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2020.08.28

糖尿病で感染症が重症化も!?知っておくべきリスクと注意点【新型コロナと糖尿病・前編】

kencom公式ライター:森下千佳

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新型コロナウイルス感染拡大が収まらない今、続く自粛ムードで生活リズムが崩れ、運動不足や、飲み過ぎ食べ過ぎ、ストレスなどにより、糖尿病になるリスクを抱える方が増えています。そんな中、糖尿病を持つ方が、新型コロナウイルスにかかると重篤化しやすいことがわかってきました。ウイルスから命を守るため、また在宅で頑張る家族を糖尿病にしないために、私たちは今何をすべきなのか?慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科教授 伊藤裕先生に聞きました。

伊藤 裕(いとう・ひろし)先生

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慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科 教授

【プロフィール】
1983年京都大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科博士課程修了。米国ハーバード大学医学部博士研究員、スタンフォード大学医学部循環器内科博士研究員、京都大学大学院医学研究科臨床病態医科学講座助教授を経て現職。日本高血圧学会、日本心血管内分泌代謝学会理事長。日本糖尿病合併症学会Expert Investigator Awardなど、受賞多数。主な著書は、「臓器は若返る メタボリックドミノの真実」(朝日新書)、「なんでもホルモン」(朝日新書)、「「超・長寿」の秘密-110歳まで生きるには何が必要か」(祥伝社新書)など多数。

糖尿病によってコロナ感染症のリスクは変わる?最新研究結果

糖尿病による罹患リスクの変化は不明

糖尿病の方が新型コロナウイルスに感染しやすいかどうかは、まだわかっていません。
一般的に糖尿病は、血液中の糖が多い高血糖の状態が続くことで全身の血管が傷ついていく病気です。この状態が続くと、ウイルスや細菌などから身体を守る白血球の働きが低下してしまうことが分かっています。
そのため、糖尿病があると様々な感染症にかかりやすい傾向になるため、新型コロナウイルスにも感染しやすいのでは?と想像されているわけです。

しかし、厳密には科学的に証明されていないため、気にしすぎる必要はないでしょう。

糖尿病は重症化するリスクが高い

感染しやすいかはまだわかっていないものの、ひとたび糖尿病の人が新型コロナウイルスに感染すると、健康な人に比べて重症化しやすいことはわかってきています。
これまでの報告では、糖尿病の方が新型コロナウイルスで肺炎などを罹患した場合、人工呼吸器に繋がれる、集中治療室に入る、最悪の場合は命を落とす危険性が健康な方に比べて高いとされています。

特に、高齢の方や糖尿病の合併症がある方、血糖コントロールが不良な方などは、十分な注意が必要です。

なぜ、重症化しやすいのか?

新型コロナウイルス感染拡大当初は「新型肺炎」とも呼ばれ、重症化した患者が肺炎を起こして亡くなる例が目立っていました。しかし、最近の知見では肺だけでなく、全身に症状が出ることがわかってきていて、その理由はおそらく「血管の炎症」にあると捉えられてきています。

先ほどお話しした通り、糖尿病は全身の血管を傷めてしまう病気です。肥満や高血圧、心血管疾患などを合併している糖尿病によって血管が弱ってるところに、新型コロナウイルスに感染することでさらに血管に炎症が起これば、重症化してしまうのは当然だと考えられます。

また、糖尿病の人は上述の通り白血球の働きが鈍ることで免疫の働きが低下しているため、肺炎にもなりやすく、より重症化するリスクが高まると考えられます。

糖尿病そのものが悪化するリスクも

新型コロナウイルスだけでなく、たとえ風邪であっても、何らかの感染症にかかると糖尿病は悪化する傾向があります。
感染症にかかり炎症が起きると、身体全体にストレスがかかります。すると、血糖値が上がって免疫が低下してしまい、感染症が重症化しやすくなるという悪循環に陥り、糖尿病の治療も難しくなってしまいます。
新型コロナウイルスに感染すると糖尿病が悪化する事は確実なので、特に血糖のコントロールが不良な方や合併症が進行している方は、感染しないよう十分に気をつけていただきたいです。

今、糖尿病の方が感染しないために取るべき行動は?

感染リスクを避ける対策を徹底する

当たり前ですが、とにかく感染しないようにする事。糖尿病を持たない人と同様の対策を講ずることが、ご本人だけでなくご家族も含め大切になってきます。もし罹患してしまったら重症化するリスクがあると心得て、手洗い、マスクの着用を基本に、密集、密閉、密接のいわゆる「3密」を避ける、といった感染対策を徹底する必要があります。

今まで以上に、血糖コントロールを維持する

糖尿病があると、新型コロナウイルスが重症化しやすいのは事実です。しかし米国糖尿病学会(ADA)の見解では、糖尿病があっても「血糖コントロールが良好」であれば、新型コロナウイルスによる危険性は糖尿病でない人と同等だとしています。

医師や管理栄養士から指導されている通りに食事や運動に気をつけ、今まで以上に血糖値を厳しくコントロールをする事が大切です。

糖尿病の定期診療は欠かさずに

感染者数が再度増加傾向になったことで、糖尿病の定期の診療を予約している人の中には、「病院に行くべきか、延期するべきか?」と悩む方もいるかもしれません。しかし、糖尿病の方は普段通りに診察を受けることが大切になります。
糖尿病は継続して治療と検査を受けることが重要な病気です。受診しない事で、血糖値が高くなること自体も問題ですが、そのような状態でウイルスに感染してしまえば、もっと深刻です。

最近は、「オンライン診察」を実施している病院も少なくなく、医療機関に行かずともオンライン通話や電話で薬をもらえる方法があります。どのような受診方法が良いかはかかりつけ医や最寄りの医療機関に相談してみると良いでしょう。
薬と定期診療を欠かさないようにする事が一番大切な事です。

「コロナ太り」してしまった方へ・・・

自粛期間に運動ができず、いわゆる「コロナ太り」になってしまった方は少なくありませんよね?
「コロナ太り」してしまった方々は、今、確実に血糖のコントロールが悪くなっています。
特に、これまでの検診などで「糖尿病」「糖尿病予備軍」と指摘された事がある方や、そうでなくても両親や兄弟などの身内に糖尿病の人がいる方の場合は、特にリスクが高くなっているので要注意です。

感染拡大中の今、糖尿病の改善&予防のために絶対やるべきこと

糖尿病の改善と予防の基礎は、「適度な運動」と「正しい食事」。新型コロナウイルス感染の拡大が続き自粛生活が強いられる今、安全で効果的な運動や食事は、どんなものがあるのでしょうか?
次の記事では、糖尿病改善&予防のポイントを詳しくお伝えしていきます。

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著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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