メニュー

2020.07.16

学生時代年金未払いの人はどうすればいいのか|未納期間の不足分を「後払い」するのは可能?

東洋経済オンライン

国民年金を満額受給するためには40年の加入期間が必要。だが、大卒入社のサラリーマンなどは、学生時代に保険料を納めていない人も多い。この「未払い期間」の年金は、後から納められるのか(写真:freeangle/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/357436?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

国民年金を満額受給するためには40年の加入期間が必要。だが、大卒入社のサラリーマンなどは、学生時代に保険料を納めていない人も多い。この「未払い期間」の年金は、後から納められるのか(写真:freeangle/PIXTA)

60歳が間近になった50代の人は、将来の年金額が気になることでしょう。大学卒業後、会社員として働き続けている人は、それなりの金額をもらえると踏んでいるでしょうが、ふと、「そういえば、大学生の頃は国民年金の保険料を納めていなかった……」と思い出し、「その分の年金が少なくなりそう」と心配になるかもしれません。

会社員の期間が長ければ、老齢厚生年金については、確かにそれなりの額になります。その一方で、老齢基礎年金は、保険料を納めていない期間があると受給額が少なくなります。その老齢基礎年金が少なくなった分を増やす方法は何かないのでしょうか。

「合計480カ月分」の納付がなければ減額される

現在、国民年金は20歳以上60歳未満の人に加入の義務があります。20歳到達月から60歳到達の前月まで、40年間(480カ月)分保険料を納めた期間(保険料納付済期間)があれば、65歳からの老齢基礎年金は満額受給することが可能です。

自営業など第1号被保険者として国民年金の保険料(2020年度:月額1万6540円)を納付した期間は、当然、保険料納付済期間になります。また会社員などの第2号被保険者期間、つまり厚生年金加入で厚生年金保険料を負担した期間についても保険料納付済期間となり、2階建て年金制度の2階部分である老齢厚生年金(報酬比例部分)だけでなく、1階部分の老齢基礎年金についても計算対象となります。

そして、第2号被保険者の被扶養配偶者である第3号被保険者(専業主婦・主夫等)だった期間についても、自身で保険料の負担はありませんが、保険料納付済期間となります。これら保険料納付済期間が合計480カ月である場合の満額の老齢基礎年金について、20年度は78万1700円(年額)となっています。この78万1700円を480で割ると約1628円になるので、1カ月の納付につき年額1628円程度の年金が増える計算になります。

むろん、国民年金の被保険者のうちの第1号被保険者のときに、保険料の免除・猶予を受けた期間、あるいは未納だった期間があり、合計480カ月分の納付がなければ、その分年金が減額されます。

学生であっても20歳になったら第1号被保険者として国民年金に加入義務があり、保険料の納付義務があります。ただし、収入が少なくて納付できない場合は、納付の猶予を受けることができます(学生納付特例制度)。また、猶予を受けると、後から10年以内に納めることができます(追納制度)。

しかし、かつて20歳以上の一定の学生は国民年金に加入義務がありませんでした。具体的には、昼間部の大学、大学院、短大、高等専門学校、専修学校・各種学校等の学生は、1991年3月以前(専修学校・各種学校の学生は1986年4月~1991年3月に限定)については加入が任意でした。

現在、50歳以上の人でこれらの学生期間のあった人も多いと考えられますが、任意であるために加入しておらず、その分の老齢基礎年金が少なくなる人も出てくることになります。

大学2年生の4月に20歳になり、大学を4年で卒業した場合、大学生期間のうちの20歳以降の期間は3年間(36カ月)。この36カ月について未加入のまま、大学卒業後の翌月(4月)から会社員となって厚生年金に加入し、60歳の前月まで37年間(444カ月)厚生年金保険料を負担すると、老齢基礎年金の保険料納付済期間も444カ月になります。その結果、老齢基礎年金は72万3073円になり、満額78万1700円より5万8627円少なくなります。

