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2020.04.05

「マスクは無意味」の議論にもう意味がない理由|自分はもちろん他人を守る効果を活用しよう

東洋経済オンライン

1世帯当たりたった2枚という方針には批判も集まっているが、ガーゼマスクの配布自体はいいことだ(写真:ロイター/アフロ)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/342376?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

1世帯当たりたった2枚という方針には批判も集まっているが、ガーゼマスクの配布自体はいいことだ(写真:ロイター/アフロ)

4月1日、安倍晋三首相が国内の約5000万の世帯にガーゼマスクを2枚ずつ配布することを発表した。

この対策に対して異論を唱える人たちが多い中、「このタイミングで配るのはどうかとか、1世帯2枚でいいのかといった議論はあるかと思いますが、洗って使い回せるマスクでしょ。すごくいいと思います」。

こう持論を展開するのが、独立行政法人国立病院機構東京病院呼吸器センターの永井英明医師。日本感染症学会指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会指導医などを持つ、呼吸器感染症治療のプロフェッショナルだ。

永井医師は、現在の新型コロナウイルス感染症に対するマスクの扱いについて、疑問に思うことが多いという。

「例えば、WHO(世界保健機関)は、新型コロナウイルス感染症の症状、とくに咳がある人やその人の世話をする人だけマスクを使うように呼びかけています。しかし、本当はすべての人がマスクを使ったほうがいいはずです」

厚生労働省は、新型コロナウイルスに関するQ&Aのなかで、マスクについて「自身の予防用にマスクを着用することは、混み合った場所、特に屋内や乗り物など換気が不十分な場所では一つの感染予防策と考えられます」としている。

期待できるマスクの効用は主に4つ

そもそも、マスクとは何のために着けるのか。ここでその目的を少し整理してみたい。

永井医師によると、一般的にマスクの効用は次の4つがあるという。

①感染(する)リスクを下げる

②無意識に手で鼻や口を触るのを防ぐことで、接触感染を防ぐ

③気道の乾燥を防いで粘膜を守る

④感染していた場合、飛沫によって人に感染させるのを防ぐ

①~③は自分の身を守るための、④は他人の身を守るためのものだ。それぞれについて解説してもらった。

「まず①『感染(する)リスクを下げる』についてですが、不織布のマスクでの研究データはいくつか出ています。ただし、病原体から身を守る効果があるという結果もあれば、効果なしという結果もあり、結論は出ていません。しかし、少しでも効果があるのであれば、マスクを使うべきだと考えます。相手は目に見えない病原体です。やれることは何でもやって身を守るべきです」

不織布のマスクは、家庭医マスクとして広く普及しているものだが、もともとは医療現場で使われていた。最近、よく耳にする「サージカルマスク」というのがそうだ。

近年、咳エチケットや花粉症対策などで需要が一気に伸び、家庭用マスクの素材をしての利用が9割以上を占めているという(一般社団法人日本衛生材料工業連合会による)。

「サージカルマスクはその名前のとおり、本来は手術(Surgery)のときに外科医が着用するもの。手術中、会話をするときに医師や看護師らが放つ飛沫が、患者さんの術野に飛ばないためにします」

そのほか、患者の血液や体液が付かないようにするという役割もある。

医療現場では「N95」という名前のマスクも使われている。これは結核など感染力が強い感染症にかかった患者を診るときに着用する特殊マスクで、こちらは「医療従事者の感染予防」が目的となる。編み目が細かいため息苦しく、長い間、装着できないと永井医師は言う。

「口や鼻に触れない・気道を潤す」も大事

②「無意識に手で鼻や口を触るのを防ぐことで、接触感染を防ぐ」ことはできるのか。私たちは1日で何回、口や鼻を触るのだろうか。オーストラリアの研究で明らかになっている。これによると、26人の被験者(学生)は平均で1時間に23回、口や鼻、目に触っていた。

「マスクを着けていると物理的にマスクが邪魔になるため、口や鼻に触らなくなります。新型コロナウイルスは接触でも感染しますから、マスクを着けておくと手に付着したウイルスが口や鼻の粘膜に付くことを予防できます」

一定程度の効果はあるといえそうだ。

続けて、③「気道の乾燥を防いで粘膜を守る」効果はどうか。

普段、気道は分泌物を痰として出すことで中に入ってきたウイルスや細菌など病原体を除去している。気道が乾燥すると分泌物が減り、病原体が除去されなくなる。また、気道の粘膜には免疫システムが備わっているため、乾燥によって粘膜が傷害を受けると免疫システムも弱まってしまう。

