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2019.12.11

学校に「先生!」と電話をかける前にすべきこと|客観的事実を集め、解決につなげる

東洋経済オンライン

もし自分の子どもがいじめに遭っていた場合、親はどのように対応したらいいでしょうか?(写真:A_Team/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/313999?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

もし自分の子どもがいじめに遭っていた場合、親はどのように対応したらいいでしょうか?(写真:A_Team/PIXTA)

子どもを持つ親なら誰でも1度は「うちの子はいじめられていないか」「いじめに加担していないか」と気にしたことがあるのではないだろうか。小学校から中学校の生徒へのアンケートでは、いじめをしたことがあるという生徒は約9割にのぼっているという。

子ども同士のトラブルの中でも、大人が介入する必要がある“程度の重いいじめ”にわが子が遭ってしまったときに、親はどうするべきか。『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』を上梓した麹町中学校校長の工藤 勇一氏に対応策を聞いた。

いじめをしたことがある子どもは約9割

国立教育政策研究所が、いじめについて特定の数百人の児童を対象に小学4年生から中学3年生までの6年間を追跡調査した結果をご紹介します。

「6年間のうちでいじめたことがありますか?」という質問に対し、「ある」と答えた人が87%で全体の約9割。次に、「6年間のうちでいじめられたことがありますか?」という問いにも、約9割の88%が「ある」と回答しています。

いじめに加担していないし、いじめられてもいないという人は、全体の1割もいないだろうということです。

かつての文部科学省での「いじめ」の定義は、「自分より弱い者に対して一方的に」「断続的に」攻撃を加えた場合とされていました。いわゆる弱い者いじめです。

しかし、平成18年度からは『「いじめ」とは、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。」とする。』と、いじめの定義が広くなりました。そのため、現在は、何がいじめで何が単なるトラブルで済ませられるかの線引きが曖昧になっています。

また、同じ出来事でも、重く受け止めるか気にしないかは人それぞれです。

ですから、いじめについて考えるときは、「いじめかどうか」を特定することではなく、子ども同士のトラブルに対して、大人がどのように支援をするかが大切なのです。

子どもたちの生活の中では、どうしたってトラブルは発生します。そのときに、社会でよりよく生きていくためにも、子どもが自分の力で解決できる力を身に付けること、1人の力で足りなければ周りの力を借りながら解決できるようになることが求められます。

子ども同士のトラブルに対して、どう仲良くさせるかといった観点から問題解決を進めるのではなく、このトラブルを子どもたちの自律にどう結びつけるかが最上位目標だということを、誰もが心にとめておかなければなりません。

例えば、「1人だけ違うことをしていたのが気に入らなかった」というのであれば多様性について学ぶきっかけになるでしょうし、「ただふざけて遊んでいただけ」というのであれば、相手との距離感を考えるきっかけになるはずです。

ただ、1番の理想は子ども同士でトラブルを解決することですが、なかには自分の力で解決できないこともあります。

その一つひとつのトラブルに対して、見守ってあげていればいいのか、大人が関わったほうがいいのか、関係機関と連携したほうがいいのか、警察などを含めた学校外の組織が介入しなければならないのか……、大人はそれを見極めながら、上手に子どもたちの自律を支援していくべきです。

いじめは客観的事実で解決に導く

子ども同士のトラブルの中でも、大人が介入する必要があるレベル感のものについて深掘りしてみましょう(「いじめ」という言葉は前述のとおり定義が曖昧になっており使いづらいのですが、ここからは「程度の重いいじめ」という意味合いで使います)。

そもそも、いじめは発見されにくい構造になっています。

「いじめは絶対に許さない」といった言葉に象徴されるように、いじめは誰にとってもよくないことだということは、確実に認識されています。それゆえ、いじめは先生や親の見えないところで行われるのです。

「いじめられている側」から情報が表に出てこない理由についてもご紹介します。いじめられている子には、次のようなことが傾向としてあると言われています。

・いじめられていることを恥ずかしく思っている

・いじめられていると伝えて、親に心配をかけたくない

・いじめがひどくなることを恐れて言いたがらない

マスコミなどによくクローズアップされるのは3番目の理由ですが、子ども自身が周りに伝えたがらないからこそ、いじめは発見されにくいのです。

だからこそ、教員はアンテナを張って、生徒が隠したがる情報もキャッチしなくてはなりませんし、親御さんもお子さんの変化には敏感になり、ささいなサインも見過ごさないことが求められます。

では実際にいじめが発覚したとき、どのように対応していくのがいいのか、子どもからいじめられていると打ち明けられた場合を例に、対応の例を示してみたいと思います。

まず、お子さんに事実確認をします。このとき、「悪口を言われているような気がする」「無視されているような気がする」という漠然としたものの場合もあります。

しかし大人がしっかり事実関係を確認するところから第一歩が始まりますから、「いつ」「どこで」「誰に」「何をされたか」を明確に押さえていく必要があります。

もし「殴られた」などと言われれば、親であれば動揺すると思いますが、「どれくらい?」「どこを?」「何発?」と具体的にしていくことが大切です。聞くのはつらいでしょうが、この情報で対応が変わる場合もありますから、とにかく情報をクリアにしていきましょう。

