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2020.03.11

新型コロナウイルス、病気の特徴と今後の感染拡大予想とは?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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今、世界中の脅威となっている新型コロナウイルス。
感染者数や死者数に焦点が当たるととても怖い病気のように思えますが、実際のところどのような特徴がある感染症なのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA誌に2020年2月24日ウェブ掲載された、中国CDCによる2月11日時点までの国内全症例、72314例をまとめて解析した解説記事です。

これは2月28日付でWHOの報告書が出ていて、そちらは少し例数は増えているのですが、基本的にはほぼ今回と同様のデータが報告されています。
つまり、WHOの報告書の、こちらは露払い的な、ダイジェスト的な内容のものです。

▼石原先生のブログはこちら

新型コロナウイルス感染症の特徴とは?

新型コロナウイルス感染者の8割が軽症だが、重篤事例の約半数は死亡している

その臨床的特徴ですが、まずこちらをご覧下さい。

全例の臨床的特徴のまとめです。
診断事例の中には遺伝子検査では確認されていないものもあり、遺伝子検査が陽性で症状のない無症候性感染の事例は、全体の1%程度です。
これは無症候性の感染が、それほど多くはないことを期待はさせますが、無症候の感染者が全例検査されている、という訳では勿論ないので、慎重に判断する必要があります。

年齢分布は10歳未満と10から19歳は、それぞれ1%と明確に少なく、30から79歳が87%を占めています。

病気の重症度でみると、軽症の事例が81%、肺炎による呼吸苦などが見られる重症事例が14%、そして呼吸不全やショック、多臓器不全などを来した、重篤事例が5%となっています。

よく言われる「8割が軽症」というのは、このデータが元になっています。

ここで致死率をみると、トータルでは2.3%、80歳以上の致死率は14.8%、70代の致死率は8.0%、そして重篤事例の致死率は49.0%となっています。

すでにピークは越え、今後は徐々に収束に向かう可能性も

次にこちらをご覧下さい。

これは活字が細かくて見づらいと思いますが、横軸が2019年12月8日から2020年2月11日までの時間経過を示し、棒グラフは患者数の推移です。
グレイの棒グラフは症状出現時点を示し、オレンジの棒グラフは診断の時点を示しています。

これを見ると患者数のピークは、症状出現時点では1月26日くらいにあり、今後は徐々に終息に向かうことが推測はされます。

これは今後に期待を持たせるデータですが、まだ慎重に推移を見守る必要はあります。

SARSより感染の広がりが早く、深刻

次にこちらをご覧下さい。

その発症はほぼ同時期に始まっていますが、SARSの場合患者数が5000例に達したのは、
最初の患者が出現しておよそ5ヶ月後ですが、今回のCOVID-19では最初の患者が出現してから2ヶ月で、患者数は7万人を超えているのです。
ほぼ同様の性質を示し、遺伝子にも高い相同性がありながら、この2つのウイルスの感染の広がりは、大きな違いがあることが分かります。

勿論今回の方が格段に感染の広がりが早く深刻なのです。

日本でも同じような検証が行われることを期待

これまでの断片的な情報からは、日本での事例も今回まとめられた臨床傾向と、ほぼ同じであるように思われますが、今後日本でも同様の検証が、まとめられることを期待したいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36