」をお伝えしましょう。

ひと言で「こり」「痛み」といっても、人によってそれが起きている部分はさまざまです。痛かったり、不快感があったりする場所の違いは、血流が滞っているのはどの筋肉か、による違いです。

マッサージは、このターゲットを正しく見極めて行うことで、効果的になります。

肩であれば、「棘上筋」「肩甲下筋」「小円筋」「肩甲挙筋」「僧帽筋」、腰であれば「脊柱起立筋」「大臀筋」などがあり、それぞれの筋肉に対して「押し流しマッサージ」で押し流す姿勢と場所が異なります。

例えば、「腕を横に上げると痛い」人のための「押し流しマッサージ」をご紹介します。この場合は、「棘上筋」がかたまっていたり、むくんでいる状態です。棘上筋は、おもに腕を外に開くときに使われる筋肉で、腕を上げるすべての動きに関係します。

「押し流しマッサージ」を行う際のポイントは、患部の筋肉を伸ばしながらマッサージを行うこと。

筋肉が伸びている状態というのは“痛みを感じる姿勢”ですので、この場合には、「腕を横に上げた状態」となります。この姿勢でマッサージを行いましょう。

1.腕を真横に上げ壁に手をつく

2.指をそろえて矢印の方向に押し流す(一定方向に力を入れてさする)

やり方は上記の2ステップのみ。

痛みを感じる位置まで腕を横に上げ、手を壁について患部を伸ばし、背中と肩の間にある「棘上筋」を、首の付け根から腕の付け根に向けて反対側の手の指をそろえて一定方向に押し流し(強めにさすり)ます。

痛すぎるほどさするのはNGですが、「痛気持ちいい」と感じられるくらいの強さで行うのは問題ありません。患部をさする回数は5回で十分。やりすぎると、腫れたり、もみ返しが起こることがあります。

四十肩・五十肩にも有効

「え? たった5回なでるだけ?」

と思うかもしれませんが、実際に行ってみれば、きっとその効果に驚くと思います。ぜひ一度試してみてください。

この「押し流しマッサージ」は、一般的な肩こりだけでなく四十肩・五十肩にも有効です。 

四十肩・五十肩というのは、筋肉ではなく、肩の関節のトラブルですが、なぜ周辺にある筋肉をマッサージすることで痛みがとれるのかというと、その仕組みはまだ完全にはわかっていませんが、おそらく、関節の近くにある筋肉のむくみが関係しています。

腕を動かすと、むくんだ筋肉に腱板が触れ、痛みが起きるのです。むくみをとってやれば、そのぶん筋肉がスリムになって、腱板が当たらなくなる、ということでしょう。

四十肩・五十肩でうまく動かない肩関節をカバーするために酷使されるのは「僧帽筋」。首・肩・背中全体に分布し、首を持ち上げる(頭を支える)働きをする筋肉です。

「首を下に曲げて、左右に倒すと痛い」のであれば、この「僧帽筋」がこっています。この姿勢で首から肩にかけての「僧帽筋上部」のあたりに痛みを感じるなら、その姿勢のまま、そろえた指のふくらみを使い首から肩口にかけてマッサージをしましょう。先述したように、こっている筋肉を“伸ばした状態”で行うことが大切です。

肩甲骨の内側にある、「僧帽筋の中部」「背骨の両脇にある下部」が痛い場合も同様です。患部に手が届きづらい場合は、家族などに頼みましょう。これも内側から外側へ押し流します。

上腕部の「三角筋」まで同時にマッサージするとより効果的。このマッサージも、5回ほどでOKです。

医師の実体験から生まれたメソッド

実はこのメソッドは、私自身の経験から発見したものです。

数年前に、ひどい五十肩になってしまった私は、最初は薬を飲んだり、関節に注射をしたりといった、これまで自分が患者さんに行ってきたような治療法を試してみました。けれども、私には合わなかったのか、なかなか症状は改善しませんでした。

どうしたものかと思っていたときに出合ったのが、「筋膜リリース」という考え方です。


『肩・首・腰・頭 デスクワーカーの痛み全部とれる 医師が教える最強メソッド』(かんき出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

筋膜というのは、その名のとおり筋肉を覆っている膜のこと。この膜をリリースする。つまり、ほぐしてやると、筋肉が動きやすくなるというのが筋膜リリースです。これには、生理食塩水の注射を使います。この筋膜リリースを、肩関節周りの筋肉に対して行うと、五十肩が改善するというのです。

実際に注射を打ってもらうと、確かに効果はありました。痛みが和らぐのです。といっても、効き目はすぐに消えて痛みが戻ってきます。これを何度も繰り返して、徐々に肩を動かせるようにしていくわけです。

それならば、と思いついたのが、筋膜リリースのターゲットである筋肉を、自分でマッサージすることも有効ではないか、ということ。

さっそく、自分で押し流しのマッサージをやってみると、予想は的中でした。肩を動かしたときの痛みが瞬時に和らいできたのです。結局、このマッサージを続けることによって、私は五十肩を治すことができました。さらに、自分以外にも五十肩で悩む人々に試してもらって、効果を確認しています。

「押し流しマッサージ」はこりや痛みが出たときの対処法ですが、一緒に「肩甲骨はがし」などのストレッチを行い、肩甲骨を積極的に動かすことで肩こり・腰痛の予防ができます。ぜひ、毎日の習慣として取り入れてみてください。

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遠藤 健司:東京医科大学整形外科准教授。日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医

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