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2020.04.23

新型コロナ「便乗商法」はどこまで防げるのか|消費者庁は対策を強化するが監視に限界も

東洋経済オンライン

新型コロナウイルスの感染拡大から店頭でのマスクやアルコール関連の商品は払底が続く。その一方で、コロナに便乗した見逃せない動きがある(編集部撮影)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/346153?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

新型コロナウイルスの感染拡大から店頭でのマスクやアルコール関連の商品は払底が続く。その一方で、コロナに便乗した見逃せない動きがある(編集部撮影)

「今、とても売れています」。3月下旬、都内のスーパーマーケットに足を運ぶと、そう書かれたポップが目に飛び込んできた。海藻食品あおさの入った段ボールに掲げられたものだった。

あおさは、中部大学が2020年2月20日に公表した「海藻の『あおさ』にヒトコロナウイルス増殖抑制効果を確認」というプレスリリースで注目された。これにより、「新型コロナウイルスにも効くのではないか」という認識が消費者の間に広がった。中部大学は公表から5日後、「事実に基づいた内容ではない部分を強く印象づける結果となり、その反響も大きく皆様にご迷惑をおかけする状況となった」と、リリースを撤回している。

しかし、それから1ヵ月ほど経っても、冒頭のようにスーパーで「売れている」と強調して販売されていた。このように新型コロナに対する消費者の不安感に「便乗」した売り方は、あちこちで見受けられる。

ECでの不適切な販売の監視を強化

「この時期のウイルス対策に」「免疫力アップでウイルス撃退」――新型コロナの感染が拡大する中、EC(ネット通販)、そしてスーパーや薬局などの小売店店頭では、そうしたうたい文句が増えている。

消費者庁は「新型コロナについては症状特性が必ずしも明らかでなく、(商品の宣伝に使われる)新型コロナの予防効果は根拠に欠ける」とする。そのため、2月25日~3月6日、3月9日~3月19日と2回にわたりインターネット上の商品表示について緊急監視を実施。その結果、3月10日と3月27日、新型コロナの予防効果を表示した商品を販売する事業者に対して行政指導を行った。

対象となった商品には食品だけでなく、空気清浄機、空間除菌剤なども含まれる。問題となった表現には「あおさ、新型コロナ対策」「ビタミンCはコロナウイルスから体を守る」などさまざま。消費者庁は現段階までに64事業者に行政指導を行い、該当する87商品すべてについて、新型コロナ対策に効果があるかのような宣伝の文言が削除された。

今回、行政指導の対象となったのは、景品表示法や健康増進法などの法律に違反する恐れが高いもの。ただ、行政処分のように、事業者名を公表するなどして改善を求めるものではなく、強制力はない。行政指導を行った理由について、消費者庁表示対策課の田中誠氏は「行政処分を下すには、調査に数ヵ月かかる。その間放置されたままになると、特定の商品による予防効果を信じた消費者が感染するリスクもある。命に関わる事案のため、スピードを優先させた改善要請を行った」と説明する。

消費者庁は今回、ネット上の販売行為について監視を行った。現状、地域のスーパーや薬局などの実店舗においては、景品表示法の観点では各都道府県が所管しており、健康増進法については保健所に権限がある。

では、自治体による小売店への対応はどうなっているのか。東京都生活文化局消費生活部の担当者は、「(実態把握のために)1店舗ずつ見て回るのは難しい」としたうえで、「HP上で悪質事業者を通報するサイトを設けているが、今のところ新型コロナに関する商品の報告はない」と語る。

健康増進法を基に調査を行う各地の保健所については、どこにおいても「今は新型コロナの検査で手一杯」(東京都内の保健所)だろう。つまり、現段階では自治体を中心にした実店舗の細かな監視には限界があるわけだ。

新型コロナを連想させる売り方

だが、実店舗でも新型コロナ予防に効果的と思わせる文言はあふれている。消費者庁は、「新型コロナと明言していない間接的な文言にも注意が必要だ」とする。「この時期のウイルスに」「緊急事態に」などの言葉により、消費者が新型コロナを連想する可能性があるからだ。

ある大手小売店は「特定の商品が新型コロナ予防として(ネットなどで)紹介されて売れていたとしても、その効果の有無は判断できない。売れていれば、商品を切らさないよう補充に努める」と、機を逃さず売りたい姿勢を見せる。また、ある飲料メーカーの関係者は、SNS上で自社商品が新型コロナ予防になるという情報が拡散され、乳酸菌飲料が売れている現状について、「会社として『新型コロナに効く』とは言えないため、消費者が発信してくれるのはありがたい」と、あっけらかんと話す。

SNSなどでは、乳酸菌を含む食品の摂取で「免疫力を高める」ことが、新型コロナ予防につながるという情報が広がっている。こうした影響もあってか、市場調査会社のインテージが全国4000店舗の小売店を対象にした調査によると、3月30日からの1週間でヨーグルトの売り上げは前年同期比13%増、乳酸菌飲料は同11%増となった。

「乳酸菌などの摂取が免疫力を高める」との情報について、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所の千葉剛教授は「免疫力という言葉の定義はあいまいだ」として注意を促す。免疫力が上がるといっても、試験によって指標が異なるからだ。

例えば免疫系物質Aの濃度が高まることを根拠とするところもあれば、物質Bの数が増えることを根拠とするものもあり、「何がどれだけ上がれば良い」といえるかの一律の指標がない状態だという。また、新型コロナへの効果が検証された商品は現段階では存在しないため「免疫力が高まるから、または別の病気に効果があるからと言って、新型コロナにも効くというのは飛躍がある」(千葉教授)。

いつもとは違うことがしたい?

明確な予防効果の根拠がないにもかかわらず、消費者が買い求めてしまうのはなぜか。現段階で効果的な予防策として厚労省などが推奨するのは、石鹸による手洗いとアルコール消毒、人混みを避けること、十分な睡眠をとること、バランスの良い食事をとることなど、基本的な感染症対策だ。ただ、これらが「当たり前すぎて物足りず、プラスアルファでいつもと違うことがしたいのだろう」と、千葉教授は見る。

「プラスアルファ」を求めた結果、特定の食品を摂取しすぎて栄養バランスが偏るなどし、健康状態が悪化しては本末転倒だ。また、「これを食べているから大丈夫」「これを身につけているから感染しないだろう」といった過信も避けるべきだろう。今は、特定の製品や食品による予防はありえないことを念頭に置き、基本的な感染症対策を徹底するしかない。

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兵頭 輝夏:東洋経済 記者

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