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2019.11.17

がん情報のネット検索で絶対に外せない6原則|信頼できる発信元選び、つけこまれないために

東洋経済オンライン

時間とお金を無駄にしないための心得を伝授します(写真:shimi/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/313786?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

時間とお金を無駄にしないための心得を伝授します(写真:shimi/PIXTA)

家族など身近な人ががんにかかったという経験がある人は多いはずだ。そもそも遺伝子の変化が積み重なることで発症するがんは、高齢になればなるほどかかりやすい病気で、世界トップの長寿・高齢社会である日本では今後もがん患者が増加することは避けられない。

現に日本ではがんは1981年以降、死因トップである。そして2014年時点において、全国でがんにかかった人の統計や人口動態統計などから編み出した数学的モデルでは、生涯で日本人ががんにかかる確率は男性が62%、女性が47%と試算されている。ざっくり言えば「2人に1人」が生涯でがんにかかることになる。

がんの治療は進歩している

一方で、がんはいまだ完全制圧には至っていないが、ここ四半世紀で治療は進歩してきている。例えばよく知られている乳がんでは、四半世紀前ならば最初にがんが発生した乳房から周辺のほかの臓器にがんが転移してしまった状態だと診断から5年後までに生存している人は4人に1人程度だった。現在はこれが3人に1人まで改善している。

この数字を聞くと「それだけ?」と思う人もいるかもしれない。だが、これは非常にざっくりした数字でこの四半世紀の研究と治療の進歩で、乳がんの増殖を促す遺伝子やタンパク質が見つかり、ある種の乳がんでは5年後までに2人に1人が生存している時代にまでなっている。

治療の進歩でより劇的に変化したのが、がんの告知だ。一部の人は驚くかもしれないが、1990年代前半はがんと確定診断がついた患者本人へのがん告知率は医療機関によって差はあったものの全国的に見れば20%前後にすぎず、当時は専門医の間ですら「患者本人に告知すべきか否か」という議論が残っていた。この時期は家族のみががんという診断を知っていることが珍しくなかったのである。

それが2016年に国立がん研究センターが全国778施設を対象に行った「院内がん登録全国集計」での告知率は94%に達している。この約四半世紀での驚くべき変化は治療の進歩に加え、身体状況を決定づける病名について患者本人に伝えないのは人権上問題があるという意識が高まってきたことも背景にある。

とくに治癒が難しいがんであればあるほど、患者自身が今後どのように生きていきたいかは、家族ではなく患者自身が決定するべきだとの考えが当然となっている。

もっともがん治療が進展し、告知が当たり前になったとしても患者は告知を受けた瞬間には相当動揺するものだ。しかも、最近では告知直後から具体的な治療方針の決定までに1週間程度時間を要するケースもある。

これは肺がん、大腸がんを中心に個々の患者のがん細胞を検査し、その増殖の原因遺伝子を調べ、それに合わせた薬を選択する「個別化医療」が進展し、がんと確定してからこの検査の結果が出るまでにそのくらいの時間を要することがあるからだ。

この間、どうしても患者は自分のがんに関してより詳細な情報を知りたいと思うのは当然だろう。かつて治療方針については、主治医しか情報源がなかったが、今ではインターネットで誰でも情報を手に入れることができる。この結果、現在ではがん告知直後からインターネットを駆使して情報検索をする人が増えている。

だが、ご存じのようにインターネット情報は玉石混淆である。このときの検索の仕方次第では誤った情報に巻き込まれ、時間とお金を無駄にすることさえある。

拙著『二人に一人がガンになる ~知っておきたい正しい知識と最新治療~』でも解説しているが、まず、がんに関してインターネットで情報を検索する際、やるべきことを主に3つ提示しよう。

公的機関の情報は信頼できる

(1)国公立私立医学部・医科大学附属病院や国の研究機関のホームページへアクセス

がんに関して正確な情報がある代表格が国公立私立医学部・医科大学附属病院や国の研究機関のホームページ。まずは自分の居住地に最寄りのこうした医療機関・研究機関などのホームページ内で情報を検索する。もっともこれらホームページの記載情報は、量や記述内容のわかりやすさなどは医療機関・研究機関ごとに差がある。

その意味では万人にお勧めできるのが、国立がん研究センターが開設している「がん情報サービス」のページ。同ページでは肺がんや大腸がん、乳がんなどの医学的には固形がんと呼ばれる各臓器に発生するがんのほかに、白血病などの各種血液がん、肉腫など患者数の少ないがんまで広くカバーし、基礎知識、診断確定に必要な検査の種類やその詳細、現在の標準的な治療方法、療養に当たっての注意点などが網羅されている。

また、これら各種がんごとの解説は、患者向け冊子のPDFファイルも公開され、無料でダウンロードも可能である。

また、「がん情報サービス」ではがん患者が使える公的な制度、がん治療中の注意点などの情報も掲載されており、国内医療機関・研究機関などのホームページで最も情報量が充実している。

