メニュー

2019.12.25

知らないと損!「妻が扶養に入る」時の重要知識|似て異なる2種類の「扶養」がある

東洋経済オンライン

間違えやすい「社会保険の扶養」の考え方と「税金」との違いを解説(写真:CORA/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/320786?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

間違えやすい「社会保険の扶養」の考え方と「税金」との違いを解説(写真:CORA/PIXTA)

新卒から7年勤めた会社を9月に退職したKさん(30歳女性)。退職後すぐに働く気はなく、ゆっくり過ごすつもりでいます。

しばらくは夫の扶養に入るつもりでいますが、Kさんは前職での月収が30万円ほどあり、年収がすでに330万近くありました。そのため、年内夫の扶養に入ることを諦めて、自分自身で国民健康保険、国民年金に加入していました。

先日、久しぶりに大学時代の友人に会った際、そんな話をしていたら「健康保険の扶養は、税金の扶養と違って退職後すぐ扶養に入れたはずだよ」と言われてしまいました。なんだかすごく損した気分になってしまったKさん、いったい何を間違えてしまったのでしょうか。

年末調整などで「扶養」という言葉を目や耳にすることが多いこの時期。「扶養」という言葉は同じでも、実は社会保険と税金ではその考え方がまったく異なります。

そこで今回は、よく間違われやすい「社会保険の扶養」の考え方、「税金」との違いをKさんの事例と交えて解説したいと思います。

1. 「扶養にできるタイミング」はそれぞれ異なる

健康保険の扶養になれるのは、原則として配偶者と3親等内の親族(血族、姻族)だけです。一方で、税法上の扶養は配偶者と6親等内の血族および3親等内の姻族になっているので、そもそも扶養になれる親族の範囲が異なっているのです。

ちなみに、健康保険の扶養は、法律上家族とならない内縁関係の妻等もその対象となっています。

次に、収入要件については、原則として被扶養者(扶養される人)の年間収入が130万円(月収約10万8000円)未満であって、被保険者の収入の2分の1未満であることが要件となっています。一方、税法上の扶養は社会保険より基準が低く、原則年間収入が103万円以下となっています。

ただし、ポイントになるのは、年収の考え方の違いです。健康保険の扶養の場合は、「退職等により扶養に入れる日から将来に向かって、年収がどのくらいになるのか」という考え方になります。つまり、1月から12月までの暦年で考えるわけではないということです。

一方、税法上の扶養は、必ず1~12月の暦年で考えるため、この点が社会保険上の扶養の考え方と決定的に異なります。

例えば、月収50万円の方が3月に退職され、すでに年間収入が150万円であったとしても、退職後働いておらず、無職無収入ということであれば、退職日以降、将来に向かって年間収入が130万円未満と判断され、原則として退職日の翌日から健康保険の扶養に入れるのです。

反対に、11月からパートで働き始め、月収15万円ほどで、その年の年収が30万円だけだったとしても、月収は10万8千円を超えており、将来に向かって年収180万円(15万×12カ月)の見込みが立つため、パートで働きだした11月時点で扶養から外さなければならない必要があるので、注意が必要です。

したがって、冒頭のKさんのケースも退職後に無職・無収入ということですので、健康保険の扶養については、前職での収入にかかわらず、原則として退職日の翌日から配偶者の扶養に入れたわけです。年収が130万円を超えている場合、その年は健康保険の扶養に加入できないと勘違いされている方が意外に多いので、損をしないためにもこの点は押さえておくとよいでしょう。

なお、「健康保険の扶養」と「国民年金第3号被保険者」の要件は原則同じになるので、国民年金についても保険料を自ら負担する第1号被保険者ではなく、保険料負担のない第3号被保険者になれたのです。

