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2020.09.12

ゲームやデジタル技術も活用!withコロナ時代の新しいアートの楽しみ方

kencom公式ライター:大貫翔子

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コロナ禍でライフスタイルが変わり、ストレスを抱える人が増えていると言われています。家族での旅行、同僚との飲み会やカラオケ、映画館にいったり、ジムで運動をしたりといったことが憚られるようになり、ストレスを発散することが難しい日々は今後も続きそうです。

そこで今回注目をしたのが、絵画や音楽といったアートの力でストレスを発散できないかということ。前回に続き、慶應義塾大学・川畑秀明教授にコロナ禍におけるアートの楽しみ方を伺いました。

「楽しもう」とする気持ちを失っていませんか?

コロナ禍の外出自粛により、今まで当たり前にできていた趣味や楽しみが抑制されています。こうした日々が続くことで、楽しもうとする意欲すら起きづらい状況に陥ることも。少しずつ以前の日常が戻りつつある中で、なんとなく「だるい」「めんどくさい」と無気力状態になっていたら、要注意です。

近年、アートが心身のストレスを解消したり、痛みを軽減する可能性について研究が進められています。コロナ禍においても、日常生活に絵画や音楽を取り入れることで、心身のリフレッシュやストレス緩和に繋げられる可能性があると川畑先生は言います。

「ネットで画集を買うなど、まずは気軽にできるところから始めてみましょう。最近では『大人の塗り絵』やイラストレッスンなど、身近なところで触れるアートが一つのブームとなっており、アートを創るということも以前に比べると取り組みやすくなっています」(川畑先生)

芸術を観賞する際は、必ずしも美術館や個展などで芸術作品の実物をみる必要はありません。自分の好きなものにふれる時間を設け、見る、聴くといった行為に対して、感銘をうけたり、楽しんだりして集中することが重要です。

デジタル技術を活用しよう

緊急事態宣言が解除されてからは、美術館も一部入場できるようになりました。とはいえ、予約制だったり利用時間の制限があるなど以前のような自由な観賞は難しい状況です。
そこで注目されるのが、オンラインを活用したアート鑑賞です。

美術館や博物館の中には、デジタル技術を活用して作品をオンライン公開している場合があります。Googleストリートビューで入館できる場合もありますし、美術館作品が観られるサービス、また最新デバイスを駆使した体験型の作品もあります。

「コロナの影響によりデジタルプラットフォームを活かしたアートの展開が増えてきました。家庭用ゲームに向けて海外の有名美術館が作品のデータを展開したのも先日話題になりましたよね。ほかにも人気アーティストがライブを配信するなど、自宅にいながらにして芸術に触れられる機会が増えているので、ぜひ活用してみてください。

ただし、ARやVRなどデジタルデバイスを使ったアート鑑賞では、デバイスを使うという体験に意識が集中しがちです。心身の健康にアートを上手く取り入れるためは、アート作品に対してアクティブに鑑賞することが重要です。例えば、作品に描かれていることを言語化してみたり、模写したりすることです。ですので、デバイスをアート鑑賞の補助として使う場合は、よりアートそのものを楽しめるよう工夫が必要とされています」(川畑先生)

コロナ禍でもできる子どもの情操教育は?

外部からの刺激を受け、感性を磨く幼少期は、子どもが成長するうえで大切な時期。行動が制限される中でもできる情操教育はあるのでしょうか。

「子どもにとって最も身近なアートは絵本です。絵とストーリーの組み合わせによってイマジネーションが育まれます。親子で一緒に読むことで共感が生まれ、より効果的なので、ぜひ一緒に絵本を見ながら読み聞かせをしてあげてください」(川畑先生)

Youtubeなどで映像を見るのも悪くはないそう。ただし、その映像にポジティブに関われるように、親子で同じものを見ながら体験を共有・共感することが大切です。

心身の状態に敏感になろう

アートと聞くと難しそうで少し身構えてしまいますが、美術の教科書に載っているような有名な絵画だけがアートではありません。

ファッションや風景、ビルのデザインなど、「美しい」と感じられるものは身の回りにたくさんあります。もちろん音楽もその一つです。

「自分が美しい・心地いいと思えるものを見つけたら、よりポジティブに関わろうとすることが大切です。『なぜそれを美しいと感じるのか』『どこが好きなのか』と五感で感じてみてください。スマホで写真を撮るときに、角度や明るさを工夫してみたり、加工してみるということもアクティブな関わりです。たたSNSで公開することを目的とするのではなく、楽しむことが重要です」(川畑先生)

これまでと異なる生活様式が求められるコロナ禍においては、自分自身の心の状態に敏感になることがとても大切です。「ストレスを感じている」または「リフレッシュして元気になった」など、変化に気づくことが健康を保つことにつながります。

アートの力、自分が「美しい」と感じるものの力でストレスフルなコロナ禍を乗り越え、健やかな日々を送りましょう。

川畑 秀明(かわばた・ひであき)先生

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慶應義塾大学文学部教授。九州大学大学院博士課程修了。博士(人間環境学)。現在、美や芸術、対人魅力など、人が美しさを感じる心や脳の働きに関する基礎研究とアートの効用や抗加齢医学などへの応用展開について研究を行っている。著書に「脳は美をどう感じるか―アートの脳科学」(ちくま新書)、「美感:感と知の統合」(勁草書房 三浦佳世・横澤一彦と共著)など。

著者プロフィール

■大貫翔子(おおぬき・しょうこ)
編集プロダクションにて住宅情報誌や企業の広報誌、フリーペーパー等の編集・制作に携わる。のちにフリーの編集・ライターとして独立し、住宅、キャリア、ヘルスケアなどのジャンルで記事を執筆。

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