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2020.02.27

「臭いやすい汗」をかく人に欠けている訓練|あなたの汗はサラサラ、それともベトベト?

東洋経済オンライン

できれば汗はかきたくない、と言う人は多いと思いますが、汗をかくことがなぜ大切なのか解説していきます(写真:rainmaker/PIXTA)

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できれば汗はかきたくない、と言う人は多いと思いますが、汗をかくことがなぜ大切なのか解説していきます(写真:rainmaker/PIXTA)

少しずつ暖かくなってきて、厚着をしたり、ちょっと走ったりすると汗ばむ瞬間が増えてきました。そんなときなんとなく汗が臭う、と感じるときはありませんか? それはひょっとしたら「ちゃんと汗をかく訓練」ができていないからかもしれません。『ぜんぶ毛包(もうほう)のせい。 薄毛・AGA ニキビ ヒゲ・体毛 ニオイ 汗』著者で皮膚科医の花房火月氏が解説します。

散歩している犬を見ると、舌を出して「ハァハァ」と呼吸をしているのがわかります。犬のエクリン汗腺があるのは足の裏くらいなので、発汗によって体温調節ができないんですね。そのため、ハァハァと呼吸するパンディングによって舌や口の中の水分を蒸発させることで体温を下げているのです。

犬のように少々の汗をかく動物はいますが、人間のように体温調節ができるほど発汗できる動物はあまりいないよう。探してみたら……いました! 馬です。馬は、人間と同じく全身に汗をかくことで体温調節をしています。全身が体毛で覆われていますが、汗が体毛にジャマされることなく表面に広がるので、蒸発するときに熱を奪う気化熱の作用がしっかり働くんです。

競馬ファンや乗馬経験者の中には、「汗の状態で馬のコンディションを見極める」なんていう通の人もいるかもしれませんね。

そんな馬の発汗機能は人間と異なる点も多くて、なかなかオモシロいんですよ。例えば、馬は全身に分布しているアポクリン汗腺から汗が出るとか、気温が高いことに対して発汗するのではなく、運動による体温上昇を抑えるために汗をかくとか。今回は、お馬さんの話ではないので、ここらへんでやめておきましょう。

汗が出るメカニズム

さて、私たち人間の汗の話。汗が出るメカニズムは、ちょっと複雑です。

ざっくりいうと、血管から血液の成分を受けとって濾過し、汗の成分だけを体外に放出する、ということになります。汗の原料は血液なんですね。

詳しく説明すると……。体温調節や精神的な影響などによって「汗を出せ」との命令が脳から出されると、自律神経の1つである交感神経の末端からアセチルコリンという神経伝達物質を分泌します。それが汗腺の受容体にくっつくと、血液内の血漿(けっしょう:赤血球などを取り除いた成分)から汗のもとをつくりだします。

ここから汗腺の導管部を通る過程で、ミネラルなどを再吸収(濾過)しながら皮膚の表面へたどり着き、最終的に汗として放出されるのです。

ここで問題となるのが再吸収する機能。分泌部でつくられた汗のもとを、再吸収が不十分なままジャンジャン出してしまうと、体に必要なミネラル(塩分)が大量に出ていってしまいます。

ふだんから汗をよくかいていて汗腺が鍛えられている人は、ミネラルを再吸収する機能が十分に働くので、水分の多いサラリとした汗をかきます。余分な成分が少ないので、蒸発しやすく、体温調節もスムーズ。弱酸性なので常在菌の繁殖も抑えられ、ニオイもそんなに発生しません。

ところが、汗腺を鍛えていない人は、ミネラルがそのまま汗とともに出てしまうので、ミネラルの濃度が濃くて、ベタベタした汗をかくことに。そうすると、不快なだけでなく、体に必要なミネラルが奪われてしまうので、慢性疲労や熱中症の原因になります。

また、ミネラルが多い汗は蒸発しにくいので、体温調節がうまくできない、という事態を招くことも。さらに、アンモニアなどの成分を含むので、皮膚表面の雑菌の繁殖を促してニオイが発生しやすくなります。

黒いTシャツを着ているときに汗をビッショリかくと、その汗が乾いたときにうっすら白いシミが広がっていることがありますよね。あれは、汗に含まれるミネラル(塩分)。塩分濃度の濃い汗をかいているといえるでしょう。

サラリとした汗をかくには

あなたの汗は、サラリとしていますか? それともベタベタ?

