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2020.05.30

医師が解説!辛い膀胱炎を予防する生活習慣【膀胱炎・後編】

kencom公式ライター:森下千佳

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女性には特に身近な病気「膀胱炎」。前回の記事では、放っておくと大きな病気の引き金になる事もあるとお伝えしましたが、いつもの生活習慣を変えるだけで予防ができると言います。今回は膀胱炎の検査方法と治療法、詳しい予防方法を国立国際医療研究センター泌尿器科の野宮明先生に教えていただきました。

▼前回の記事はこちら

膀胱炎の検査

膀胱炎の基本的な検査は主に、尿検査と尿培養検査です。必要に応じて、超音波検査を行うこともあります。
それぞれの検査の特徴は以下の通りです。

①尿検査
尿を顕微鏡で見て、尿中の白血球や細菌を確認します。結果がすぐに出る検査です。

②尿培養検査 
膀胱炎の原因となっている菌を特定し、抗生物質の効き具合(感受性)を確認する検査です。結果が出るまでに数日かかるため、結果が出たときには既に治っていることもあります。しかし、近年薬に耐性を持つ菌が増加傾向にあるため、最初に処方された抗生物質が効かなかった場合などに、有効な抗生物質を選択するのに必要な検査です。

③超音波検査
必要に応じて腎臓、膀胱に異常がないか確認します。膀胱炎を繰り返す時などに、他に病気が隠れていないかどうかを調べる検査です。異常があれば、膀胱鏡やCTなど必要な検査を追加して詳しく調べます。

女性は特に泌尿器科に抵抗がある方もいると思いますが、泌尿器科での診察は、内診はほぼなく問診、尿検査、腹部の超音波検診などが主です。恥ずかしがらずに相談してみましょう。

膀胱炎の治療

基本的に膀胱炎は菌に感染したことが原因で発症するため、抗生物質などの抗菌薬の投与が主な治療方法になります。また、菌を体の外に出すためには、生活習慣を変えることも重要で、十分な水分補給やトイレの方法などの指導も同時に行います。

抗菌薬による治療をしても症状が改善しない場合や、何度も膀胱炎を繰り返す場合は、複雑性膀胱炎や膀胱炎以外の病気の可能性もあるため、さらに詳しい検査を行っていきます。

近年増加する抗生物質の効かない膀胱炎への対策は?

これまでは、症状を引き起こす大腸菌を除菌できる抗生物質を飲むことで、ほとんどの膀胱炎が数日で治っていました。ところが最近、抗生物質の効かない大腸菌が増えて問題になっています。抗生物質が乱用されていることが原因と言われており、細菌もさまざまな手を使って生き延びようとするからです。

耐性菌を作らないための対策としては、「抗生物質の乱用を避けること」と「一度膀胱炎になったら医師の判断で治癒の確認をすること」が大切です。

症状がよくなると、治ったと勘違いして自己判断で薬を途中で止めてしまったり、病院に確認に行かない方がいます。しかし、中途半端に病気を治してしまうと、残った菌が耐性化して、また次の膀胱炎を引き起こすこともあるのです。医師の指導に従ってしっかりと治療するようにしましょう。

膀胱炎にならない生活習慣を身につけよう!

適度な水分補給&トイレを我慢しない!

膀胱炎の予防で一番大切なのは、排尿をガマンしないこと。適度な水分補給をして、膀胱内の細菌を尿と一緒にしっかりと外に出すことを心がけましょう。1日の水分補給の目安は、量ではなく色で判断すると良いと思います。

目安は出がらしのお茶の色(薄い黄色)を目指しましょう。尿の色が濃い場合は、水分が足りてないと判断して、水分補給を心がけてください。寝ている間は水分補給ができないため脱水状態になりやすく、朝方の尿の色は濃くなるものなので、日中の色で判断しましょう。

トイレはギリギリまで我慢せずに、尿意がなくても2〜3時間ごとに行く習慣が理想的です。5〜6時間行かなくても平気な方は、水分量が足りていないか、貯めすぎです。こまめな水分補給が必要です。

トイレのビデ機能を使わない

温水洗浄便座のビデ機能の使用をやめましょう。膀胱炎を繰り返す患者さんにビデの使用をやめてもらうと、それだけで繰り返さなくなる事がよくあります。温水洗浄便座の多くは、お尻とビデを洗うノズルが一緒になっている構造のものが多いので、ノズルやタンクの中で大腸菌が繁殖している場合があります。そのタンクの水で尿道付近を洗ってしまうと、除菌をするどころか、逆に菌を補充しているような状況になってしまうのです。

月経時の経血が気になる場合は、お風呂のシャワーを使用するか、清潔な使い終わったペットボトルにぬるま湯を入れて流すなどの工夫が必要です。

生理中は清潔を保って、無理をしない!

女性の場合は、周期的なホルモン環境の変化が、尿道内膜にも影響を及ぼすことがあります。特に生理中は、尿道周辺が汚れていたり湿っていたりして菌が繁殖しやすくなるうえ、体の抵抗力も落ちるので膀胱炎になりやすくなります。ナプキンや、おりものシートをこまめに変えて清潔を保ち、免疫力を下げないためにも無理をしないことが大切です。

性行為後の排尿を習慣に

女性の膀胱炎の一つのピークは、妊娠出産を迎える20代~30代の女性。つまり、性行為と膀胱炎は深く関わり合っています。性行為時は、尿道に細菌が入り込みやすいため、性行為後の排尿を習慣にして、しっかりと体の中から菌を排出することを心がけましょう。汚れがひどい場合は、シャワーや入浴をしても良いでしょう。

冷え対策&ストレス発散で免疫力アップを!

私たちの体が健康なときは免疫力が働き、からだにとって不必要な菌は退治され、感染を未然に防ぐことができます。しかし、疲れがたまったり、ストレスや病気などで免疫力が弱まると、膀胱内に侵入した細菌の繁殖を防ぐことができずに膀胱炎に発展してしまうと考えられています。

下半身を冷やさない、疲労やストレスを溜めないなど、日頃から体調管理を心掛けるようにしましょう。

夏に向けて「膀胱炎」が増える季節!予防の習慣を心がけて

意外と知らない予防方法がたくさんあったのでは?

なかでも、特に水分補給は大切なポイント。これから夏に向けて、汗により摂取した水分が排出されがちとなり「膀胱炎」が増える季節です。脱水症の予防も兼ねて、こまめな水分摂取と、たくさんトイレに行く事を心がけていきましょう!

野宮 明(のみや あきら)先生

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国立国際医療研究センター病院 泌尿器科 医師

2002年京都府立医科大学医学部卒業後、三井記念病院泌尿器科医長、東京大学医学部附属病院泌尿器科助教などを経て、現職。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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