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2020.06.04

疲れの解消法にランニングはあり? サブスリー精神科医が分析【ランニング ×メンタル】

RuntripMagazine

『スポーツ精神科医』として、メンタルの専門家として、アスリートのメンタルケアに取り組んでいる精神科医師の岡本浩之です。

学生時代は陸上競技、中でも中長距離に取り組んでいました。当時はメンタルのコントロールがうまく出来ず、結果を残せませんでしたが、精神科医になり、自分のメンタル強化に向き合ってコントロールする方法を身につけました。その経験を活かして、ランナーの皆さんがメンタルの不調に悩むことなく、ランニングを楽しめるようにサポートしたいと活動しています。

フルマラソンを2時間48分で走る精神科医が『メンタル』について、連載でお伝えしています。

前回は、『モチベーションを維持するコツ』をお伝えしました。

心が疲れたときこそランニングのススメ

疲れたときにはゆっくり寝る、おいしいご飯を食べる、お酒を飲むなど、皆さんそれぞれ回復方法があると思います。この記事を読んでくださる方の中には、ランニングで解消するという方もいらっしゃるでしょうか。私もランニングは、疲れたときの解消法の一つとして取り入れています。

「でも、走ったら余計疲れない? 」そう疑問に思う方も多いでしょう。

体が疲れ切ったときには、走ると余計に疲れてしまうのですが、心の疲れにはランニングが有効です。1日中座りっぱなしでパソコンに向かって作業をした、大勢の前で緊張しながらプレゼンをした、長時間の会議で内容についていけないままただ座っているしかなくて苦行だった、仕事でミスをしてひどく責められた、人間関係のトラブルで苛々したり落ち込んだ……など、心が疲れる原因は日々身近なところにあります。

このように心が疲れたとき、私たちの脳内ではストレスホルモンである『コルチゾール』が増えています。コルチゾールは体のケガを治す際に消費されてなくなります。大昔、人間の一番のストレスといえば体のケガでした。ですから、コルチゾールが作られ、ケガの回復のために使われていました。しかし、心が疲れた場合には、体のケガではないので、コルチゾールは使われることなく脳内に残ります。残ったコルチゾールは脳にダメージを与えて、私たちのメンタルは不安定になります。ランニングをすることで、脳内ではBDNF(脳由来神経栄養因子)というものが作られます。このBDNFは、脳の神経細胞の肥料のような働きをして、コルチゾールの攻撃に負けない脳を作ってくれます。


また、ランニングをすると、体にはダメージがあります。ある市民ランナーのフルマラソン前後の血液検査データですが、筋肉が破壊されると増えるCPK数値がレース前161→レース翌日1368(正常値は50~250)、体内で炎症が起きると増えるCRPの数値がレース前0.01→レース翌日0.93となっていました。レース翌日に軽い筋肉痛はあるものの、日常生活は普通に送っていましたが、この数値を見るとケガを負ったのと同じ状態ですね。軽いランニングでここまで変化することはありませんが、わずかながら体にケガを負います。その修復のためにコルチゾールは消費されます。

私は普段クリニックの診察室に1日座って、患者さんの顔と電子カルテの画面を見る毎日です。毎日60人以上の方の心の悩みを聞いています。診療後には書類作成をして、気付けば日付が変わっていることもあります。1日が終わると心の疲れを感じることも多いです。そんな時に、着替えて外に出て、ゆっくり走ってみたり、ちょっとスピードを上げてみたりとランニングをすることで心が軽くなって、その後の睡眠の質が良くなります。

ランニングをして、ストレスホルモンに負けない脳を作り、心の疲れを解消しましょう。

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記事を書いた人  岡本 浩之

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