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2020.03.07

誰にも聞けない「便」のコト。目指すはバナナ便?【便秘・前編】

kencom公式ライター:松本まや

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排便トラブルの中でもメジャーな「便秘」。何日も排便できないとついつい不安になってしまいますが、実は「すっきり快便」というイメージにとらわれすぎて、誤った対処をしてしまう人が多いと言います。

大腸・肛門機能の専門医である神山剛一医師に、簡単かつ客観的な排便の状態の判断方法や、誤解されがちな排便の知識を教えていただきました。

神山 剛一(かみやま・ごういち)先生

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医学博士。医療法人社団俊和会寺田病院外科・胃腸科・肛門科医師。同日暮里健診プラザ予防医学管理センター副センタ―長。1992年昭和大学医学部卒業。昭和大学講師、高野会くるめ病院排泄リハビリステーションセンターセンター長、亀田京橋クリニック診察部長などを経て現職。日本外科学会専門医。日本消化器外科学会、日本大腸肛門病学会、日本老年泌尿器科学会会員など。

そもそも便って何?

消化されなかった食物繊維や腸内の細菌などが固まったもの

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そもそもの話、何が「便」となっているのでしょうか。

食べ物は全てが便になるわけではなく、ほとんどがブドウ糖やアミノ酸といった栄養素となって、身体に吸収されていきます。吸収の工程で消化されなかった食物繊維や腸内の細菌が便となるのです。

資料提供:神山剛一先生

資料提供:神山剛一先生

口から体内に入った食べ物はまず胃や十二指腸で消化され、1日約9リットルの液体となって腸に届きます。栄養素を吸収する役割を果たす小腸で、約7リットルを吸収。残り2リットルのうち、大腸では水分が吸収されていき、最後に固形の便が残ります。この便が腸の最後の部分、「直腸」に溜まると便意をもよおし、排便されていきます。

「1日1回に便をすべき」は大きな誤解

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食事が体内を通って排便されるプロセスは、実は体質や食べた物、精神状態など様々な要因が関係していると考えられています。医学的にも詳しく解明されていない部分が多く、いわばブラックボックスです。

毎日1回すっきりと排便できることが理想と思ってしまいがちですが、実は複雑な要因が絡まった排便の周期や回数には、個人差があることが自然。十分な便が溜まった状態が排便の適切なタイミングで、溜まるまでにかかる時間や1回の量は人それぞれなのです。

しかし、「すっきりしない」「お腹が張っている」などの理由から、すぐに便秘トラブルであると思い込んでしまうことがあると言います。専門医にかかる患者の中には便秘の症状を訴えながら、検査をしてみると便がたまっていなかったり、腸の動きも正常だったりと、特に問題ない方が多いです。

そのため、便の状態を感覚ではなく「便の形状」で観察することが最も簡単な方法になります。

目指すべき理想の便って?

排便の頻度ではなく、便の状態を確認する

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ここで言う「形状」とは便の色のことでも、匂いや形のことでもありません。便が水っぽいのか、それとも乾いて固形になっているのか、だけが判断基準です。

まだ解明されていないことも多い排便の仕組みですが、はっきりと分かっていることは、便の形状と腸のトランジット(通過時間)は相関するということ。消化された食べ物は液状で腸に届き、小腸で栄養が、大腸で水分が吸収されます。

しかし、トランジットが短いと十分に水分が吸収されないままなので、水っぽい便になってしまいます。逆にゆっくりと通過していった場合、水分が吸収され続け、硬くてコロコロとした便ができます。このようにトランジットが高速なほど便は水っぽく、低速なほど硬く乾いてくるのです。

このトランジットと形状の関係を7段階で示したものが「ブリストルケール」です。

便の状態を知る指標「ブリストルケール」

資料提供:神山剛一先生

資料提供:神山剛一先生

ブリストルケールを判断する上で大切なルールが、「最後の便を観察すること」です。最初硬い便が出た後に、軟便になることってありますよね。この後半の便が実は、腸内にある本当の便の形状です。出始めが乾燥していても、柔らかい便が出る人は「トランジットが速い」と判断しましょう。

目指すべきは「バナナ便」

ブリストルケールのうち、最も理想的な形が4番目の「普通便」、別名バナナ便です。
ほどよく水分を含んでおり、排便の際には無理に踏ん張らなくてもするりと出せることが特徴です。

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自分の便を観察する上で大切なのが、毎日出なくても、量が少なくても気にしないこと。するするとバナナ便が出ていれば3,4日に1度だったとしても問題ありません。

色や形も気にしすぎないこと。真っ黒な便など明らかな異常がみられない限り、匂いや色の変化は食べたものの種類によるところが大きく、腸内環境をチェックする上であまり気にする必要はないのです。

便秘のイメージにとらわれすぎず、「するするバナナ便」であるか、ないか。それだけに着目して、自身の便を観察してみましょう。

便秘ってどんな状態?

便秘にも種類がある

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便秘は一般的に、腸の働きが悪いために腸の通過を要する「通過時間遅延型便秘」と、腸の最後にある直腸の力が弱く便をうまく排出できないことによる「排出困難型便秘」に大別されます。それぞれ少し詳しく見ていきましょう。

(1)通過時間遅延型便秘

「便秘」と聞いて一般にイメージするのはこの通過時間遅延型です。「弛緩型便秘」などと呼ばれることもあります。腸全体の機能低下などによって、便をなかなか排出することができない状態です。下剤は腸の通過を早める効果があるので、通過時間遅延型の便秘の場合、効果が期待できます。

(2)排出困難型便秘

便が直腸にたまると、正常な状態であれば、直腸がしぼむことで便が押し出されます。排出困難型便秘は、小腸や大腸の働きは正常であっても、直腸の収縮する力が弱かったり、直腸の動きと連動して肛門も閉じてしまったり、といった原因で直腸から便を押し出すことができない状態のことです。

便秘の特定には専門の検査が必要

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便秘の種類の診断は問診だけでは不十分で、直腸肛門機能を評価する内圧測定や排便造影といった検査を受ける必要があります。
内圧測定は、力んだときに直腸の圧力が上昇するか、逆に出口となる肛門は圧力を緩めることができているかを調べる検査。排便造影では、直腸に入れたバリウムの動きを観察します。
どちらの検査も受けられる医療機関は限られており、手軽な検査ではありません。そこで便の状態を調べるときにまず役立つのが、やはりブリストルケールによる判断と言えます。

それでは、実際の便秘はどのように改善していけばよいのでしょうか。後編では、専門医での治療の流れや、実際に日常生活で快便を目指すためのヒントを具体的にご紹介します。

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著者プロフィール

■松本まや(まつもと・まや)
フリージャーナリスト。2016年から共同通信社で記者として活躍。社会記事を中心に、地方の政治や経済を取材。2018年よりフリーに転身し、医療記事などを執筆中。

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