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2020.01.29

住宅購入時に見落としがち「離婚」の深刻リスク|年間20万組超が離婚、決して他人事ではない

東洋経済オンライン

住宅ローン返済中に離婚した場合のリスクとは?(写真:ilixe48/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/326275?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

住宅ローン返済中に離婚した場合のリスクとは?(写真:ilixe48/PIXTA)

人生は山あり谷あり。長い住宅ローン返済中はさまざまなリスクと隣り合わせですが、中でも深刻だと思うのは「離婚」です。


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共働き夫婦の増加に伴い、2人で力を合わせて収入合算(連帯保証・連帯債務)やペアローンの形で住宅ローンを借りるケースも増えていますが、これが大きなトラブルになる可能性も。

今や3組に1組が離婚するといわれ、2000年以降の離婚件数は20万組超で、決して他人事ではありません。

連帯保証の詳細は「本当は恐ろしい『収入合算』の住宅ローンの実態」、連帯債務の詳細は「『収入合算』で家を買うときの見落としポイント」を参考にして下さい。

今回は、離婚と住宅ローンについて掘り下げます。

最善は「売却」

離婚することになり、購入した家をどうするのか考えたとき、いちばんすっきりするのは家を売って整理してしまう方法です。

とはいえ、この方法を選べるご家庭は実際にはごくわずか。買ったときよりも高く売れるとは限らないからです。加えて、以前は頭金を2割用意する必要があったため住宅ローンで借りる額は低額に抑えられていましたが、現在はフルローンも可能となったことから大きなローン残債を抱えているケースが多いことも背景にあります。

例えば4000万円の家をフルローンで購入し、ローン残債が3500万円という状況では、2800万円で売れそうだとなっても、原則として700万円を現金で用意できなければ、借入先の金融機関(以下、銀行など)の抵当権の登記は外れません。

700万円の現金を用意したうえで家が売れたとしても、売却代金はローンの完済に充てられて手元に残らず、住む家を失うという状況になるのでは、無理して売っても意味がないと思う人も少なくありません。任意売却(売却後も住宅ローンが残ってしまうときに銀行の了解を得たうえで行う売却)の場合でも、住むところを失ったうえに残債務に対する返済がある状況は避けたいと考えるのもうなずけます。

そのため、多くのご家庭では、「ローン返済をそのまま続けて、離婚した一方がそのまま住み続ける」という道を選択します。けれども、これが泥沼の始まりです。

夫の単独名義の家に妻が住み続ける場合

「離婚して夫が家を出ていき、妻がそのまま住み続けたい」という希望はよく見聞きします。子どもがいて妻と暮らす場合はとくに、転校させたり住環境を変えさせたくないという親の思いもあります。

このケースで気になるのが、不動産の名義です。妻が頭金を入れていたりペアローンなどで住宅ローンを組んだりしていれば、共有名義にしているため、勝手に夫が売買することはできません。

対して、専業主婦世帯のほか、妻がパートなどで収入合算して住宅ローンを組み、妻の持ち分がない場合は、家は夫の単独名義になっているため、離婚後にいつ気が変わって売却されて家を追い出されるかわからない不安が妻には残ります。

そこで、財産分与によって夫の所有権の持ち分を妻が譲り受けたいと考える人も。けれども、ここで問題になるのが、銀行などと交わした住宅ローン契約書(金銭消費貸借契約)です。

この契約書には、ローン対象となる不動産の所有者名義を変更する場合は、事前に銀行などの承諾が必要である旨が明記されているのが通常です。しかし、夫単独名義の物件を妻に名義変更するというケースでは、この銀行などの承諾はまず得られないのです。

なぜなら、住宅ローンは、本人が所有し居住するための住居に対して融資されるものだからです。離婚のため住宅ローンを借りた本人(この例では夫)が家を出るとなると、本人が自分の暮らしを優先してローン返済を後回しにする危険性があると銀行などは警戒します。そのため、ローン完済前に、名義変更したい旨を申し出て銀行などの承諾を得ることは難しいです。

家の名義もローン返済を借りたのも夫であるのにもかかわらず、夫が住んでいなかったり、勝手に妻に名義変更した、という事実を銀行などがつかんだ場合は、契約違反をしたとしてローン残債の“一括返済”を迫られる危険性も。返せなければ自己破産一直線です(『住宅ローン「滞納後」にたどる恐ろしい道のり』参照)。

さて、これまで2人で力を合わせて買った家の住宅ローンを返済してきた夫婦の仲が壊れたとき、裏目に出るのはこの“2人で力を合わせて”の部分です。

共働き家庭が右肩上がりに増えてきて、収入合算(連帯保証・連帯債務)やペアローンにする夫婦も多くなってきました。これらで借りた住宅ローンは、返済に関し連帯責任を負う旨の契約に判を押しています。なんとこれが、離婚しても解除されないのです。

