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2020.05.25

夫婦間のアドバイスが必ずしも正解ではない理由【夫婦のトリセツVol.3】

作家:黒川伊保子

「妻が悩んでいると思って、アドバイスをしたらなぜか口論になっていた…」ってことありませんか?

良かれと思って発した言葉でも、時として喧嘩の火種になることもあります。

夫婦のコミュニケーションが年々薄れ、男性が孤独を感じているという時代に使えるコラム「夫婦のトリセツ」。

脳科学を研究する作家・黒川伊保子さんが贈る、3回目は「すれ違う男女の会話」についてです。

夫婦の話し合いは、永遠にすれ違うもの

職場と同じノリを家庭に持ち込んでいませんか?

職場と同じノリを家庭に持ち込んでいませんか?

女は、意見じゃなくて、気持ちを聞きたい。
男は、感情を抑えて、客観性の高い意見を言おうとする。
そこには、永遠の、深いミゾがある。

たとえば、妻が「あなた、このバッグ、茶色とオレンジ、どっちがいいと思う?」と聞いてきたとき。

よく男性が、「妻は、どっちがいい?と聞きながら、たいてい僕が選んだのは買わない」と嘆いたりするが、気にしなくていい。

あれは、恋人や夫が、自分のために意識を集中してくれる時間を楽しんでいるからだ。「僕はオレンジが好きだな。カワイイよ」なんて言ってくれたら、気持ちがアガる。「通勤に使うなら、外ポケットがないと不便じゃない?」なんていう有効なアドバイスも嬉しい。とにかく、ひととき、自分のために意識を向けてくれるのが嬉しいのだ。

とはいえ、彼の意見通りにするかどうかは、また別の話。だって、私のバッグだもの(微笑)。

男は、意見を言ったつもりなので、無視されたように感じるかもしれないが、女は気持ちを聞いただけで満たされたのだ。

意見じゃなくて、気持ちを聞きたい……その意味がお分かりになっただろうか。

夫婦の話し合いも、要注意だ。
妻は、「気持ち」を聞いてもらいたいのに、夫は「意見」に固執してしまう傾向がある。その違いに気づかないと、永遠に話がすれ違い、満足できる結論が出ない。

男性脳は、とっさにゴール指向問題解決型という回路を使う傾向が高い。

とくに、生殖期間真っただ中(20~40代)の男性は、男性ホルモン・テストステロンの作用によって、その傾向が最も強まっている。狩りの成果を上げ、家族を守るために。
一方、同世代の妻の方は、子育て仕様の脳なので、共感型の回路を強く使う。つまり、子育て中の夫婦が、最も心が離れるペアなのである。

意思決定の対話において、問題解決型は、相手の問題点の指摘から始めるのが基本だ。しかし、子育て中の妻に対して、「相手の問題点の指摘」から入ってはいけないのである。

たとえば、「カルボナーラ、食べに行かない?」と言われて、(え~、なんだか重いな、蕎麦がいいな)と思ったとき、「え~、最近飲み会が続いて、胃が重いんだよ。蕎麦ぐらいでいいよ」なんて言ってないだろうか。おそらく彼女のテンションが下がってしまうはずだ。

「それもいいけど、蕎麦はどう? あそこの鶏おろし、美味しかったから、もう一度行こうよ」なんて言ってくれたら、女の気持ちはちょっとアガって、たいていOKしてくれるのに。

共感型は、提案し合うことを楽しめる脳なのである。

問題解決型は、自分の提案が通るかどうかを評価しがちなので、相手の案をちゃんと否定しないで、別の案を言うのは卑怯な気がするのだろうが、それは違う。
共感型にとっては、「前向きの別案」は、「僕も、二人の食事に対してアイデアがあるんだ」という意思表示に感じるからだ。

まずは「気持ち」をしっかり受け止めてみよう

「息子のお受験」で意見が食い違ったときも、「お受験? そんなの経済的に無理だよ。幼稚園のうちから、勉強させるの可哀そうだし」なんて否定から入らないで、「男にはさ、‶近所の友達〟って、必要なんだよ。夏休みとかにつるんで、一緒に大人になる友だち。そんな地元のおさななじみを作ってやりたいな。地元の小学校、見にいってみない? そんなに悪くないかもよ」って言ってみればいい。
別案が思い浮かばないときは、いったん、話を受け止めておいて、後で言ってもいい。

いきなり、相手の問題点の指摘から入らないこと。

「世間話」であっても、「相談」や「提案」であっても、このセオリーだけは、外してはいけない。

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著者プロフィール

⬛︎黒川伊保子(くろかわ・いほこ)
株式会社感性リサーチ 代表取締役社長、人工知能研究者、作家、日本ネーミング協会理事、日本文藝家協会会員

1983年奈良女子大学理学部物理学科を卒業、コンピュータ・メーカーに就職し、人工知能(AI)エンジニアを経て、2003年、ことばの潜在脳効果の数値化に成功、大塚製薬「SoyJoy」のネーミングなど、多くの商品名の感性分析に貢献している。また、男女の脳の「とっさの使い方」の違いを発見し、人類のコミュニケーション・ストレスの最大の原因を解明。その研究成果を元に多くの著書が生み出されている。中でも、『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』は、家庭の必需品と言われ、ミリオンセラーに及ぶ勢い。

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