(2)各がんの診療ガイドラインを読む

現在、各種のがんの治療に関しては、専門医が集まった医学系学会で最新の研究に基づいて科学的に根拠が確かな治療法と治療方針を明示した「診療(治療)ガイドライン」を作成している。もし、新たな治療法が開発され、その科学的な信頼性が認定されたら、ガイドラインはその都度改訂される。つまり最新治療がまとまっているのがガイドラインである。

こうしたガイドラインは公益財団法人日本医療機能評価機構が運営するMindsガイドラインライブラリで公開されているもの、各学会のホームページのみの公開、インターネット上では公開せずに書籍として出版されているものに分かれる。

あくまで医療従事者向けなので初めて読むと難解だが、まさにインターネットがある現代では、わからない専門用語も検索してみれば該当する解説が見つかることがほとんど。

また、そうした専門用語は何度も繰り返し出てくるので、最初は面倒でも一度調べて理解してしまえば後半になるほど難解さは薄れてくる。ちなみに日本乳癌学会などのように患者向けにガイドラインを解説しているケースもある(「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2019年版」)。

(3)調べるときは「がん」「癌」の単語の両方を使う

メディアなどでは「がん」と表記することがほとんどだが、一般的には「肺がん」「乳がん」などの固形がんと言われるがんは医学用語では「癌」と表記するので、検索の際は「肺癌」「乳癌」のように「がん」を「癌」に置き換えた検索も必要。このほうがより適切な検索結果が表示される傾向がある。

「がん 治る」と検索してはいけない

逆にやってはいけないこともある。その代表例を3つ挙げよう。

① 「○○がん(癌)AND 治る(治癒)」の検索

インターネットで検索するときに最初にキーワード入れ、その後にスペースキーを押してほかのキーワードを入れることで2つのキーワードがともに含まれる「AND検索」ができるのは周知のこと。ただ、がんの情報を検索する際の「AND検索」で使用するのを避けたほうがいいキーワードがある。それはズバリ「治る」「治癒」。

がんになったら完全にがんが体内から消えてほしいと思うのは万人の願いだろう。だが、やや残酷な物言いだが、他臓器への転移が始まっている一般的にステージ4という進行度に分類されるがんの場合、一般の人が考える「治る=がんが消失する」が実現するのは現在最先端の治療を駆使しても極めてまれ、極端に言えば、ないと言っても過言ではない。

とりわけこのような状態の場合、例えば「乳がん AND 治る」で検索すると、科学的には効果が実証されていない治療やがん患者を対象としたビジネス色の強いページなど、はっきり言えば患者を食い物にするかのようなページが表示される確率がぐんと高まる。これはもっと早期のがんでもおおむね同様の傾向である。

②検索冒頭の「広告」のページにはアクセスしない

インターネットのキーワード検索ではおおむね検索結果の冒頭のページから読み始める人がほとんどだろう。だが、ご存じのようにほとんどの場合、冒頭には「広告」ページが表示される。

現在、グーグル、ヤフーの検索などで例えば「乳がん」と入れると、最初に「広告」の付記があるページが表示され、その下に前述の国立がん研究センターの「がん情報サービス」の乳がんのページが表示される。

がんに関する情報検索ではこうした「広告」ページは飛ばして、広告と表示されていないページからアクセスすることをお勧めする。「広告」に表示されるページは、ごく一部に患者団体などのページが表示されることもあるが、ほとんどの場合は特定のクリニックの宣伝などが多く、中立的ではない情報、もっと言えば科学的に効果が証明されていない治療法が表示されることが少なくない。

食事でがんが改善することはほぼない

③ がんに対する食事療法の情報は無視

一般にインターネット上でも一部書籍や雑誌でも特定の食品などを挙げて「○○でがんが治った」「○○でがんが消えた」というものは少なくない。これはがんにかかったときに患者自身や家族が手に届きそうな改善策が食事くらいしかないためだと思われる。


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だが、すでに発症したがんが、特定の食品を食べたり、食事全体の改善のみで消えたりするようなことは科学的に証明されておらず、ないと言い切っていいほどだ。現に前述の国立がん研究センターの「がん情報サービス」でも、体力の低下防止や治療薬の副作用で食事をとりにくい場合などでの対処法などの記載はあるものの、特定の食品についてがんに効果があるなどとは記載していない。がんに関して特定の食事療法を推奨するような情報は無視してほしい。

先ごろ著名人がブログなどに書いていた「血液クレンジング」が医学的根拠はないということで炎上したように、インターネット上にはかなり不確かな医療情報が跳梁跋扈しているのが現実だ。

そして中にはそうしたものを国家資格の医師免許を持つ医師自身が行っている嘆かわしいケースもある。だが、そうした不確かな医療に不幸にも遭遇してしまう確率は、前述の合計6つのポイントを守るだけでもかなり下げることができる。

同時に心得ておいてほしいのは、こと日本での医療に関しては、医療保険適用外の治療を受けることは症状改善の点でほぼ意味がないと言ってもいいくらいだということ。基本的にがん治療をはじめ、日本の医療ではレストランのコース料理のようにより高いお金を払ったからといって、よりよいものを得られることはないと肝に銘じておくべきだ。

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村上 和巳:ジャーナリスト

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