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2020.01.21

ブレインヘルスの最新事情/1日5分の「ぼんやりモード」で脳を元気に!【教えて、ドクター!】

ワコール ボディブック

---- マルチタスクで多忙すぎる毎日。にもかかわらず、ついついスマホでさらに情報を取り込んで、脳内はゴミ屋敷に...。そんな状態から抜け出して、脳とからだを健康に保つためには、何をすればよいのでしょうか? スマホとの健全なつきあい方を提案し、脳の休め方を指南している、脳神経外科医・奥村 歩先生に引き続き教えていただきます。

脳のメンテナンスのカギは "ぼんやり"にあった!

「スマホが脳の過労を引き起こしている」と指摘すると、「スマホは気晴らし」「脳トレになる」と言う方がいますが、まったく逆。スマホから入ってくる過剰な情報は、脳のメモ機能をフル回転させ、疲労をため込ませるだけです。脳の疲労をとるには、情報を遮断し、脳をちゃんと休ませてあげるしかありません。そのためのカギとなるのが、21世紀になって発見された脳の機能「デフォルト・モード・ネットワーク」です。わかりやすくいうと「ぼんやりしているときだけに稼働する、脳のメンテナンス機能」です。

これまで、人がぼんやりしているときは、脳も働いていないと考えられてきました。しかし実は、外界の刺激を遮断して、パソコンでたとえるならスタンバイモードになっているとき、脳の中では情報の整理整頓が行われ、心身のバランスを整える機能が働いていたのです。1日5分でいいので、「デフォルト・モード・ネットワーク」を稼働させることで、脳の中のゴミが整理され、気持ちがすっきりします。

「デフォルト・モード・ネットワーク」は、目が覚めている状態での機能です。寝ているときは稼働しません。しかも、刺激に弱いので、スマホなんてもってのほか。とにかく意識して、スマホから離れることが大切です。

電車に乗っているときに、ぼんやりと窓の外を見る。ランチの後、公園のベンチで、ぼんやりと空を眺める...。でも、いざぼんやりしようと思っても、「あれやらなきゃ、これやらなきゃ」と頭に次々と邪念が浮かんできてしまう、という人は、「デフォルト・モード・ネットワーク」を稼働させるための儀式をつくるといいでしょう。それには、無心でできる単純なリズム運動が適しています。雑巾をかける、風呂を洗うといった、ルーティンな家事や、目的のない散歩などは最適です。実際、かのビル・ゲイツは、毎晩30分皿洗いをして、頭の中を整理していたとか。「デフォルト・モード・ネットワーク」は、クリエイティブなアウトプットにもつながります。

使用時間を記録して スマホ依存度をチェック

脳が疲労しているにもかかわらず、人がさらにスマホを見てしまうのは、スマホが、脳の浅いところを刺激して、手っ取り早く快楽をくれるからです。お酒やギャンブルと一緒です。しかし、それは付け焼き刃。だからこそ依存になりやすいのです。暇さえあればスマホをいじっている、という人は、自分の1日のスマホの使用記録を3色ボールペンを使って記録してみることをおすすめします。何に何分費やしたかを記録して、最後に、それがどうしても必要なことであったなら青色を、必要なかったなと思ったなら赤色、どちらともない場合を黒で色分けしてみましょう。きっと、青は数十分で、赤は数時間もあるはずです。

スマホに振り回されて、雑用だけで一生を終わらせるなんて、もったいないと思いませんか? 忙しさに"我を忘れて"いる現代人は、1日5分でもぼんやりして"我に返る"ことが必要です。「デフォルト・モード・ネットワーク」が働いているとき、人は無意識のうちに、自分の過去を振り返ったり、現在の自分を見つめ直したり、哲学的な思考に没入していきます。そんなふうにときに"我に返る"ことが、創造的で、新しい発想にあふれた、幸せな人生につながっていくと思うのです。

ネットサーフィンのように、海の表面を滑っているだけでは、海の中の美しい景色に気づくことはできません。本当に必要なとき以外はスマホを遠ざけて、ぼんやりしながら、脳の深い部分を活性化してみましょう。脳がすっきり元気になって、気持ちもからだも整ってくるはずです。

----1日5分の"ぼんやり"で、脳の過労を改善できるとは! 情報に追い回されない、ゆったりとした時間を意識してつくることが、脳の健康、ひいては人生の充実につながるようです。

奥村 歩

医学博士。日本脳神経外科学会認定専門医。おくむらメモリークリニック院長。これまでに10万人以上の脳を診断。特に2008年に「もの忘れ外来」を開設して以降は、認知症やうつ病に関する診断も多く経験する。『その「もの忘れ」はスマホ認知症だった』(青春出版社)、『脳を休める技術』(カンゼン)、『「朝ドラ」を観なくなった人は、なぜ認知症になりやすいのか?』(幻冬舎)など著書多数。

取材・文/剣持亜弥
イラスト/吉岡ゆうこ

※この記事の内容について、株式会社ワコールは監修を行っておりません。
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