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2020.08.11

マラソン人生を経て、若く健康でいるために心がけている3つのこと【瀬古利彦の今だから言える話Vol.4】

瀬古利彦

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皆さん、こんにちは。瀬古利彦です。

私はかつてマラソンランナーとして3度、オリンピックの代表になりました。その後は指導者を経て、現在は日本陸上競技連盟のマラソン強化・戦略プロジェクトリーダーとして、来たる東京五輪で日本勢が活躍できるよう仕事をしています。

人生のほとんどを捧げてきたマラソンから私が学んだこと、経験から得たことをここではお伝えしたいと思います。

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マラソンはつらく厳しい、それでもマラソンが好きだから続けてこれた

ここまでの人生、マラソンを仕事とし、マラソンを生活の中心に置いて生きてきました。しかし現役時代、「マラソンが好きですか?」と問われると、すぐに「はい」とは言えませんでした。

確かに走るのは楽しく、目標に向かっている時は無心で取り組みます。ただマラソンの練習はつらく、とても苦しいものです。加えてレースで勝って喜べたとしても、「次も勝ってくれるに違いない」というプレッシャーを周囲から感じるようになり、それと戦わなければなりません。私はもともと人前に出たり、目立つことを好まない性格でしたので、現役を引退した時は寂しさと同時に、ホッとしたことを覚えています。

それでも引退後は指導者として、日本陸連の役職者として若い選手のために仕事をしてきました。彼らの力になれるのであれば何でもやってあげたいと思いますし、いい結果が出れば、自分の時以上に嬉しく感じます。
特に私はオリンピックで結果を残せませんでしたので、後輩たちには頑張ってもらいたい。それが今の生きるモチベーションです。そう考えてみるとやはり私はマラソンが好きなのであり、だからこそ、今まで続けてこられたのだと思います。

好きなことを続ける。

目標を持ち続けるというのは生きていくうえで大切です。特に目標は、年齢やその時に自分が置かれている環境によって変わるでしょう。ですから大きな目標を持ちながらも、目の前の小さな目標を立て、それを少しずつクリアしていくのがいい。そのほうが喜べる機会も多いですし、無理がありません。私の人生もその繰り返しです。

逆にあまり興味のないことは頑張っても長続きしないものです。私も人に誘われていくつかの趣味を始めてみましたが、自分からうまくなりたいと思えなかったもの以外はやめてしまいました。そこは無理をしない方がいいですね。

ランニングは何歳でも始められる

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最近、またランニングを始めました。私が現役時代に走った距離を計算すると地球3周半以上になるのですが、今、走っても新たな発見があります。

長く走っていなかったので、体力も落ちていまい、最初はつらかったのですが、それでも頑張って続けると、どんどん長い距離が走れるようになるし、体もつらくなくなっていくのです。何歳になっても練習をすれば、成果は出るんだなと改めて思いました。ここにランニングやマラソンの良さがあると思います。自分の成長が実感しやすいですし、他人と競わずとも楽しめるものです。よほど疲れていたりしない限り、だいたい安定して自分の力を発揮できるスポーツです。

もし走ることが楽しくなってきたら距離を自分で決めて、タイムを計ってみるといいでしょう。特に走り始めたばかりの人は走るたびにどんどんタイムが向上していくはずです。もう私は不可能ですが、自己ベストの更新は何よりも嬉しいもの。これからそれを味わえる人がいると思うとうらやましく思います。50歳でも60歳でも年齢は関係ありません。そしてチャンスがあればロードレースに出てみるのもお勧めです。

走っている間に様々なことを考えられるのもランニングのいいところです。
私も現役をやめて楽しんで走るようになってからは、いろいろなアイデアが浮かぶようになりました。以前は結婚式に招かれた際のスピーチや講演会で話すテーマなどは走りながら考え、家に帰って書き留めていたのです。そのストックが増えていくに伴い、人前で話すことが苦でなくなり、余裕も生まれ、アドリブでも話せるようになりました。

またランニングをしている時間は自分との対話ができます。静かに自分と向き合うと、今まで気がつかなかった気持ちや感情、体の動きを感じられます。忙しい現代人にとってこうした時間は必要なのではないでしょうか。無理のない範囲でぜひ皆さんにもチャレンジして欲しいと思います。

気持ちを若く持ち、よく身体を動かし、目標をもって生きる

また私は新しい文化や習慣も受け入れるように意識しています。

今年に入ってから新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、仕事のやり方も変わってきました。一番は会議が減ってきたこと。最近ではオンライン会議が中心です。私はパソコンの操作が決して得意ではありませんが、周りがやっているので、やらないわけにはいきません。
ただ、実際に経験してみると相手がたとえ海外にいても時間さえ合わせれば、いつでも顔を見ながら話ができますので、最近は楽しんで仕事をしています。

若さを保つためには気持ちが大切です。そして健康を維持するためには体を動かすのも必要でしょう。そして目標を持って生きる。私は今、来年に予定されている東京オリンピックで日本勢が活躍することを目指して毎日を過ごしています。
男女ともマラソンをいい結果で成功させることが東京五輪の成功につながると信じて。

そして2021年以降も日本のマラソンが皆さんに応援してもらえるようにあと1年間、頑張るつもりです。その後はどうなるかまだ分かりませんが、きっとまた新たな目標を見つけ、そこに向かっていくでしょう。

瀬古利彦 (せこ・としひこ)

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1956年7月15日生まれ、三重県出身。
四日市工業高校時代は中長距離の全国トップ選手として活躍。早稲田大学入学後は1年時からマラソンに取り組み、1980年代、世界屈指の長距離ランナーとしての地位を築く。海外のマラソンでもロンドン、シカゴで各1回、ボストンで2回優勝と勝負強さを見せた。オリンピックのマラソン代表には日本がボイコットした1980年モスクワ、84年ロサンゼルス(14位)、88年ソウル(9位)と3大会連続で選出。マラソンの通算成績は15戦10勝。現役引退後は指導者となり、1990年には母校早大を箱根駅伝総合優勝に導く。現在は横浜DeNAランニングクラブエグゼクティブアドバイザーを務める一方、2016年から日本陸連マラソン強化戦略プロジェクトリーダーとして活動している。

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