離婚後、悠々自適なシングルライフを満喫していたり、新しい家族と新しい暮らしにすっかり落ち着いているその最中に、元の配偶者との金銭トラブルに巻き込まれる……そんな想像にゾッとしませんか。

連帯保証に要注意

ペアローンや収入合算(連帯債務)で借りた場合は、連帯責任を負う認識をある程度持っているものですが、要注意なのは、収入合算(連帯保証)で借りた場合です。

夫の収入だけでは希望の物件に手が届かないため、妻のパートの分も収入合算する形で住宅ローンを組むことはよくあります。収入合算で借りるということは、夫の連帯保証人として、夫と同じだけの返済義務を負うということを意味しますが、「返済は基本的には夫がするから」という軽い気持ちで判を押す妻は少なくありません。

とはいえ、離婚後は夫自身の生活費に加えて、住んでいない家のローンを負担することは、結婚していたときよりも確実に夫の生活のゆとりを削ります。カードの借入れが増え、病気や減給、リストラなどをきっかけに、夫が返せなくなることはありがちです。となると、銀行などは妻に返済を求めてくる流れになっているのですが、このとき妻には「夫に請求してください」とあらがう権利はないのです。

実際問題として、銀行などから請求されても返済できず、最終的に競売や任意売却で住む家を失うケースが散見されています。収入合算(連帯保証)では家もローンも夫名義になっていて、気が変わった夫が単独で売買して妻が住む家を失うケースも。

離婚した後の財産分与などの話し合いの決着がつかない場合に切れるカードは、上記の例では夫が多く持っていると言えそうです。

さて、ここまで、住宅ローン返済を担っていた夫が家を出ていく例を見てきましたが、逆に、夫が住み続けるという場合はどうでしょうか。

返済が滞る可能性自体は低いと考えられます。しかし、もしものリストラや休職で住宅ローンの返済ができなくなったり自己破産すると、たとえ離婚していても、“連帯”関係にある妻はローン完済まで大きなリスクにさらされ続けることは同じです。

離婚前に「連帯保証人」はやめられる?

それでは、離婚前に連帯保証人でなくなる方法はないのでしょうか。結論から言えば、ローン返済の途中で連帯保証人をやめることは極めて難しいと言えます。

というのは、連帯保証人はあくまで銀行などとの契約のため、銀行などの同意がなければやめることはできないからです。

離婚しても、相手が死亡しても、連帯保証人としての返済の義務を免れることはできません。団体信用生命保険に入っていれば死亡時の返済義務を保険で転嫁することができますが、入っていなかった場合は連帯保証人としての義務が遺族に相続されます。したがって、保険で転嫁できない「離婚」が、連帯保証人となることの最大のリスクと言えます。

連帯保証人でなくなるための方法として思いつくのは、住宅ローンを全額完済するか、代わりの連帯保証人を連れてきて銀行などを説得する、あるいは、住宅ローン残債に見合う価値のあるほかの土地・建物などを担保に入れる形で銀行などと交渉する、といった方法ぐらいです。

この中でも現実的なのは住宅ローンを全額完済するという方法です。住宅ローンの残額がほとんど残っていない場合や、潤沢な資金を持っていて一括返済ができるといったケースのほかは、「住宅ローンの借り換え」をすることで全額完済するのがポピュラーです。

夫婦合算で借りたローン残債に対し、どちらか単独の収入で借り換え可能な状況であれば、もう片一方は連帯保証人になるリスクを回避できます。

例えば、以前より収入がアップしていれば、離婚前に借り換えを実行することで、一方が連帯保証人となるのを避けることが可能です。また、住宅購入時は夫の単独名義で借りたものの、離婚時に妻の収入が潤沢であれば、妻に住宅ローンを借り換えて、財産分与も合わせて名義を妻に移すこともありえます。

ただし、これもすべての人ができる方法とは言えません。1人の収入では希望の額を借りるのが難しいために収入合算にしたご家庭では、もともと当時の年収に見合わない額を借りたというケースが多く、少々の年収アップでは単独の収入での借り換え審査にはパスしないからです。

いったん“連帯”で借りた住宅ローンは、完済までは連帯責任を負い続けることになります。住宅購入時に「離婚」を想定している夫婦はほぼ皆無ですが、長い人生に考え方が変わることもあり、離婚件数は2000年以降は20万件を超える水準で推移しています。

住宅ローンで借りる額をできるだけ少なくし(単独名義にすることも含む)、繰り上げ返済を前提に早めの完済を目指すことが、多様なライフスタイルのあり方や離婚時の選択肢を増やす最善の策と考えます。

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竹下 さくら:ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士

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