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2020.03.26

専門性がないと悩む女性も焦らなくていい理由|人生後半戦こそ幸せに働くためにできること

東洋経済オンライン

セカンドキャリアこそ、自分のやりたいことにチャレンジするチャンスです(写真:kikuo / PIXTA)

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セカンドキャリアこそ、自分のやりたいことにチャレンジするチャンスです(写真:kikuo / PIXTA)

仕事でも家庭でもやるべきことが多すぎる。思いどおりに事が運ばず、やれないことに対する罪悪感やストレスを抱える毎日。そんな悩みを抱える女性は少なくないのではないだろうか。日々の忙しさに流されてしまいそうな中でも、人生100年時代の今こそ、長期的な視点でキャリアを築いていくことが求められる。大手企業の管理職を経て、女性のセカンドキャリアを支援するため起業した西村美奈子氏に、女性のキャリア選択について聞いた。

定年退職後に何をしたらいいかわからなかった

私は新卒で富士通に入って、30数年間富士通グループで働いてきました。仕事が好きで、仕事を中心とした生活を送ってきたのですが、40代後半ぐらいから定年を迎えることに恐怖心を抱いていました。

会社を辞めたあとに何をしたらいいのかがわからなかったんです。家事を一生懸命にやりたいわけでもないし、旅行は好きですけど多分飽きてしまう。子どもたちもいつまでも親と付き合ってはくれないし、孫の世話もまだ早い……と考えては不安に感じていました。

かといって、定年退職後の仕事のイメージも持てませんでした。ソフト開発にインストラクター、コンテンツビジネス、情シス、マーケティングなど、会社では本当にいろいろなことをやってきたので、「私の専門性って何?」という感じでしたし、富士通の名前で仕事をしてきた私が「西村」個人になったときに何ができるのだろうという疑問もありました。

こういうセカンドキャリアの悩みを抱えているのは私だけだろうか。そう思い、役職定年になったくらいの頃からイベントを開催したり、昭和女子大の現代ビジネス研究所の研究員として研究をしたりするようになりました。そうしたら、やはりみなさん悩んでいるんですよね。

だったら研究に専念してみようと、定年まで2年ほど残して、58歳になる直前に早期退職をしました。1年間研究に専念したのち、起業して女性のセカンドキャリアを支援する研修事業を立ち上げ、今は1年ほど経ったところです。

「セカンドキャリアを考えるのに、男女は関係ないのでは?」とよく言われます。実際、講義内容は男女でそう変わりませんが、定年後を取り巻く状況はまったく異なります。

これまで「定年」は男性のものでしたが、男女雇用機会均等法から30年余りが経ち、女性も定年を迎える時代になりました。ただ、「60歳のスーツを着たおばさんがいる」ことが世の中に認識されていないような感覚があります。

西村美奈子(にしむら みなこ)/Next Story 代表。昭和女子大学現代ビジネス研究所で「働く女性のセカンドキャリア」を研究。研究結果をもとに「マチュア世代の働く女性のセカンドキャリア」支援事業を展開(写真:西村美奈子)

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西村美奈子(にしむら みなこ)/Next Story 代表。昭和女子大学現代ビジネス研究所で「働く女性のセカンドキャリア」を研究。研究結果をもとに「マチュア世代の働く女性のセカンドキャリア」支援事業を展開(写真:西村美奈子)

例えば「女性活躍」で推進されている女性のキャリアアップや仕事と家庭の両立といった話は、主に20〜40代の女性に向けたもの。じゃあ「シニアの活用」はどうかというと、そこで想定されているのは定年後の男性です。つまりシニアの女性が抜け落ちてしまっているのです。

これまで少数だった「定年後のシニア女性」が一定のボリュームを持った新しいクラスターとしてこれから世の中に出てくる。今はそういうタイミングです。まだ、セカンドキャリアの事例となるような先輩女性そのものがあまりいない状況です。会社で行われた役職定年前の研修でも、参加者の中に女性は私1人だけでしたし、定年後がイメージできないのも当然ですよね。

実際に女性向けのセカンドキャリア支援の研修を始めるようになって、高いニーズがあることを実感しています。ほとんどの方は自らこの研修を探し、自費で申し込んでくださっていて、皆さん悩みを解決しようと真剣です。中には福岡からわざわざ東京にお越しになる方もいらっしゃいました。

参加者の多くは、男性と同じように会社で働いてきた、経済力もビジネス感覚もある方たち。非常に優秀ですから、定年後にその力を使わないのはもったいないと強く思っています。

「自分には何のスキルもない」と焦る必要はない

30〜40代の女性の中には「特別な専門性やスキルがない」と将来のキャリアを不安に思う人も多いと思います。私も同じように思っていたので気持ちはわかります。ただ、これは今だから言えることですが「自分には何のスキルもない」と焦る必要はないのだと思います。

