メニュー

2020.06.03

腸がむくむって本当?便秘の人は要注意の「むくみ腸」とは

ILACY

大腸の水分がうまく流れないことで起こるといわれている「むくみ腸」。女性に多い症状ですが、更年期を迎えて女性ホルモンが減少することでも増えてくるそうです。むくみ腸になると、便秘の解消を妨げたり、太りやすくなったりするなど、さまざまなトラブルを引き起こします。

そこで今回は、むくみ腸になってしまう原因や、それによって起こる不調、予防・改善方法について、東京ミッドタウンクリニックの消化器内科医師、古川真依子先生に伺いました。

本当に腸がむくんでいるわけではない!?

――むくみ腸とは、どういった腸の状態のことをいうのでしょうか。

実は、医学的に「むくみ腸とはこういうものです」というような定義はありません。ただ、

・便秘が3日以上続いている
・おなかの張りを感じる
・食事を抑えているにもかかわらず体重が減らない
といった症状がある場合を指すことが多いです。

「むくみ」といっても、手や足のむくみのように、腸自体がいわゆるむくんでいるわけではないんですよ。腸管に水や便、ガスが溜まって、腸のひだが伸びてしまっている状態をイメージしていただくのがいいと思います。

――むくみ腸かもしれないといって受診される方もいらっしゃいますか?

むくみ腸というより、「おなかの張りが気になって...」と受診される方が多くいらっしゃいますね。普段着ている洋服が着られなくなるほどおなかが張っちゃう方もいるんですよ。

腸閉塞を疑ってレントゲンを撮ることもあるのですが、そうではなくて大腸に便やガスが溜まってパンパンになっているケースもあるんです。

――想像するだけで苦しくなります...。しかも、むくみ腸は女性に多いといわれていますよね。

それは、女性ホルモンが腸に与える影響が非常に大きいからです。排卵してから2週間くらいは腸の動きが悪く、便秘になったり、おなかが張ったりする人も多いと思いますが、いわゆる月経前症候群(PMS)の一環として、むくみ腸の症状が出る場合もあります。

さらに、体型的なこともありますね。女性は男性に比べて臓器が多いので骨盤が広いですし、腹筋も男性の平均よりも弱いので、どうしても腸が伸びやすくなってしまうんです。

――むくみ腸によって、体にどういった影響があるのでしょうか?

むくみ腸は、老廃物が体の中にとどまっている状態ですから、口内炎や肌荒れ、手足のむくみなどの原因にもなります。

ひどいときには気持ち悪くなったり、胃の内容物が食道まで上がってきたりするほか、健康な腸に比べるとポリープやがんの発生リスクが高まるといったことも考えられますね。

――では、むくみ腸になってしまう原因を教えてください。

いろいろある中でも、一番わかりやすいのが食事の内容です。水分が多すぎても少なすぎてもいけないですし、過度なダイエットも良くありません。

また、運動不足による筋力の低下や、血行やリンパの流れが滞ると、腸の働きも鈍くなります。

ただ、むくみ腸は女性ホルモンが作用していることなので、体の周期としてある程度は仕方がない部分でもあるんですよね。

ですので、そうなったときに自分なりの対処法を見つけることも大切かと思います。

むくみ腸対策には、食事の内容を意識することが大切

――むくみ腸の対処法には、どういったことがありますか?

むくみ腸の原因となる食生活の偏りや運動不足、血流やリンパの流れを妨げる冷えなどを見直していくのが効果的ですが、なってしまったときの対処法としては、

・食事の量を減らす
・あまり便にならないような物を選んで食べるようにする(低残渣食・ていざんさしょく)
といったことが挙げられます。

便にならない食べ物というのは、例えば、ヨーグルトなどの乳製品や納豆や豆腐、白身魚、うどん、おかゆなどですね。一方で、お肉や食物繊維を多く含む食品は、腸の消化・吸収のバランスを崩し、便が溜まりやすくなるので避けたほうがいいでしょう。

そして、朝食は意識していただきたいです。

――朝食ですか?そのあたりを具体的に教えてください。

通常、内臓は私たちが起きると同時に活動し始めるのですが、そのときに入ってくるはずの食事が入ってこないと動き出すきっかけがなく、リズムが崩れてしまいます。

朝食を食べずにお昼になると、朝食べていない分、余計おなかがすいていますよね?すると、昼食にいつも以上の量の食事をとってしまいやすくなります。

ですが、まだ腸は動き出していないので、急にたくさんの食事を摂取してしまうと、腸内で処理できる量を超えて、うまく働かない状況に陥るのです。

そのため、朝起きたら、お水1杯、牛乳1杯でも飲んで、まず腸を動かすようにしていただきたいと思います。

――時間がなかったり、食欲がなかったりするときは、水分だけでもいいんですね。

とはいえ、本来は朝起きたときにおなかがすいている状態になっているのが理想なんですよ。そのためには、できるだけ寝る2~3時間前までに夕食を終えるようにしましょう。

また、夕食に何を食べるかも重要で、栄養のバランスのとれた和食を食べるようにしたり、遅い時間になってしまったら食べる量を抑えたり、消化のいい物をとったりと、状況に応じて工夫するようにしてください。

――1日に摂取する水分量のバランスも大事とおっしゃっていましたね。

心臓や腎臓が悪いわけではないので、水分を減らすことはまず考えなくても大丈夫です。減らしてしまうと脱水症状を起こしたり、便が硬くなってより出づらくなってしまったりと、反対に良くありません。

なので、水分はしっかりとってもらったほうがいいと思います。

――また、便秘にはマッサージが良いといわれていますが、それはむくみ腸の場合にも効果がありますか?

もちろんいいと思います。その際は、腸の動きに沿って、「の」の字を描くようにマッサージしてください。横になった状態のほうがマッサージしやすいので、寝る前に行うのがおすすめです。

中でも、おなかの左下のほうにあるS状結腸は便が溜まりやすい場所なので、グッグッと強めに押しましょう。

また、横行結腸といわれる腸の上部は、垂れ下がりやすい部分。そのため、そこを少し上に戻してあげるような感じでマッサージするといいと思います。指先ではなく、手のひら全体で押さえてください。

――こういったセルフケアに努めていても、女性ホルモンの影響からどうしても症状が出てしまうことがあると思います。その場合は医師に頼ってもいいのでしょうか?

もちろんです。医療機関では、緩下剤や漢方での治療のほか、その方に応じた食生活におけるアドバイスも行っています。我慢せずに医師に相談するようにしてください。

この記事を監修した人

古川 真依子 (ふるかわ まいこ) 医師

医学博士/日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化管学会 胃腸科専門医、日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医 、日本カプセル内視鏡学会 カプセル内視鏡認定医、日本人間ドック学会 人間ドック認定医
専門分野:消化器内科・内科

2003年東京女子医科大学卒業
東京女子医科大学附属青山病院消化器内科で医療錬士として関連病院等にて診療にあたり、2008年帰局後は助手として指導にも尽力。2013年より東京ミッドタウンクリニック勤務。胃がん・大腸がん・腫瘍など消化器系の疾患だけでなく、便秘や産後の痔など女性ならではの悩みにも詳しい。

記事画像