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2020.08.03

新入社員と打ち解けるためのスマートな「雑談」とは?【40代からの雑談力Vol.1】

kencom公式ライター:大貫翔子

この時期は、4月に入社した新入社員が少しずつ仕事に慣れ、部署の上司や同僚とも打ち解けてくる頃。しかし、今年はリモートワークの導入で直接顔を合わせる機会が少なくなっている企業も多いのではないでしょうか。

自分が年を重ねれば重ねるほど、新入社員との距離感を感じるもの。ですが、部下とコミュニケーションをとって仕事を円滑に進めるのも、いわば上司の仕事のひとつです。さりげない会話で新入社員と打ち解けるための「雑談」について、作家・心理カウンセラーの五百田 達成(いおた・たつなり)さんに伺いました。

「ウザい上司」と思われないための雑談術

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新しい環境に馴染んでもらうためと思っても…

飲み会で新入社員の隣に座ったら、相手の緊張をほぐすためにも、上司であるあなたの方から話しかけてあげたいところ。
その心意気はすばらしいものです。しかし、ここでアプローチを間違えると、一発で「ウザい上司」になってしまいます。

そもそも「相手は自分と話したいと思っていない」ことを理解することが大切です。

「そんなわけあるか!」と訝しげになるかもしれません。

これまで様々な情報に触れて、会社の上司は怖い、年上はめんどくさい、という意識が備わっています。
自身が新入社員の時を思い出してみてください。先輩や上司に話しかけたら怒られるかななど、顔色を伺ったり気を使ったりしませんでしたか?その対象が自分に向いているのです。

だからこそ相手との距離を縮めるための姿勢を年配者がもっていなければいけません。

「雑談は面白くなければいけない」は大きな間違い

そもそも雑談とはなんでしょうか。

雑談というと、意味のない気楽なおしゃべり、と思われがちです。しかし、実際には人付き合いを円滑にするための重要な時間であり、時には社内外でビジネスチャンスを生むコミュニケーションスキルとなります。

話の中身に重きを置くのではなく、相手との関係を深めることを意識すべきです。

雑談は、仲のいい友人との楽しいおしゃべりとも、商談やプレゼンといったビジネストークとも違います。微妙な間柄の人との距離を近づけるための、いわば第3の会話です。話の面白さや場を盛り上げなければと思われがちですが、話下手な人にはハードルが高すぎます。まずは、相手とどんな関係を築きたいのかを考えて、心の準備をしておくといいでしょう。そして、会話のラリーを共有することを意識してみてください。

話下手であっても、例えば飲み会や歓迎会等においても「相手と仲良くなる」という目的意識をもっておくと、話のネタが自然と出てくるのではないでしょうか。

一般的な話から個人の話へ。ただし深掘りはNG

では、ほとんど初対面の相手とどんな話をすればよいのでしょうか。

会話のラリーが続けばよいので、話題は何でもOKです。天気や時事ネタは共通の話題ですが、自分とも相手とも”遠い話題”なので表面的な会話しかできませんよね。

一般的な話題から『あなたはどうお考えですか?』『あなたはどうしましたか?』と個人に”近い話題”にして聞くことで、相手との距離が縮まります。

例えば新型コロナウイルスについての話でも、「自粛期間中、どう過ごしていましたか?」と聞けば、その人ならではの答えが返ってきて、パーソナルな話題につなげることができます。もしかしたら共通点を見つけられるかもしれません。とっかかりは一般論で構わないので、話題は「遠く→近く」という流れを意識しましょう。

ただし、人によっては上司にプライベートな話をするのに抵抗を感じることもあります。反応がいまいちだった時には、深く突っ込むのはやめましょう。

自分語りと武勇伝に要注意

男性のよくないところとして、承認欲求を会話で得ようとする人がいます。
しかし、雑談において自身の欲求を満たそうとするのは好ましいことではありません。

若手社員に「俺がお前くらいの時にはな」「昔はもっと厳しかった」など、聞かれてもいない自慢話や昔話を話しているなら即止めましょう。

若者にとって、お酒の席での上司の自分語りほどつまらないことはありません。しかし、処世術に優れた若い人であれば「すごいですね!」「なるほど!」といって返してくれるため、ますます気持ちよくなるかもしれませんが、本来の目的である相手との距離を近づけることとは程遠いものです。

自分のことに関しては質問されたことに答えるぐらいに留めておきましょう。

雑談は議論ではない。相手と同じ目線に立つ

年齢、性別、立場にかかわらず、相手に対して下手に出た方が雑談上手になれます

例えば会話の中で、相手が自分とは反対の意見を述べたとしましょう。この時、上司だからといって「それは違う!」と否定しては、その後の関係につながりません。それどころか、「頭ごなしに否定する上司」というマイナスイメージを与えてしまいます。

雑談は議論の場ではありません。上司と部下という上下関係があっては、フェアな議論ができるわけがないのです。

「まだまだだな」と思っても、まずは年長者としての器を見せ「そういう意見もあるね」と受け入れてみましょう。逆に、「最近の流行は?」とあえて新入社員に教えを乞うくらいの方が人望を集めます。媚びを売る必要はありませんが、謙虚な姿勢で相手と同じ目線に立って話すことを心がけてください。

新入社員だけに礼節を求めず、こちらから心を開いて丁寧に雑談しよう

基本的に新入社員は、40代、50代の上司と積極的に話したいとは全く思っていません。そんな相手と打ち解けたいのなら、こちらのコミュニケーションスタイルを工夫することが必要です。

40代、50代になると職場での責任が大きくなり、承認欲求も相まってどうしても会話の中で議論や自慢をしてしまいがちです。まずはそのことを十分に認識したうえで、どうやったら相手と円滑な関係を築けるかということを考えながら、テクニックとしての「雑談力」を磨きましょう。

話を聞いてくれる心の広い上司になれば、結果的に尊敬され、仕事もスムーズに進むはずです。

監修者プロフィール

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■五百田 達成(いおた・たつなり)さん
作家・心理カウンセラー。米国CCE,Inc認定 GCDFキャリアカウンセラー

東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て五百田達成事務所を設立。専門分野は「コミュニケーション心理」「社会変化と男女関係」「SNSと人づきあい」「ことばと伝えかた」。最新刊「超雑談力 人づきあいがラクになる 誰とでも信頼関係が築ける」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)発売中。シリーズ累計70万部突破。

著者プロフィール

■大貫翔子(おおぬき・しょうこ)
編集プロダクションにて住宅情報誌や企業の広報誌、フリーペーパー等の編集・制作に携わる。のちにフリーの編集・ライターとして独立し、住宅、キャリア、ヘルスケアなどのジャンルで記事を執筆。

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