メニュー

2020.08.12

この夏こそ気をつけたい!運動不足が招く腓返り(こむらがえり)ってどんなもの?

kencom編集部

記事画像

気持ちよく眠っているときやスポーツ中、なんの前触れもなく強烈な痛みがふくらはぎを襲う。そんな体験をしたことがありませんか?
一般的に「腓返り(こむらがえり)」と言うふくらはぎがつる症状はなぜ起こるのか。
その原因と対策について、kencom監修医である石原藤樹先生にお伺いしました。

腓返りはなぜ起こるのか、メカニズムを解説

腓返りは痙攣の一種

腓返りというのは、ふくらはぎの筋肉が痛みを伴って縮むことを意味しています。医学用語としては「有痛性筋痙攣」という言い方が一般的です。
何故特定の筋肉が痛みを伴って縮むのか、という点については、実は正確なことが分かっていません。

筋肉は神経から「縮め!」という信号を受けて縮んでいるのですが、それは脊髄の前方にある前角細胞という場所からです。腓返りでは通常とは異なり、統一感のない乱れた信号が全角細胞から届き、筋肉が通常とは違う興奮の仕方をするので、痛みを伴う症状が起こると想定されています。

また、腓返りは筋肉だけの原因では起こりません。基本的には神経による症状です。
ただ、運動不足など筋肉が刺激に敏感な状態であると、その分弱い刺激でも腓返りが起こりやすくなる、ということは考えられます。

筋肉が敏感に収縮してしまう状態として、脱水や電解質異常、血液のPHの変化などがあります。血液のカリウムやカルシウムの変化は筋肉の活動性に影響を与えるので、腓返りを起こりやすくする原因となります。
例えば、熱中症になると脱水気味になるために腓返りを起こしやすくなりますし、栄養素で言えばミネラルが不足すると電解質バランスを崩すので、腓返りが起こりやすくなります。

神経に異常が出やすい病気が引き金になることも

病気を原因として起こる腓返りは、殆どが神経の異常です。大きく分けると、神経が実際に圧迫されて起こる場合と、神経の働きに影響を与えるような原因があり、神経の働きが悪くなって起こる場合があります。
神経が物理的に圧迫される病気の代表が、脊柱管狭窄症と腰椎ヘルニアです。いずれも腰から足の痛みが起こりますが、それ以外に腓返りを起こす場合もあります。

神経に障害を起こす病気の代表が糖尿病です。肝硬変の時にも、毒素による神経障害の関与が想定されています。
また、糖尿病や肝臓病で、コレステロールを下げるスタチンという薬や、カリウムを上げる作用のある利尿剤や降圧剤などを服用している場合も、腓返りを起こしやすくなります。
こうした病気はいずれも高齢者に多いので、腓返りも高齢者により多いのです。

起こしやすい季節や時間帯は?

腓返りは季節や時間帯によって起こりやすさが変わります。
夜に起こることが多いのは、腰からの神経が圧迫されやすいなど、寝ている姿勢にあるのではないかと考えられています。
昼間に蓄積した筋肉の疲労物質が影響するという説や、夜間の脱水が影響する、という説もあります。

夏場なら前述した熱中症を原因とする腓返りが起きやすいです。熱い場所で作業などをしていて腓返りが起こった時は、熱中症を疑ってすぐに休養を取る必要があります。

なった場合はストレッチを

腓返りになった時には、その縮んだ筋肉をゆっくりと伸ばして収縮が治まるのを待つしかありません。
通常の腓返りの場合には、足の指先の関節を腹側に引き寄せるようにして「ヒラメ筋」を伸ばし、そのまま維持します。

予防策としては漢方も有効

基本的には、脱水や電解質異常、血液のPHの変化を防ぐために、水分をしっかり摂る、カリウムなどのミネラルをしっかり摂るといった対策がメインになります。
また、普段からストレッチなどを行い、筋肉が敏感に収縮しにくい状況を作っておくのも有効です。

漢方薬の芍薬甘草湯は腓返りの予防薬として有効です。しかし、カリウムが下がる副作用があるので飲み過ぎには注意が必要です。
マグネシウム製剤や重曹などは、ミネラルや血液のPHを変化させるので予防に有効な場合があります。筋弛緩剤と言って、筋肉の緊張を和らげる薬が使用される場合もあります。

しっかりとした栄養バランスと軽い運動で予防しよう

基本的には、脱水や電解質異常、血液のPHの急激な変化を招かないよう、水分をしっかりと摂り、バランスよく栄養を摂ることが大事になる腓返り対策。
一方で在宅勤務の増加によって筋肉を動かす機会が減ったことで、敏感に収縮しやすくなっているかもしれません。
kencomで紹介しているストレッチなどをうまく活用して、あの辛い痛みに出会わないようにしていきましょう。

監修者プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

(取材・文 kencom編集部)

この記事に関連するキーワード