情報をできる限り切り分ける

このような情報が得られなかった場合は、周りから聞いた情報をもとに判断するわけですが、学校に相談するときは、事実なのか、推測なのか、伝聞なのかの切り分けを行ってください。

このとき、子どもがうそをつかないで話せるような環境をつくってあげてください。1度うそをついてしまうと、子どもはそのうそを覆すことがなかなかできません。時にはそのうそをつくろうために、うそを重ねてしまうこともあります。このことを頭の中に入れておきましょう。

私は多くの子どもに関わってきましたから、「いじめを訴えた側が実はうそをついていた」ということもなくはありません。しかしやはり子どもから話を聞くときは、最悪のパターンを想定しておかなければならないと思います。

「お父さんお母さんは絶対に味方だし、先生にもわかってもらうから、安心して話してね。苦しんで学校に行くことなんてないし、1人で我慢しちゃだめだよ」と、伝えてあげることも、場合によっては必要でしょう。

本当にいじめられていて、なかには自分の命を絶とうと考えている場合もあるので、苦しんでまで学校に行く必要はないと伝えて、お子さんを安心させてあげてほしいのです。

なお、場合によっては、親がここまで調べる必要もありません。何かがありそうだと感じたら学校に伝えて、前述したことを学校側にやってもらうこともできます。

このとき、お子さんが話をしたくないと言う場合もあるかもしれませんが、話を聞かなければ事実をつかむことはできなくなってしまいます。お子さんの負担のない方法で、事実確認ができるようにしてあげてください。

次に、学校側にこの事態を伝えます。

適切な対応をしてくれる学校であれば、さまざまな配慮をしながら、いじめられた生徒、第三者、いじめた本人に聞き取りを進め、きちんと事実確認を行ってくれるでしょう。

ここまで来てやっと、どんないじめが行われたかが明るみに出てきます。いわば解決のためのスタート地点です。

もし行われたことが恐喝や暴力などの犯罪であれば、すぐに警察に介入してもらうことも必要でしょう。命に関わる問題であれば、なおさら速やかに大人が介入しなければなりません。

確実にいじめられた側の子どもを守ることが最優先ですし、積極的に大人が関わりながら、いじめた側を正してあげたいと私は思います。いじめられた側が泣き寝入りをしないですむような、解決を目指していかなければなりません。

遠慮なく学校や教育委員会と連絡を取ろう

こういった「いじめ」問題以外にも気になることがあり、学校側に意見を伝えたいと思うこともあるでしょう。

本来であれば、学校と保護者はそのような意見を交換し、対話できるような信頼関係を築くべきだと思いますが、難しいと感じている保護者の方も多いと思いますので、ここでは学校に保護者の意見を聞き入れてもらうコツをいくつかお伝えします。

① 伝えたいことを、事実、推測、伝聞のどれにあたるのか、可能な限り切り分けを行っておく

②信頼できる先生を探す(担任でなくてもOK)

③いなければ校長、副校長など管理職へアプローチする

④それでも対応してくれない場合は管轄の教育委員会へ連絡する

前述のとおり、まずは伝える情報の切り分けを行います。そして可能な範囲で、お子さんにも詳しく情報を聞いてみてください。

これは、確証がないのであれば相談してはいけない、ということではありません。学校側としては、事実確認をしておかなければ対応が進められないため、確実に学校に対応してもらうために必要なことだと思っていただければ、ありがたいです。

そして相談する人を探すわけですが、担任である必要はないので、安心して相談ができ、またしっかり対応をしてくれる先生を探してみてください。そういった先生がわからない場合は、迷わず校長や副校長に相談しましょう。校長、副校長に相談しても残念ながら事態が進展しない、または十分な対応をしてもらえないと感じた場合には、遠慮なく管轄の教育委員会(市区町村の教育委員会)へ連絡しましょう。


『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

もし管轄の教育委員会が対応してくれないときは、ご自分の住んでいる自治体の窓口(「市民の声」「区民の声」など)に連絡してみるのもいいでしょう。

校長に連絡するのは気が引ける、ましてや教育委員会へ連絡するのは……、と考える方もいらっしゃるかもしれませんね。問い合わせのせいで自分の子どもが不利になるのではないかと、不安になる方もいらっしゃるでしょう。もちろん、実際には不利になったりすることはありませんが、どうしても不安な場合は、匿名で電話をしてみてください。

その際のポイントは、要件の後に「○日にまたお電話しますので、結果について教えていただけますか?」と伝えておくことです。これで、個人が特定されることも、相談事が放置されることもありません。

保護者の方が、遠慮なく学校や教育委員会と連絡を取り合えるのが健全な関係性です。保護者と学校、教育委員会は、対立関係にあるのではなく、子どもの成長を一緒に支援していく関係のはずです。何かあった場合には各機関に相談し、信頼できる人をぜひ見つけてください。

記事画像

工藤 勇一:千代田区立麹町中学校校長

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