厚生年金を継続すると「経過的加算額」が積み上がる

遠い学生時代の未納が響いて減らされる年金を、何とか満額まで増やす方法はないか気になるところですが、60歳以降でも増やすことが可能です。

60歳以降も引き続き、会社に勤務する人も多いことでしょう。会社員等の場合、厚生年金は最大70歳になるまで加入できます。60歳以降、厚生年金に加入して、厚生年金保険料が給与・賞与から控除され続けても、20歳以上60歳未満の場合と異なり、老齢基礎年金は増えません。しかし、老齢厚生年金の経過的加算額が増えることになります。

経過的加算額は、次の①から②を差し引いて計算します(2020年度)。

①「1630円×厚生年金加入月数(上限480)」−②「78万1700円×20歳以上60歳未満の厚生年金加入月数/480」

60歳以降も厚生年金に加入すれば、①が増えます。一方、②にある厚生年金加入期間は20歳以上60歳未満の期間なので増えないものの、①から②を差し引いた経過的加算額が増えますから、年金は60歳以降1カ月加入するごとに、年額1630円ずつ増える計算となります。

①の厚生年金加入の合計月数の上限が480なので、厚生年金加入が480カ月に達するまで経過的加算額を増やせます。60歳時点で444カ月の人の場合、63歳まで3年間(36カ月)加入して5万8680円(1630円×36カ月)増やすことができます。先述の老齢基礎年金で足りていない5万8627円を上回る額になります。

厚生年金加入によって増える年金額は、20歳以上60歳未満の加入の場合が報酬比例部分(老齢厚生年金)と老齢基礎年金、20歳前や60歳以降の場合が報酬比例部分と経過的加算額(いずれも老齢厚生年金)となります。

大学卒業まで年金に未加入、卒業後はずっと会社員だった人の場合、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」は、50歳代時点では、この経過的加算部分について数百円など少額で表示しています。しかし、60歳以降厚生年金加入で、報酬比例部分だけでなく、この経過的加算額も増えることになり、足りない老齢基礎年金の分を補うことができるのです。

60歳で退職し、厚生年金に加入しない場合も年金を増やすことができます。この場合、60歳以前とは異なり国民年金への加入義務はありません。しかし、老齢基礎年金が満額に足りていない場合は、65歳まで国民年金に任意加入して、第1号被保険者と同じように国民年金保険料を納めることが可能です。保険料を納付すると老齢基礎年金が増えることになります。

その保険料が月額1万6540円ですので、36カ月分足りなければ、その分の60万円程度を納めて満額にすることが可能です。36カ月分の納付で、72万3073円から満額78万1700円になります。ただし、任意加入できるのは最大でも65歳になるまで。老齢基礎年金が受けられる65歳以降はできません。

また、過去にさかのぼって加入することもできません。例えば、63歳0カ月時点で満額まで36カ月分足りない場合、63歳より前の任意加入(保険料納付)はできず、63歳到達月から65歳の前月まで24カ月分しか納付できないことになります。もちろん、厚生年金加入中は任意加入ができませんし、老齢基礎年金を65歳前に繰り上げ受給した場合もできません。

任意加入できる人が、できるだけ多く老齢基礎年金を増やしたいと思えば、早めに任意加入するほうが望ましいでしょう。

「満額までどれくらい足りないか」を把握しよう

任意加入の際、国民年金保険料にあわせて「付加保険料」を納付し、付加年金を増やすこともできます。付加年金とは65歳から老齢基礎年金と合わせて受け取れる年金ですが、月額400円の付加保険料を1カ月分納めると、年額200円の付加年金が受けられます。

つまり、2年で元が取れる計算です。36カ月分であれば、納める付加保険料が合計1万4400円で、受けられる付加年金は年額7200円となります。なお、国民年金任意加入の保険料の納付は口座振替が原則です。引き落とし用の口座を用意しておく必要があります。

このように、60歳以降の厚生年金の加入と国民年金の任意加入という方法で学生時代の未加入で満額に足りない年金を増やすことが可能となっていますが、大事なのは「老齢基礎年金が満額までどれくらい足りないか」を60歳になる前に把握しておくことです。

厚生年金加入は最大70歳まで、国民年金の任意加入は最大65歳になるまでとなっています。「年金の受給額を増やしたくても今からではもう増やせない」ということがないように、早めに備えておく必要があるでしょう。

記事画像

井内 義典:ファイナンシャル・プランナー

【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します