まだまだ準備の時間はありますから、まずはこれまでやってきた仕事の要素を分解してみましょう。「今やっている仕事は潰しがきかないから、会社を辞めたら何もできない」と思っていたとしても、その仕事を細かく分解していけば、他の会社や分野でも使えるスキルは必ず見つかります。

そして要素の組み合わせ方によって、新しい何かができることもあります。私自身、特別な専門性はなかったものの、これまで関わってきた一つひとつの経験が今の事業につながっていますしね。

30〜40代の方はセカンドキャリアを心配するよりも、目の前のことを頑張るのが一番大切だと思いますし、50歳前後の方であっても定年までは10年あります。時間が武器になりますから、不安を感じているのであれば何かしらのアクションにつなげることが不可欠です。

「ピック・スリー」の考えを取り入れる

アクションを起こすうえで、私は「ピック・スリー」の考え方が有効だと思いました。「仕事・睡眠・家族・運動・友人」の5つのカテゴリーから毎日3つを選ぶというものですが、5つの中に「セカンドキャリアの準備」というカテゴリーを1つ増やすのは、意識的にセカンドキャリアについて考える時間を持つ意味で効果的です。



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また、『ピック・スリー』で紹介されていた「副業を成功させる4つの方法」は、「セカンドキャリアの準備をする4つの方法」と言い換えられると思いました。研修でも使わせていただこうかなと思ったくらいです(笑)。

まず1つ目の「目的を明らかにする」というのは、セカンドキャリアを考えるうえでも非常に大切です。私自身、研修生が集まらなくて胃が痛くなる思いをしていた起業当初、「ワクワクした毎日を手に入れたい」という原点に立ち返ったことで「1人でも来てくれればそれでいい」と楽になれました。

そして目的を定めたら、「30日間は辞めない」など期限を切って、とりあえずやってみる。その間、セカンドキャリアに関する予定をほかの予定と同じように扱い、できるだけたくさんの人に自分の思いを伝える。そうやって人に話すうちに共感してくれる仲間ができていきます。

先ほど申し上げた通り、セカンドキャリアを考えるうえで、目的を明らかにすることは非常に重要です。ただ、研修にいらっしゃる女性は本当にさまざま。中には、「自分が何をしたいのかまったくわからない」という人もいます。

「自分のことを優先するのはよくない」「自分を主張してはいけない」と思い込んでいる女性は多いように思います。私自身、若い頃男性だらけの社内研修に女性1人で参加したとき、「自分の意見を言いすぎると嫌われる」と感じたことがありました。

そうやって自分にブレーキをかけることが、女性にとって処世術のようになってしまっている。「自分がやりたいこと」ではなく、空気を読んで「やるべきこと」をやってきた女性は少なくないのではないでしょうか。

だからこそ、自分を押し殺して誰かのために頑張るのではなく、「自分がやりたいこと」をセカンドキャリアでは目指してほしいと思うのです。夫や子どもがいようと、やはり最後は自分の人生です。何をしたいかわからない人は、「どういうときに自分が楽しくなれるのか」「何が好きなのか」など、まずは自己分析をしてみましょう。

やりたいことを実現するために、新しく何かを始めることだってできます。先日お会いした方は70歳でキャリアコンサルタントの資格を取って、現在は週4日キャリア支援の仕事をしているのだそうです。そうやって「自分のやりたいこと」をやることで、結果的に誰かのためになれば理想的ですよね。「マズローの欲求5段階説」でも、自分の能力を人のために活かすことができたとき、人は一番幸福を感じると言われています。

行動すれば、道は見えてくる

目指す方向によって準備すべきことは変わってきますので、「海と山のどちらを目指すのか」だけでもわかれば、とりあえず動き始めることはできます。そうやって動いてみれば、次にやるべきことも見えてくるものです。やはり動かなければ何も始まりません。

私が女性のセカンドキャリアを支援したいと思ったときも、何をどうしていいかまったくわかりませんでしたが、動いてみれば「これは面白そうだからもうちょっとやってみよう」など、自然と進むべき方向がわかっていきました。

やってみて違ったと思うなら方向転換すればいいですし、何をやるかも、どのくらい働くかも、いつまで続けるかも、すべて自分で決められることがセカンドキャリアの最大の利点です。そんなに難しく考える必要はありません。

実際、セカンドキャリアがうまくいっている女性は、総じて明るくて前向きで、楽観的です。男社会の中で理不尽さを感じたり嫌な経験をしたりしてきたぶん、「マイナスなことに構っていないで次にいこう」という切り替えが早いのだと思います。もちろん悩んで紆余曲折していますし、うまくいかないこともありますけど、「それはそれでいい経験になった」と捉えて、暗く落ち込むことはない印象です。

セカンドキャリアこそ、自分のやりたいことにチャレンジするチャンス。そしてやりたいことをやっていれば、自然とイキイキ過ごせるものです。自分で選ぶことを大切に、人生のオーナーシップを持つことが、充実した後半戦を送る第一歩になるのだと思います。
(構成 天野夏海)

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西村 美奈子:Next Story 代表

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