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2019.12.18

強い身体は風邪をひかない?運動と風邪予防の関係

kencom編集部

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『身体が弱っていると風邪をひきやすい』。
日頃の生活の中で、よく言われることではないでしょうか。

確かに熱が出ればフラフラとするし、食欲も落ちるし体力が低下していると実感することもあります。
それでは、体力をつければ風邪の予防になるのか?むしろ、風邪のひきはじめに軽く運動したほうがよいのか?

運動と風邪をテーマに、kencom監修医師である石原藤樹先生の意見を交えて紐解いていきます。

「運動」だけが風邪の予防につながるわけではない

運動習慣を組み込んだトータルの健康習慣が重要

【風邪予防 運動】で検索をしてみると多種多様な意見が出てきます。
その多くは身体の免疫機能に関連したエビデンスをもとに、運動をすることが身体の免疫機能を向上させ、ひいては風邪の予防につながるというものです。

しかし、医師の石原先生の意見としては、運動だけに注目するのは少し違和感があるといいます。

「運動習慣のある人とない人で、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりにくいという研究結果はあります。しかし、だからといって運動習慣だけに目を向けるのはどうでしょうか。運動習慣を続けている人は、健康習慣全般に意識が高い人が多い。そのため、運動だけが免疫力を高めるとは言い切れないと考えています。診療の現場で、ご家族でインフルエンザにかかっていて、筋トレしている家族だけがなんともない、なんてことはありません」(石原先生)

プロのアスリートですら風邪やインフルエンザにかかることもあるため、確かに身体を鍛えることが全てではなさそうです。
それでは運動をすることは健康にとって無意味なのでしょうか?

運動で身体能力を高めることは自身のプラスになる

高齢者の身体能力の低下は風邪の重症化につながる

運動習慣が直接的に予防につながるわけではないことがわかりました。しかし、運動で重要なのは、筋力を含めた身体能力の向上にあります。
風邪やインフルエンザが重症化しやすいのは、幼児・高齢者など、年齢や持病などにより身体能力が低い人に多く見られます。
例えば筋肉は20歳をピークに徐々に低下していき、70歳になるころには30%ほどが失われるといいます。その上で体重が増加しているとなると、生活全般を少ない筋肉で行うことになるので身体能力が落ちているのは不思議ではありません。(※1)

現在運動習慣のない人にとって、少しずつ活動量を増やして身体能力をアップすることは長い目でみると意義のあることだと言えるでしょう。

それでは、日頃からジムやランニングで身体を動かすのが好きな人は、風邪をひいたらじっとしているべきなのかを石原先生にお聞きします。

風邪をひいたら運動は絶対NGなのか

無理は禁物。体調を見て軽めの運動はOK

「自己の判断になりますが、日頃からトレーニングをしている人であれば自宅で多少のストレッチぐらいは問題ないと思います。理由は2、3日寝たきりで過ごすだけでも身体機能が落ちるからです。注意点としては外に出ないことです。ウィルス感染による風邪の場合は、人にうつすことがあるため人が集まるジムや街中でのランニングは控えましょう。高熱が出て歩くのも辛いという場合は、安静にしてください。快復してから少しずつ運動強度をあげるようにしましょう」(石原先生)

少し意外かもしれませんが、日頃から運動習慣を続けているような人であれば多少の運動は大丈夫のようです。
とはいえ無理は禁物です。ハードな筋トレや何十キロも走るマラソンは控えて、自宅でのエクササイズぐらいに留めておきましょう。

フルマラソンや筋トレで追い込むと風邪をひきやすくなる?

身体の酷使は風邪を引き起こすかもしれない

身体を酷使するフルマラソンや筋力トレーニングをしている人だと、「身体を使いすぎることで免疫力が落ちて風邪をひきやすくなる」という噂を聞いたり、実体験として話す人がいます。

「それだけ身体を酷使しているのであれば風邪をひきやすい状態と考えられますが、医学的なエビンデンスはありません。特定の栄養素を補給すべきという主張もありますが、すべての運動している人に当てはまるとは言えないと思います」(石原先生)

過度な運動は体力を大きく消耗するのは間違いありませんが、そのあとの体調管理はこれだという明確な解決法がありません。
独自の調整をしている方が多いため、体調に注意しつつ、調子が悪いと思ったら医師に相談してみましょう。

健康行動の継続が不調の予防につながる

運動習慣だけで風邪の予防を期待するのは難しいことがわかりました。
とはいえ、運動習慣を起点とした生活習慣の改善は、身体能力の向上につながり、結果的に風邪になりにくくなったり、風邪やインフルエンザの重症化の予防になったりと長い目で見るとメリットが多そうです。

「若い頃より風邪をひきやすくなったな」と感じられたら少し生活習慣を見直してみるといいかもしれませんね。

(文・kencom編集部)

参考文献

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