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2020.09.19

メディア情報リテラシーを高める具体的な方法とは?コロナ問題から考える情報リテラシー後編

kencom公式ライター:松本まや

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新型コロナウイルスによる社会的な混乱が続く中、人は様々な認知バイアスに陥りやすくなっています。そんな中で、いかに情報の真偽を確かめていくのか、1人1人が正しい知識を付けていくことが重要です。

では、具体的にどのように情報リテラシーを高めていけばいいのでしょうか。前回に引き続き、情報リテラシー、メディアリテラシー教育を専門とする、法政大学キャリアデザイン学部の坂本旬教授に解説していただきました。

個人の情報リテラシーを高める訓練

最も確かな情報は学術的に十分証明された情報

最も確かな情報とは、「学術的に十分証明された情報」です。今は学術論文のデータベースにもアクセスが可能です。論文をチェックし、十分なエビデンスが示されているもので、専門家の間で意見が一致している情報は正しいと言えます。

とはいえ、日常的に論文にアクセスし、情報の真偽を確かめるのは少しハードルが高いですよね。そこでもう少し取り組みやすい方法をご紹介します。

情報リテラシーを高める「だいじかな」チェック

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情報の信頼性を確かめるキーワードとして、「だいじかな」を学校などで教えています。これは元々アメリカの図書館協会が教育現場で使用している「CRAAP(Currency, Relevance, Authority, Accuracy, Purpose)テスト 」を日本語に訳したもの。情報が「誰から、いつ発信されたものなのか」、意見ではなく「事実なのか」、自身にどのように「関係する情報なのか」を検証するものです。
前編で説明したように、「なぜその情報が自身に送られてきたのか、届いたのか」、どのような仕組みで運用されているメディアによる情報なのかを考えることも含まれます。

横読みで情報の信頼性をチェック

最近では、この「だいじかな」テストだけでは不十分で、情報の「横読み」をすることでさらに信頼性を確認することが必要と言われています。横読みとは、ファクトチェックをするときに使われる手法で、1つの情報の信頼性を確かめるため、同じ情報を扱うたくさんのウェブサイトを開き、評価を重ねていくものです。この際、社会的信頼性の高い組織や個人による評価をチェックすることが肝です。例えば医療に関する情報をチェックするのであれば、医師会など医療関係団体の評価を確認します。

ツイッターは情報収集ツールとして優秀

SNSは不確かな情報も含まれていて注意が必要な部分もありますが、実はツイッターは情報収集のツールとしてとても優秀です。おすすめは、世界の大手メディアをフォローしておくこと。国内メディアの情報は時に限定的ですので、世界のメディアの発信する情報に触れることで、情報の偏りを防ぐことが可能です。翻訳サイトなどを使用すれば、言語が分からなくてもある程度内容を把握できます。

メディアリテラシーの高め方

「さぎしかな」チェックの意識を持とう

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メディアリテラシーも、情報リテラシーと同様、意識して批判的に考える力を身につけていく必要があります。そのために、メディアのメッセージの意味を考える「さぎしかな」という5つの質問があります。メッセージを読み取るものなので、情報リテラシーに関連し、情報の真偽を判断する基準として紹介した「だいじかな」とは、目的や判断の視点が異なります。

「さぎしかな」は、アメリカのCML(Center for Media Literacy)の唱える5キークエスチョンを翻訳したもので、メッセージの作者は誰なのか、視聴者の関心を引きつけるためにどのような技術が使われているのか、他の視聴者はどのように受け止めているのか、メッセージの背景にはどのような価値観があるのか、「だいじかな」同様、どうしてこのメッセージが送られているのか、を考えるものです。この視点を持つことは、情報を受け取る際だけでなく、発信する側に立つ際も大切です。

情報を受け止めて、正しく理解することを意識しよう

情報リテラシーもメディアリテラシーも、与えられた情報やメディアのメッセージを無批判に受け入れることなく、内容の真偽や背景について冷静に考える姿勢を持つことが共通して重要となります。特に医療に関する情報は命に関わる重大な影響を与えるおそれもあります。
これをきっかけに、情報の受け止め方を見直してみるとよいかもしれません。

監修者プロフィール

坂本 旬(さかもと・じゅん)
法政大学キャリアデザイン学部教授(図書館司書課程)、同大市ヶ谷情報センター長。東京都立大学大学院教育学専攻博士課程中退。教育系出版社や週刊誌などの編集者、雑誌執筆者を経て、1996年より法政大学。アジア太平洋メディア情報リテラシー教育センター(AMILEC)・福島ESDコンソーシアム代表として、ユネスコのメディア情報リテラシー・プログラムの普及に取り組む。基礎教育保障学会理事。

著者プロフィール

■松本まや(まつもと・まや)
フリージャーナリスト。2016年から共同通信社で記者として活躍。社会記事を中心に、地方の政治や経済を取材。2018年よりフリーに転身し、医療記事などを執筆中。

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