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2020.05.21

レムデシビルの臨床試験結果とは【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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新型コロナウイルスの治療薬としての製造販売が了承され、特例承認されることが決まった抗ウイルス薬レムデシビル。実際どれくらいの効果があるのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、Lancet誌に2020年4月29日にウェブ掲載された、新型コロナウイルス治療薬として、最も注目されている薬の1つ、レムデシビルの中国での臨床試験の結果をまとめた論文です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

レムデシビルはRNAポリメラーゼの阻害剤

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レムデシビルはDNAの原料となる核酸の誘導体で、ウイルスが細胞内で核酸(RNA)の合成を行う、RNAポリメラーゼの阻害剤です。

これはアビガン(ファビピラビル)と同様のメカニズムです。

この薬はアメリカの製薬会社ギリアドサイエンシズ社の開発品で、現行はまだ世界的に未承認薬、治験薬の扱いです。
エボラ出血熱に対しては研究的使用が行われ、一定の有効性が確認されています。
SARSやMERSなどのコロナウイルスに関しても、基礎実験では一定の有効性が確認されています。

新型コロナウイルス感染症に対するレムデシビルへの期待は、この薬の新型コロナウイルスに対するEC50という、ウイルスの感染細胞での増殖を50%抑制する濃度が、0.77μMという低さであることが影響しています。

実験的にはここまで効果の高い薬は他にないからです。

その実際の有効性はどうなのでしょうか?

臨床試験の結果、レムデシビル群と偽薬群に明確な差はなし

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先日New England…誌のレムデシビルについての論文をご紹介しましたが(※2、※3)、それはこれまでに試験的に投与された61例を解析したもので、コントロール群が設定された、厳密な臨床試験ではありませんでした。

今回の臨床試験は、中国の10カ所の病院において、偽薬を使用した厳密な方法で施行されたものです。

対象は湖北省で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した、年齢は18歳以上でCTで肺炎像が認められ、酸素飽和度が94%以下の237名の患者で、登録は症状出現後12日以内に行われ、PCR検査での陽性も条件となっています。

登録者を本人にも主治医にも分からないように、くじ引きで2対1に分けると、多い群はレムデシビルを10日間注射し、少ない群は偽薬の注射を施行して、その予後を比較検証しています。
試験は2020年の2月6日から3月12日の間に開始されています。

その結果、症状が改善するまでに期間には、レムデシビル群と偽薬群との間で、明確な差は認められませんでした。
その予後にも明確な差は認められていません。
ちなみに試験開始28日後の時点で、レムデシビル群の15%、偽薬群の13%が死亡されています。

早めに投与したら改善したケースも

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ただ、症状出現後早期に投与が開始されたケースでは、有意ではないものの改善が早い傾向は認められていて、もう少し事例が多く、より早期に投与が開始されていれば、また別の結果が出た可能性もあります。

この結果からレムデシビルが無効、というようには言えません。
ただ、著効する夢の薬、ということではないのも、また間違いのないことだと思います。

先日アメリカのFDAがレムデシビルの緊急使用を認可した、という報道がありましたが、
その主な裏付けとしているデータは、アメリカのNIHが主導した上記論文とは異なる臨床試験結果で、こちらはまだ論文化はされていません。
1000例を超える規模のもので、一定の有効性が認められているようですが、今出ている情報の範囲では、著効という感じでは矢張りなさそうです。

今後も慎重に検証を

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この薬はこれまでの臨床試験において、一定の安全性は確認されているので、今のような緊急事態で早期に認可されること自体については、問題のあるものではないと思いますが、その効果は現時点で必ずしも満足のゆくものではなく、今後も慎重に検証する必要がありそうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36