2. 収入に含める「モノ」の違いに注意

扶養における年収の考え方は前述のとおりですが、収入に含める「モノ」も違うので気をつけなければなりません。

健康保険の扶養では、税法上は非課税扱いとなる公的給付についても収入に含めて計算する必要があります。具体的には、

・雇用保険の失業給付(基本手当)
・健康保険の出産手当金
・傷病手当金
・厚生年金、国民年金の障害年金
・遺族年金
・労災保険の傷病補償給付
・障害補償給付
・遺族補償給付 等
よくあるのが、退職後ハローワークから失業給付を受けているケースです。失業給付は退職理由によってもらい方が異なりますが、自己都合退職だった場合、3カ月間の給付制限期間があります。この失業給付を受給するまでの3カ月間は、健康保険の扶養に入ることができますが、実際に失業給付の受給を開始した時点からは将来に向かって収入があると判断されます。

そのため、失業給付の金額が、扶養の範囲内である日額3612円(130万円÷360日)以上ある場合は、受給開始日以降、健康保険の扶養から外す必要があるわけです。

このように自己都合で退職後、失業給付を受給する場合は、健康保険の扶養にいったん入った後、受給開始と同時に扶養から外し、受給が終わったらまた扶養に入るといった、税法上の扶養にはない、煩雑な手続きが発生してしまうのです。

また、ここでも注意が必要なのは、健康保険の扶養は加入日を原則さかのぼらないということです。

健康保険の扶養は、健康保険組合等による認定を受けなければなりません。そのため、健康保険組合等に書類を届け出て、認定を受けた日から被扶養者となれます。したがって、届出が遅れたとしても、原則さかのぼって認定してくれないので、後の祭りになってしまいます。ちなみに、国民年金第3号被保険者については、健康保険の扶養と異なり事実確認ができればさかのぼって手続きをしてもらえます。

そのため、冒頭のKさんも今から扶養の手続きをすれば、健康保険は原則、さかのぼってもらえず届け出た日から被扶養者となってしまいますが、国民年金第3号被保険者については退職日の翌日までさかのぼってもらえるので、すでに納めた国民年金保険料分、つまり月額1万6410円(2019年度)×納付済み期間、が戻ってくることになります。

3. 扶養に加入しても社会保険料は変わらない

社会保険上の扶養(健康保険被扶養者、国民年金第3号被保険者)になると、扶養される方は保険料の負担がなくなります。そのため、配偶者等を扶養する方が、その分の保険料を負担されていると思っている方が多いのですが、実は扶養する方もその分の保険料を加算して負担しているわけではありません。まれに自分の保険料が高くなると勘違いして、親を扶養に入れない方もいたりするので、この点はぜひ押さえておいてください。

なお、社会保険料は標準報酬月額(通称:ひょうげつ)という仕組で計算されています。この「ひょうげつ」とは、社会保険の事務処理を簡略するために考えられた仕組みで、給与をおよそ1万円から6万円の幅で区分した等級であり、健康保険は139万円、厚生年金は62万円が上限になっています。

社会保険のあらゆる場面で使われる重要なキーワードで、自分の「ひょうげつ」がわかればいろいろな計算ができます(詳しくは「給与が減ったと思ったら『この表』を見よ!」をご覧ください)。

したがって、この「ひょうげつ」は給与の額だけで算出されるので、扶養の数によって変わることはありません。そのため、独身の被保険者と扶養家族が子どもや両親も含めて5人いる被保険者の場合であっても、給与の額が同じであればひょうげつは同じになるので、保険料は同額となり、扶養者の分だけ保険料が高くなることはないのです。

ちなみに、扶養されている方はご自身で国民健康保険に加入していたときと同様に原則給付を受けられ、国民年金第3号被保険者も第1号被保険者と同様の年金額を受けることができます。

社会保険と税金の「扶養」。同じ言葉でも異なる点がとても多いことがおわかりいただけましたでしょうか。生きていくうえで少しでも損をしないために、その点を頭の片隅に入れておくといいのではないでしょうか。

記事画像

武澤 健太郎:大槻経営労務管理事務所社員役員、特定社会保険労務士

【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します