メニュー

2020.04.13

そもそも歩きは健康に良いの?歩行=健康のメカニズム

kencom公式:柔道整復師・中村雅貴

記事画像

健康や美容などに嬉しい効果があるとされ、国からも推奨されている運動が"歩くこと"。今や日本国内でも4000万人近い愛好家がいると言われています(※)。
ですが、「なぜ歩くことが健康につながるのか」をはっきりと理解されている方は少ないかもしれません。
そこで今回は歩きのプロフェッショナルとして活躍中の柔道整復師・中村雅貴先生に解説いただきました。

歩きで健康になる理由とともに、まずは歩く前の基本である姿勢の正し方について学んでいきましょう!

「歩き」が健康になる理由

まず前提として知っておいて欲しいこととして、我々は普通に生活するだけでは運動不足であるということがあります。
移動手段として交通網が発展し、ビルの中の移動もエレベーターやエスカレーターを使うのが当たり前になっている今という時代は、昔に比べてはるかに運動量が減っています。
結果として、ロコモやフレイルなどに代表される身体の虚弱化が進み、血管の老化や心肺機能の低下、ひいては認知機能の低下などを招いています。
これらの最も単純な解決方法は、ズバリ「運動量を増やすこと」と言えるでしょう。

ですが、いきなり筋トレやスポーツを始めるのは難しいもの。下手をすると怪我をして余計に健康リスクを高めてしまうことがあります。そこで取り入れやすい運動として注目されてきたのが歩くことなのです。
歩くことは、ざっくり言っても下記のような効果が見込めます。

高い運動効果

歩きは多くの人にとって普段から行っている動作になります。だからこそ、特に意識せずとも始められる気軽さがあると言えるでしょう。歩いている最中は、ランニングなどと違って片足が常に地面に着地しているので、関節や筋肉への負担も軽いので怪我をするデメリットも低く抑えられます。

加えて、歩行スピードをコントロールすることで、ジョギングに近い強度調節にまで高められるため、脂肪燃焼効果や筋力トレーニング効果を期待することができるのです。続けていけばしっかりとした筋肉がつき、身体が軽く感じることもあるでしょう。普段座っていることが多い人には、血流改善効果も望めるため、肩こりや腰痛予防にもつながります。

ダイエット・ボディメンテナンス効果

運動効果の延長として、ダイエット効果も期待できます。これは実際に体重を落とすという意味だけでなく、身体のバランスを整えたりする効果も含みます。

歩きは一見下半身だけの運動に見えますが、実は身体全体を連動させる全身運動。正しいフォームで歩くことで主要な筋肉を刺激して、足・お尻はもちろん、腰回りや二の腕、背中などに引き締められます。
また、足腰には全身の筋肉のうち約3分の2の筋肉が集まっています。ここを大いに動かすことでカロリー消費量を効率的に高めることができるのです。

将来の寝たきりリスクを低減

最近の研究では、日頃から運動をしていないと10年間ごとに約5〜10%ずつ体力が落ちていくという研究結果があります。下記のグラフをご覧ください。

Kalache and Kickbusch I.A global strategy for healthy aging, World Health, 1997, 50(4):4-5をもとに作成

Kalache and Kickbusch I.A global strategy for healthy aging, World Health, 1997, 50(4):4-5をもとに作成

20代の頃の体力を100%とした時に、体力が30%以下に低下してしまうとなると自立した生活ができなくなり、要介護状態に陥るとされています。
この体力の減少を防ぐためには定期的な運動が効果的。そこに最適なのが、日常的に行える歩きなのです。

これは30代や40代以降、体力の減りを体感するようになってからでも効果があります。

今すぐ歩く!……の前に姿勢から整えよう

歩くことがなぜ健康に直結するのかを理解してくると、すぐに歩きたくなりませんか?
ですが、いきなり歩き始める前に運動効果を高めるちょっとしたエクササイズに取り組んでみましょう。

実は、ここまでご紹介した歩くことによる健康効果は、一般的に少しきつめの速歩きで得られると言われています。
速歩きは隣の人とギリギリ会話できるレベルくらい心肺に負荷を与えて行うのですが、実際にやってみると意外なほどきつく感じられるはず。結果として挫折してしまっては非常に勿体無い話です。
そこで、普段の歩き自体の効果を高める方法として私がまず勧めているのが、姿勢を整えることです。
正しく立ち、正しく歩けるようになると、前述の通り全身の筋肉が連動して動きやすくなります。普段特に意識せずに歩いている方でしたら、確実に運動効果を高めることにつながります。
それでは早速、立ち方のエクササイズをやってみましょう。

正しい立ち位置とは

このエクササイズで一番意識して欲しいのが、骨と骨とのつながりです。かかとに体重を乗せ、まっすぐに骨をつないで頭の先まで持っていくことを目指します。別の言い方でいうと、足首が垂直に立つようにする。

こういうと難しそうですが、まずは、足首だけに集中することで、徐々に感じをつかめていきます。
1点注意点としてあるのがかかとの位置です。
かかとに体重を乗せると言われると、ついかかとの尖っている部分をイメージしやすいですが、そこでは重心が身体の中心にきません。
実際にはかかとの手前、凹んだ部分に乗るようにしましょう。(上図)そうすることで脛の骨とかかとの骨が垂直に交わる位置に力がかかるようになります。

立ち方エクササイズ

記事画像

①足刀部(脚の外側の部分)が腰幅になる程度に開いて立つ。

記事画像

②後方へ体重をかけていき、倒れそうなところで両足指(主に小指側)に力を入れて踏ん張る。

記事画像

③足指の力を抜きながら身体を元に戻していく。その際に親指と小指が地面から離れないように注意。体重がかかっている場所が、かかとのやや内側ならOK。足裏後方やや外側。

しっかり歩くためにしっかり立とう

多くの方は、このエクササイズを行うと、親指と小指を端にしたアーチの形に自然となっているのを感じるかもしれません。

記事画像

実は足のアーチというと土踏まずの部分ばかり注目されますが、足の指のアーチがあってこそ土踏まずのアーチも生まれてきます。
このアーチをしっかり作れると、姿勢も自然と整ってきますよ。
最終的には膝や腰、骨盤の位置なども整えた方がいいですが、まず初心者なら足のつき方から整えることが大事です。ここから始めてみましょう。

NEXT→実際に歩く際の注意点と、歩くエクササイズについてはこちらから

参考文献

監修者プロフィール

記事画像

■中村雅貴(なかむら・まさたか)
柔道整復師。柔道整復師の父を持ち、自身も柔道整復師としてこれまで述べ5万人の身体を施術、身体づくりサポート。整骨院で三年間、整形外科で三年間勤め、整骨院では基礎的な身体のしくみや、リラクゼーション、テーピングの仕方を学び整形外科ではより詳しく整形外科的疾患のリハビリ方法や骨折の後療法を学ぶ。これまでの医療現場の経験を活かし、独自に「VCL/JAM」メゾットを考案。現在大手ジムでのコンサルや、スポーツトレーナーとのコラボレーションによるイベント開催、タレントによる体操本の監修等、幅広く活躍中。

この記事に関連するキーワード