メニュー

2019.12.20

血液1滴でがん判別!東芝が生んだ技術の全貌|2時間以内に99%の精度でがん検査が可能に

東洋経済オンライン

東芝が開発した画期的なマイクロRNAチップ(記者撮影)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/320662?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

東芝が開発した画期的なマイクロRNAチップ(記者撮影)

東芝が11月下旬に発表したのは、わずか1滴の血液から大腸がんなど13種類のがんを検出できる検査キット。2時間以内に99%の精度で初期の「ステージ0」(がん進行度:0からⅣまで5段階)からでも、がんにかかっているかどうかを判定できるのが特徴だ。

2020年から実証試験を開始し、数年内に人間ドックの血液検査などで実用化を目指す。2万円以下での検査費用に抑えたい考えで、幅広い利用を見込んでいる。

高精度かつ網羅的にがんを検出

東芝が注目したのが、細胞で作られて血液中に分泌されている「マイクロRNA」という物質。マイクロRNAは遺伝子やたんぱく質の働きに関わり、ヒトでは約2500種類ある。がん細胞が体内にある場合、マイクロRNAの一部の分泌量が増えることがわかっており、がん検診の診断マーカー(目印)として期待されている。

従来のがん検出技術は主に腫瘍マーカーやアミノインデックス、画像診断という方式が普及している。腫瘍マーカーやアミノインデックスでは採取した血液からがん検出が可能だが、網羅的な検出に未対応であったり、検査精度が低いなどの課題があった。

また、CT(コンピュータ断層撮影)やPET(陽電子放出断層撮影)などの画像診断も方式ごとに得意・不得意ながんがあるほか、検査費用が高額で時間もかかる。さらに妊婦にはCTやPETが使えないという問題もあった。

これらの課題を一手に解決したというのが東芝だ。開発を主導した東芝の橋本幸二・研究開発本部研究開発センターフロンティアリサーチラボラトリー研究主幹は、「簡便性、網羅性、精度のすべてを満たす技術はこれまでなかったが、東芝の技術では高精度かつ網羅的にがんを検出できる」と意気込む。

東芝の検査キットは、エックス線画像や内視鏡など目視で発見しにくい小さな腫瘍も見逃さない可能性がある。小さな腫瘍は初期のがんである「ステージ0」の可能性があるだけにその検出効果は大きそうだ。実際、日本人の死亡原因の1位はがんだが、ステージ0で発見できれば、高い生存率であることがわかっている。

また13種類のがん(乳がん、膵臓がん、卵巣がん、前立腺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、胆道がん、膀胱がん、肺がん、脳腫瘍、肉腫)を網羅的に検出できるため、がんごとの検診も不要になる。ただ、どの臓器のがんを患っているかの特定はできないため、確定するには画像診断などで確認する必要があるという。

東芝は、2014年から国立がん研究センターなどと血液中のマイクロRNAを用いたがん検査の研究を国のプロジェクトとして進めており、2018年度でこのプロジェクトはいったん終了したが、その後も研究を続けていた。開発したキットを使い、過去に採取されたがん患者の血液で精度を検証し、99%の精度で確認できたという。これをもとに今後は東京医科大学などと共同で実証試験を行う方針だ。

東芝は短時間で検出可能

東レなど他社もマイクロアレイでのがん検出技術を開発しているが、東芝の技術は競合他社よりも短時間で検出可能だ。血液採取後に血清化し、マイクロRNAを血清から抽出するのに30分、マイクロRNAに人工配列を付加するのに50分、最後にマイクロRNAチップを小型検査装置に入れて定量検出するのに40分で完了する。

電気的な方法でマイクロRNAを検出しており、他社の光学的な検出方法より機器も小型化しやすいという。橋本研究主幹は「東芝は電機メーカーなので、電機で蓄積した技術が幅広く活用できた」と語る。

東芝は不正会計などで窮地に陥ったことから黒字だった画像診断機器事業を2016年にキヤノンに売却する一方、2019年度からスタートした新たな中期経営計画では、マイクロRNAによるがん検診や重粒子線がん治療装置などの精密医療事業を、リチウムイオン二次電池、パワーエレクトロニクスに並ぶ新規成長分野と表明していた。

東芝が経営危機でもあえて残した精密医療。予防から検診、診断、治療までがん領域の各フェーズで要素技術を保有しており、将来の再生・細胞医療市場の世界的な拡大を虎視眈々と見据えている。

記事画像

冨岡 耕:東洋経済 記者

【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します