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2020.03.18

コロナ治療薬「ぜんそく薬」に期待が高まる根拠|感染症学会理事長「増殖抑える感触あり」

東洋経済オンライン

日本感染症学会理事長の舘田一博・東邦大学教授は「日本は持ちこたえている状況だ」と語る(記者撮影)

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日本感染症学会理事長の舘田一博・東邦大学教授は「日本は持ちこたえている状況だ」と語る(記者撮影)

「爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ちこたえている」

3月9日、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」が発表した見解は日本の状況をそう表現した。一方で、感染が急速に拡大し緊急事態宣言を出された北海道の対策への評価は3月19日頃にまでずれ込むことになった。

専門家会議のメンバーで、日本感染症学会理事長の舘田一博・東邦大学教授に、見解のポイント、そして開発が進む治療薬の可能性について聞いた(インタビューは3月11日に実施)。

持ちこたえているが、引き続き警戒

――3月9日に専門家会議が見解を発表しました。今回の発表のポイントは何ですか?

「これからの1~2週間が瀬戸際だ」という見解を専門家会議が出したのは2月24日。それからちょうど2週間が経ち、これまでの施策の成否を判断する時期に来ていた。だが、今後さらに拡大が続きそうなのかどうかは、まだよく見えていない。もう少しの期間、様子を見ることになった。

日本はイタリアやイラン、韓国のように急激に死亡者数が増えているわけではなく、なんとか持ちこたえている状況だ。ただ注意しなければいけないのは、水面下で見えにくいクラスター(感染者集団)が出てきているんじゃないかということ。それがいつか爆発して感染者が急増してしまう可能性もある。引き続き警戒は続けていかなければいけない。

――見えにくいクラスターとは?

若者は感染をしても症状が出にくいことがわかっている。感染して調子がやや悪くても「きっと風邪だろう」くらいに思って元気に遊び回ってしまい、いろいろなところで感染を広げるリスクがある。北海道では、軽症にもかかわらず感染が見つかった人たちがいた。その人たちの動きをたどっていくと若い人たちのクラスターがあった。そういった人たちが、見えにくいクラスターとして周囲に感染を広げる1つの力になっている。

規模については専門家の中でも意見が割れるところだが、実際にはわかっている感染者の10倍かそれ以上の感染者がいてもおかしくない。感染が広がっている札幌だけではなく東京だって同じことが起きているはずだ。

一方で、見えにくいクラスターをうまくコントロールできればメリットは多い。例えば「集団免疫効果」だ。感染から回復して免疫を持った人が増えれば、新しく発症した人の周囲には免疫を持った人が増えることになる。すると、その新しい発症者からほかの人へのさらなる感染拡大をある程度は阻止できる。感染症との戦いとは、人類がこの効果を獲得していく歴史でもある。

――3月19日をメドに、北海道での対策の効果を評価するとしています。

北海道は思い切って緊急事態宣言を出した。北海道の状況がその後どうなったのかを分析するのは、今後の日本全体がどうなっていくのかを考えるうえで重要だ。

――どういった評価内容になりそうですか?

3つのポイントがある。1つは感染者数の推移だ。新規感染者と死者数がどう推移しているか。もう1つは、1人の人が何人に感染を広げたかの推計数値。これが1人を下回れば収束に向かっていることになる。

3つめは、クラスターで追いかけられない感染がどのくらい起きているか。イタリアやイラン、韓国では感染が追いかけられなくなっている。そうなってしまえば、人の接触を止めるために大規模な外出自粛を打ち出すしかなくなる。それは避けなければいけない。

満員電車の感染リスクはさほど高くない

――イベントの自粛ムードが広まっていますが、いつまで、どのようなイベントをどこまで控えればいいのか基準がなく混乱も起きています。

新型コロナウイルスとの戦いは、インフルエンザと違って季節で終わるものではないことは、専門家の間では一致している見解だ。半年なり1年なり続く可能性もある。

舘田一博(たてだ・かずひろ)/1985年長崎大学医学部卒業。1995年東邦大学医学部微生物学教室講師。1999年にスイスのジュネーブ大学、2000年にアメリカのミシガン大学呼吸器内科に留学。2011年から東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授。日本感染症学会理事長(記者撮影)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/337660?page=2

舘田一博(たてだ・かずひろ)/1985年長崎大学医学部卒業。1995年東邦大学医学部微生物学教室講師。1999年にスイスのジュネーブ大学、2000年にアメリカのミシガン大学呼吸器内科に留学。2011年から東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授。日本感染症学会理事長(記者撮影)

専門家会議では、感染リスクが高い条件として3つの条件を出した。①閉鎖的で換気が悪い場所。②たくさんの人が密集した形で集まる場所。③近い距離で話す場所、だ。(集団感染が実際に起きた)ライブハウスや、屋形船の中でのカラオケはやはり危ない。満員電車は確かに密集して換気もよくないかもしれないが普通みんな喋らない。感染リスクはさほど高くない。

注目が集まっているのは東京オリンピックの開催だ。感染が完全に収束していなくても、やりようによっては開催できるはずだ。声を出したり叫んだりして応援するのはもちろんリスク。だから声を出さないで拍手の応援に限るとか。静かな応援に挑戦してもいい。

――理事長を務めている日本感染症学会では、新型コロナウイルス感染症の症例が日々報告されています。可能性のある治療薬はありますか?

期待しているのは、ぜんそく薬の「オルベスコ」だ(編集部注:帝人ファーマが販売)。試験管レベルではあるものの、ウイルスの増殖を抑える効果がある薬としてオルベスコも候補に挙がってきた。

ぜんそく薬「オルベスコ」(写真:帝人ファーマ)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/337660?page=3

ぜんそく薬「オルベスコ」(写真:帝人ファーマ)

学会に上がってきているオルベスコの症例はまだ3症例。症例数が少ないため何とも言うことはできないが、患者の状態や投与条件などのデータ、投与してからの反応を見て専門家は“感じる”ことができる。1例でも3例でも、「これはもしかしたらいい薬かもしれない」という手応え、感触がわかる。

最大の特長は副作用が少ないこと

――これまでは、抗インフルエンザ薬や抗HIV薬などの3薬剤が候補に挙がっていました。これらの薬とオルベスコは何が違うのでしょうか?


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最大の特長は、候補の中で副作用が最も少ないことだ。例えば抗HIV薬の「カレトラ」は吐き気が出ることが知られているし、抗インフルエンザ薬の「アビガン」は、胎児への催奇形性があるため妊婦には使用できない。一方、オルベスコはぜんそく薬として臨床で広く使われてきた経験がある。かなり可能性の高い薬の1つだ。

学会ではこれからオルベスコの観察研究を始める予定だ。投与群と非投与群に分けないので一般的な臨床試験よりも信頼性は劣るものの、現在進行形で拡大が続く段階では、効果があった症例を積み上げることが大事だ。

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石阪 友貴:東洋経済 記者

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