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2020.07.27

いまさら聞けない「健康診断の結果」の見方|脂質異常症と糖尿病をマスターしましょう

東洋経済オンライン

コロナ禍で自粛生活が長引き生活習慣が変わってしまった人こそ、健康診断の結果を見直しませんか(写真:CORA/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/364120?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

コロナ禍で自粛生活が長引き生活習慣が変わってしまった人こそ、健康診断の結果を見直しませんか(写真:CORA/PIXTA)

外来などでの健診で「患者さんの健康診断の数値が悪くなっている」という声を最近よく聞きます。

この原因は、新型コロナウイルス感染が続いていることで、在宅勤務により運動不足になっていること、また外出自粛のためにアウトドアスポーツができない方、飲み会や趣味の外食の代わりに自宅でお酒やおいしいご飯をいつもよりたくさん楽しむ方が増えたことではないかと考えられます。

私自身、ちょっとおいしいものを通販で買ってみたり、新作のゲームを極めてみたりしています。適度におうち時間を楽しむことはストレス軽減にもなって大変よいことですが、ひきこもりをずっと続けているとじわじわと身体にダメージが蓄積していきます。

正しい健診結果の読み方

いま身体がどういう状態か、を正確にみられるのが健康診断です。健診結果は専門用語も多く一見複雑ですが、項目の意味は案外わかりやすいものです。

前回の結果と比べてどこがいいか悪いかがわかれば、生活習慣を見直す機会やご自身や家族の健康を守ることにつながります。いつも数字が基準値より高いか低いかをなんとなく見ておしまいにしている方も、この機会に正しく自分の健康を見直していただけたらと思います。

今回は生活習慣病の代表格である「脂質異常症」「糖尿病」について、正しい健診結果の読み方をお伝えしたいと思います。

まず脂質異常症についてですが、中性脂肪が高いこと、LDL(悪玉コレステロール)が高いこと、HDL(善玉コレステロール)が低いことのいずれか1つでも当てはまれば「脂質異常症」と呼ばれます。

脂質は脂肪酸とコレステロールに分けられ、食べ物から摂取します。ここで注意したいのは、同じ脂肪といっても脂肪酸とコレステロールは化学的な構造がまったく異なる物質ということです。

脂肪酸がグリセロールという物質に結合します。これを中性脂肪(トリグリセリド)と呼びます。脂肪酸が3つ、つまりトリオでくっつくので「トリ」グリセリドとも呼ばれます。英語表記ではTriGlyceride、略してTGと書きます。

健診結果の「中性脂肪(TG)」とはこのことです。中性脂肪は肝臓や脂肪細胞中に蓄えられ、エネルギーが不足したときに使われるという原始時代からの大切な役割を果たしています。しかし飢えることの少ない現代ではこれが過剰に蓄えられ、いわゆる肥満のみならず、肝臓に脂肪が蓄積しすぎてフォアグラのように(脂肪肝)なってしまいます。

「肝臓は体の化学工場」と言われるほどさまざまな大切な機能を担っていますので、肝臓が悪くなると肝硬変によって致死的な疾患につながる場合があります。

悪玉コレステロールはないほうがいいのか

次にコレステロールですが、「悪玉コレステロールはないほうがいい」「そもそもコレステロールは少ないほうがいい」と考えていらっしゃる方も多いのではないのでしょうか。

コレステロールは体の中ではホルモンや全身の細胞の膜を作る、なくてはならないものです。

食べ物で摂取する以外にも肝臓で作ることができ、これは血液の中に溶け込めるようにたんぱく質でくるまれて全身に運ばれ、目的地に着くとたんぱく質の殻を脱いでコレステロールとして働きます。このコレステロールとたんぱく質の包みをあわせて「リポ蛋白」と呼び、リポ蛋白のさまざまな種類の中にHDL、LDLが含まれます。

HDLは善玉コレステロール、LDLは悪玉コレステロールと一般的によく呼ばれますが、LDLは身体に大切な物質を作る原料であるコレステロールを血管を通して肝臓から全身に運び、HDLは血管内の余分なコレステロールを肝臓に返しています。

この2つのバランスがとれていれば問題ありませんが、LDLが多すぎると血管にコレステロールが蓄積して動脈硬化につながってしまいます。

だからLDLは「悪玉」、HDLは「善玉」と呼ばれているのです。しかし医学的には、LDLは上記のとおり、ホルモンや細胞を作るためにコレステロールを全身に運ぶ大事な役割がありますので、必ずしも「悪者」ではなく、適度にあることは身体の維持に不可欠です。

次に健康診断で糖尿病に関する数値を見るときは、血糖値とHbA1cという項目を見ます。

血糖値とは血液中の糖分の量という意味であり、血糖値が高くなるとインスリンというホルモンが働き、血液の中の糖分を筋肉や肝臓などに取り込ませることで血糖値を下げます。

このインスリンが不足する、またはうまく働かないと糖尿病につながります。こうなると血管内に糖分が増えてしまい、これが血管を傷つけることで身体に酸素や栄養が行き渡らなくなり、足がピリピリしびれたり、ひどいときには腐って(壊死)してしまうのです。

健康診断においては、インスリンが十分働いているか=血糖値がちゃんと下がっているかを見ているのです。

健診結果で自身の健康を見直すきっかけに

HbA1cの正体はヘモグロビン(赤血球の成分)に糖分が結合したものです。1~2カ月程度高血糖が続いていると、この結合が強くなって赤血球の寿命まで離れなくなります。赤血球の寿命は4カ月くらいなので、このヘモグロビンと糖が結合した赤血球を見ると直近2カ月くらいの血糖値がおおざっぱにわかるというわけです。

HbA1cがもし上昇していたら、2カ月前に暴飲暴食をしていなかったか思い出してみましょう。逆に高かった数字が下がっていたら、2カ月前の生活習慣は改善していたということです。

医師は健診結果を見てアドバイスや治療はできますが、外来の限られた時間ではすぐにいつもの食事や運動習慣まで細かく把握できるわけではありません。本稿が自身の健康を見直す助けとなったら幸いです。

生活習慣病は、毎日の積み重ねでしっかり予防することと、早めに治療することが大切なので、とくに外出自粛前と生活習慣が大きく変わった方は、次の健診時に数値を確認されることをお勧めします。

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上原 桃子:医師・産業医

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