いずれにしても、気道が乾燥するほど呼吸器の感染症にかかりやすく、反対に、湿気のある自分の息で潤すことができれば、ウイルス感染から身を守ることができるかもしれないという。

最後に④「感染していた場合、飛沫によって人に感染させるのを防ぐ」効果を考えてみよう。

WHOなどは、「咳や痰の症状がある人が咳エチケットとしてマスクをする」としており、症状のない人もマスクをしましょうとまではいわれていない。

しかし、永井医師は「新型コロナウイルスも、インフルエンザも、感染の広がりを防ぐためには、すべての人がマスクをつけるべき」と述べ、その根拠として自身らが行った研究結果を挙げる。

「当院で陽性が確認されたインフルエンザの患者さんにアンケート調査を行ったところ、症状が非常に軽く、インフルエンザと思わずに学校や仕事に行けると思っている人が約2割いました。そのうち感染対策ができていない人が約6割いて、インフルエンザを広めてしまった可能性があります」

新型コロナウイルス感染症でも症状がほとんどない人、軽い人がたくさんいるといわれ、その人たちが知らぬ間に感染を広げていると考えられている。

「普通の会話でもしぶきが飛んでウイルスを感染させるリスクがある。常にマスクをしていれば、それを防ぐことができます。マスクは自分の身を守るためだけでなく、相手の身も守るためにつけるべきなのです。不織布のマスクが手に入らず困っている人が多いですが、人に感染させることを防ぐの目的であれば、ガーゼのマスクで十分。2~3枚を洗って使えばいいと思います」

まとめると、ガーゼは不織布に比べて目が粗いので、感染リスクを下げる力は弱いものの、無意識に手で口や鼻を触らないことや、気道の乾燥を防ぐ、人に伝染させないといった効果は期待できるということだ。

素材より大事なのはマスクの付け方

不織布か、ガーゼか。これまで素材に注目してきたが、それよりむしろ永井医師が重視するのは、マスクの付け方だ。電車などに乗っていると鼻を出してマスクを着けていたり、オフィスで会話をするときにマスクを外していたりする人がいる。

「マスクは話すときに飛び出ている細かい飛沫を遮断するためにも重要です。マスクを着用する意味が分かっていない人が多いように思います。会話をするときにわざわざ外す人がいますが、マスクを着用したまま、が大前提です」

せっかくのマスクも、効果のある付け方をしなければ意味がない。そこで永井医師に聞いた正しいマスクの付け方は次の通り。

・マスクは口だけでなく鼻まで覆う

・不織布のマスクでワイヤーが入っているものは、付ける前にしっかり鼻の大きさに折って、折り目を付けてからフィットさせる

・頬とマスクに隙間ができないように密着させる。しばらく着けた後、頬にマスクの跡が残るぐらいしっかり密着させることが望ましい

・サイズが大きめだったら、ゴムの部分を縛って調整する

「新型コロナウイルスは人の目には見ることができない。だから感染させるリスクを下げるために、正しい付け方をしなければなりません。新型コロナウイルス感染症が急速に拡大している今、すべての人が常にマスクの着用をしてほしい」

一方で、健康増進やストレス解消のために家の周りや公園をウォーキングしたり、犬の散歩をしたりときは、人との接触がなく感染のリスクが低いためマスクは不要だという(花粉症の人は除く)。

あわせて手洗い&アルコール消毒を

マスクのほかにも、新型コロナウイルスの感染から身を守る対策がある。ご存じ、手洗いとアルコール消毒だ。医療現場ではアルコールで手指を消毒することを「手指衛生」といって、感染対策のキホンのキになっている。

「アルコール消毒はスーパーなどの施設に入ったときだけでなく、そこから出るときも行ってください。我々も、仕事をしている医療現場では、病室に入るときだけでなく、病室から出たときもアルコールを使います。何かモノに触れたら、すなわちそれは感染リスクがあるということですから。ただし、アルコール消毒をしたら手洗いはしなくて大丈夫です。できれば、アルコールを持ち歩いたほうがいいでしょう」


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先が見えない新型コロナウイルスの感染拡大。日本や韓国、シンガポール、香港などマスクをする文化がある国は、マスクをする文化のないイタリアやスペイン、アメリカより感染率が低いということを報じているウェブサイトもある。永井医師は言う。

「今シーズンはインフルエンザの患者さんが極めて少なかった。その理由として暖冬、高湿度も大きかったかもしれませんが、新型コロナウイルス対策で、多くの人がマスクや手指消毒をしているからだという意見もあります。そうだとすると、マスクと手指消毒、あとは三密を避けるという3つの対策を徹底することで、新型コロナウイルスの大流行のピークを抑えることができるのではないでしょうか」

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鈴木 理香子:フリーライター

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