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2020.01.23

冬の大敵「冷え」にサヨナラ!まずは原因を知ろう

kencom編集部

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冬になるとよく感じるのが「冷え」。なんとなく手足が冷たくなったり、仕事のパフォーマンスが落ちたりと様々な弊害を招きます。

では、「冷え」、ひいては「冷え症」とはどんなもので、どう対策すべきものなのでしょうか?
今回は神田BESLI CLINICのCOO(最高執行責任者)で医師の田中奏多先生に解説いただきました。

田中奏多(たなか・かなた)先生

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「働く人を支える」薬に依存しない心の医療を展開するBESLI CLINICを2014年協同創設。ハーバード大学TMSコース修了、マサチューセッツ大学MBAコース在学、コンサルタントの経験、産業医の視点から「生産性」を高めるヘルスケアを臨床で実践している。BESLI CLINICでは、和漢の漢方外来で腹診による処方相談も行っている。産業医と主治医両方の観点からビジネスマン、ビジネスウーマンのパフォーマンス発揮をサポートしている。

冷えとは何か?東洋医学からひもとく

「冷え」とは主観的な症状で判断されるもの

この「冷え」、実は西洋医学では病気として認識されていません。しかしながら東洋医学では、「冷え」や「冷え症」は治療の対象となる大きな要素であります。

昔から中国、日本で用いられてきた東洋医学の医学理論では、熱い、寒い、といった寒熱は重要な要素となります。寒熱とは、冷たいと感じているか、熱いと感じているかという主観的な間隔と客観的な判断を組み合わせて判断されます。

寒熱とは、冷たいと感じているか、熱いと感じているかという主観的な間隔と客観的な判断を組み合わせて判断されます。

冷え症は男性にも多い

ちなみに医療現場では「冷え症」はレセプト病名としては存在していますが、西洋医学の中では病気としては認識されていません。どちらかというと東洋医学での症状病名というのが現在の医療現場における「冷え症」の認識に近いかもしれません。
では、実際にどれくらいの方が冷えを感じているのかは諸説ありますが、一般的には女性の7割が冷えを訴えているというデータがあります。
また、長野県長谷村で行われた疫学調査では、腰や手足の冷えを感じている女性は、どの世代でも50%居るのに対し、男性は30歳代がやや多いものの、50歳代までは30%程度で推移しているというデータがあります。このデータの面白いところは、男性でも60歳以降になると加齢とともに冷えを感じる人が増加している点です。

出典:新井信ら(2010)日東医誌 kenpo Med,Vol.61 No.2 154-168の表を改編

出典:新井信ら(2010)日東医誌 kenpo Med,Vol.61 No.2 154-168の表を改編

ちなみに、私が普段診療をしている心療内科領域では、冷え症を感じている方が非常に多いと感じています。精神的に疲れたり、ストレスや過労、睡眠不足で心身が弱っていくと熱の生成ができなくなったり、ストレスで交感神経が優位になり血管が締まることで、身体のすみずみまで温かい血液が届かなくなり手足の冷えとなります。冷えに困っている方日々の心身、仕事のストレスが高い方が多いように感じます。

「冷え」と聞くと秋や冬などの季節のものと思いがちですが、特に都会では暑い夏でもクーラーで部屋がキンキンに冷やされていたり、おしゃれは我慢!と薄着で身体に冷えが入ったり、ストレスから心身が弱ることで生じる冷えなどもあり、「冷え症」に悩まれる方は一年を通していらっしゃいます。

冷えで感じる痛み・辛さの多くは自律神経の影響

冷えで局所が痛む、例えば昔怪我をした場所が痛む場合は自律神経が影響しているケースもあります。

人は冷えると交感神経優位になり、痛い部分の血流を低下させるため、その部位に発痛物質などが増加して痛みが増加します。
また、痛いことでさらに交感神経優位になるため、血流が低下してさらに冷えを感じやすくなるのです。

そのため、冷えと痛みの間に負の相関関係ができてしまい、冷えが痛みを、痛みが冷えを増強してしまいます。

冷え症のタイプ別分類と主な症状

冷え症には5つのタイプが存在する

一口に冷え症といっても、冷えを感じる部位の違いによって、原因と対処法は変わってきます。

冷え性は以下のような5つのタイプに分類できます。
・下半身型
・四肢末端型
・内臓型
・全身型
・局所型

それぞれの主な症状を解説していきます。

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・下半身型

下半身型の冷え症は、男女ともに最も多いタイプです。40代以降に多く、年齢が高くなるに従って増える傾向があります。頻尿や腰痛といった症状が合わせて出ることもあります。

水風呂で半身浴をしている感じ、というように腰から下が主に冷えて、上半身はあまり冷えません。

原因としては腰部の筋肉が凝り固まってしまっていることが考えられます。これは腰部の筋力不足や血管の圧迫によって温かい血流が上半身にたまり、熱がこもっている状態とされています。
これは座りすぎるとよく起きる状態。まさに現代を生きる我々が陥りやすい冷え症タイプです。

・四肢末端型

四肢末端型は、戦う神経、交感神経優位の冷え症です。ストレスやエネルギーの不足によって命の危機を感じた身体が、自己防衛のために交感神経を優位にし、血管を収縮させることで起きる冷え症。
結果的に身体の末端側の手足へ温かい血液が通りにくくなり、冷えを感じるようになります。

ダイエットなどで身体に必要な食事エネルギーが不足した場合にも起きることもあるので注意が必要です。

・内臓型

内蔵型の冷え症はリラックスの副交感神経優位な人が感じやすいのが特徴です。血管が拡張して血流は全身に広がります。結果として体表面に熱が逃げやすくなり、戻ってきた血液が冷えていることで、身体の中心の芯が冷えてしまいます。
このタイプの方は気温が低くても手が温かいことが多いです。

腹部の手術などお腹をあけて冷たい空気が芯を冷やしてしまった結果冷えを感じるようになる場合もあります。また、副交感神経優位な人は胃や腸の働きが高まり、食欲旺盛で太めの方が多いのも特徴です。運動不足で自律神経が乱れがちな方も感じやすいです。

・全身型

全身型の冷え症の方は、手足の末端はもちろん、身体の内側まで冷えている方。冷え症の中でも最も冷えた状態になっています。
健康な人と比べると、精神的・肉体的にエネルギー不足を感じることでしょう。

ただ、全身の代謝系の疾患、例えば甲状腺機能低下症の方などが全身型冷え症の症状となる場合もありますので注意が必要です。
また、全身型冷え症の場合、冷えを感じるのと同時に、調子の悪さや疲れやすさ、眠気などを感じるケースが多いです。

・局所型

局所型の冷え症は身体の一部分に冷えを感じるケース。
昔怪我を負った場所や、血管障害、神経障害などに起きやすいです。神経障害や循環障害などの原因によって治療法が異なってきます。

冷えの種類によって対策は変わってくる

一口に冷え症といっても原因や感じる位置によって対策は変わってきます。
冷えを感じているからと、むやみに厚着をしたり温めたりしても改善しない場合も出てきます。
次回はその対策について、種類ごとに紹介します。

参考文献

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