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2020.05.22

フランスでは、昨年12月にもう新型コロナウイルス感染が起こっていた?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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日本で新型コロナウイルスの感染者が出たのは、2020年に入ってからという認識でしたが、もしかするともっと早くから入ってきていたかもしれないと思わせる事例が、フランスから届きました。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、Antimicrobial Agents誌に2020年5月3日ウェブ掲載された、従来言われているより早い時期に、新型コロナウイルスの感染症が発生していたのでは、というフランスからの報告です。

▼石原先生のブログはこちら

フランスでは、昨年12月にもう新型コロナウイルスの感染があった?

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、2019年12月に中国武漢市周辺で発生し、日本での最初の事例は2020年1月15日に確認されています。
1月6日に武漢市より帰国をした方です。
フランスにおいては同じく武漢市に滞在歴のある旅行者から、2020年1月24日に確認されたのが最初の事例とされています。
しかし、実際には2019年12月からは、季節性インフルエンザの流行があり、インフルエンザ肺炎の事例も複数報告されていました。
その時点では新型コロナウイルス感染症を疑ってのPCR検査などは、殆ど行われてはいなかったので、そこに紛れ込みの事例があった、という可能性は否定出来ません。

インフルエンザで入院していた患者の検体のPCRが陽性に

今回の報告はパリに近い集中治療室を持つ病院において、2019年12月2日から2020年1月16日の間に、インフルエンザ様症状で集中治療室に入室し、呼吸器や鼻腔の検体サンプルが保存されていた患者の、新型コロナウイルスのPCR検査を改めて施行したものです。

その結果、1例のサンプルでPCRが陽性となりました。

その患者はアルジェリア出身で長くフランス在住の42歳の男性で、中国への渡航歴はありません。
肺炎のため2019年12月27日に入院しています。
その時の胸部CT画像がこちらです。

新型コロナウイルス肺炎に典型的な、多発性のすりガラス陰影と記載されています。
ただ、陰影は片側が優位で、区域性に広がっているようにも見えます。
個人的にはとても典型的な像、とまでは言えないように思います。

日本で同様の事例があった可能性も

この1例だけで2019年の12月から、新型コロナウイルス感染症がフランスに広がっていた、とまでは言えないように思いますが、日本でも同様の事例のある可能性は充分にあり、こうした検証も行うことによって、現状は感染経路の特定が困難な事例においても、また別の見方が出来るようになるかも知れません。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36