体温調節ができてニオイも発生しにくいサラリとした汗をかくには、日頃から汗腺を鍛えておかなければなりません。それには、運動などをして「汗をかく」習慣をつくることが大切。汗をかかないようにするよりも、適度に汗をかくほうが、健康的で快適な毎日を送れるのです。

自慢じゃないけど、私はこう見えて暑さに強い人間です。

もう、ホントに強い! 40度の炎天下で散歩をしていても、ぜんぜん平気。まぁ、ちょっと苦しいけど、でも、普通の人よりはるかに平気。これはどうしてだろう?と自分なりに考えてみたところ、育った環境によるものではないか、と思い至ったのです。

小さい頃のわが家にはエアコンがなく、暑苦しい夏の夜でもエアコンなしで寝ていたんですね。だから、私の汗腺が鍛えられて、汗による体温調節がカンペキなんだ! だから、暑さに強くなったんだ!と。といっても、科学的根拠はありません……。

発汗の機能を高めたり、さらりとした汗をかくには、ふだんから汗腺を鍛えていることが重要です。もちろん、エアコンのない部屋でムリに我慢するのは健康的ではありません。適度な運動などによって汗をかく、ということです。でも、そういう日常生活での努力のレベルを超えて、体温調節などの生理的反応の範囲も超えて、本当に治療が必要な人もいます。

●多汗症

汗に関する病気で代表的なのが「多汗症」。文字どおり、汗が極端に多い症状です。

重症例では、学校で試験を受けているときに、手のひらの汗で試験用紙が破れてしまって記入できないという人。また、足の裏の汗のせいで、靴の中がビショビショに濡れてしまうという人。ワキの下の汗があまりに多く出て困るという人もいます。

このように、特定の部位に汗が増える場合を「局所多汗症」と言います。症状がよく見られる部位は、手のひら、足の裏、ワキの下、頭部。発症する年齢は平均25歳で、12歳以下は少なく、高齢者も少ないとされています。

これに対して、全身の汗が増える「全身性多汗症」があります。

どちらの原因も、ほかの病気や薬剤の影響で発症する続発性と、原因がわからない原発性に分けられます。続発性多汗症の原因としては、文末の表に挙げた病気などが隠れている可能性もあります。気になる人は「ただの汗っかき」として片づけず、病院へ行って医師に相談するといいでしょう。

汗が出ない・少ないと体温調節がうまくできず危険

●無汗症

一方、汗が出ない、あるいは極端に汗が少ない状態を「無汗症」と言います。


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通常だと、高温環境や運動などによって発汗するものですが、そういうシチュエーションでも発汗しない、あるいは発汗が少ないのです。完全に汗が出ないケースは、非常にまれだといっていいでしょう。

でも、汗の量が少ない人はけっこう多く、それによる疾患として最も有名なのがアトピー性皮膚炎。皮膚に炎症があるから汗腺が閉塞して汗が出にくいのか、あるいは、汗が少ないから肌が乾燥してアトピーを発症しているのか、どちらが先かは言いきれないんです。実際のところ、どちらもあるので。

汗が出ないケースも、あるいは汗が少ないケースも、体温調節が適切にできないので、熱中症になりやすく、非常にキケンです。病院へ行って受診することをおススメします。

■続発性多汗症の原因

全身性:薬剤性、薬物乱用、循環器疾患、呼吸不全、感染症、悪性腫瘍、内分泌・代謝疾患(甲状腺機能亢進症、低血糖、褐色細胞腫、末端肥大症、カルチノイド腫瘍)、神経学的疾患(パーキンソン病)
局所性:脳梗塞、末梢神経障害、中枢または末梢神経障害による無汗から起こる他部位での代償性発汗(脳梗塞、脊椎損傷、神経障害、Ross syndrome)、Frey症候群、gustatory sweating、エクリン母斑、不安障害、片側性局所性多汗(神経障害、腫瘍など)

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花房 火月:はなふさ皮膚科院長

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