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2019.11.14

ミスを極度に恐れる人が「実は損している」理由|焦って保身に走るほうがかえってよくない

東洋経済オンライン

「そこから何を学ぶか」のほうがはるかに重要です(写真:Pangaea/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/314110?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

「そこから何を学ぶか」のほうがはるかに重要です(写真:Pangaea/PIXTA)

ミスや失敗はしないほうがいい――。そうはいっても、日々仕事をしている中では、やむを得ず起こってしまうものです。このようにビジネスにおけるリスクともいえるミスや失敗ですが、その対処によっては実は「評価を上げる」ための最短ルートになりえます。ミスや失敗から大きな成長をもたらす方法を、『ミスしても評価が高い人は、何をしているのか?』の著者・飯野謙次氏が解説します。

「失敗は成功のもと」

「ミスを恐れず、どんどんチャレンジしなさい」

「失敗を恐れて小粒になるのが、一番よくない」

仕事をしていると、よく、このように言われます。たしかに、会社で活躍している人たちは、皆、失敗を恐れず伸び伸びと仕事をし、しかも成果を出しているように見えます。

しかし、世間を見回してみるとどうでしょうか?

たった1回の失敗で、次へのチャンスを失ってしまった人。ミスが考課に響いてしまった人。ちょっとしたことなのに、何度も叱責してくる上司……。

どうも、「失敗を恐れるな」と言われる割に、いざ失敗した先には、明るくない未来が待ち受けているように見えます。

ですから、ビジネスで成功するために「とにかくあらゆる手段を講じて、ミスを徹底的に排除する」というのは、1つの有効な手段といえるでしょう。

出世が速い人ほど「ミスを愛する」3つの理由

しかし私は、「失敗した!」「しまった!」と思ったときこそが、ビジネスパーソンに最も大きな成長をもたらすチャンスであると考えています。それには、3つの理由があります。

1つ目の理由は、人が「もっとうまくやろう」「能力を向上させよう」と最も強烈に思うのが、「うまくいかないとき」だからです。

実際、ミスや失敗をしてしまったら、それを客観的に観察し、原因を分析して根本的な解決を図る必要があります。ミスや失敗に対してこのように向き合うのは、言うは易く行うは難し。ですが、このプロセスを経た先には、必ず、対応力や思考力、計画力、分析力などの向上が待っています。

例えば、私は最近、東京大学内の業務で、ラズベリーパイを使って有機溶媒ガスの濃度の多点測定を試みましたが、思い通りに動作せず、しかもラズベリーパイをショートさせてしまう……という失敗をしました。その原因は簡単にいえば、自身の「学習不足」に「計画不良」、さらには焦りと雑念による「注意不足」がありました。

こうして原因が明らかになれば、その対策をするのは難しくありません。私の場合は、ラズベリーパイと入出力ピンの扱いについて学び直し、全体の計画の見直し、そして各作業ステップごとに動作確認をすることで今回の失敗を乗り越えることができました。

こうして私は1つ失敗をしましたが、次回の同様の業務の際に留意すべき点として3つのポイントを押さえることができたわけです。

このような積み重ねこそが、私の業務遂行能力の向上であり、ひいてはビジネスパーソンとしての成長をもたらすことは、間違いありません。

ミスの先にこそ「自分にしかできない仕事」がある

2つ目の理由は、そもそも「新しいものを生み出す」「付加価値をつける」「仕事で成果を上げる」というのは、「これまでできなかったことができるようになる」過程で実現することだからです。

とくにこれは、ものづくりや工学、ITの現場においていえることかもしれませんが、「初めからすべてがうまくいく」ならば、それは「すでにあった技術」「すでにできあがっていたもの」でしかありません。それをただ繰り返しているだけでは、新しいものを生み出すことも、付加価値をつけることもできないでしょう。

誰でもできることを自分もできたからといって、評価が上がらないのは当然です。

逆に言えば、失敗やミスをしたときこそ、そこをどうにかして乗り越えることが、オリジナリティーや付加価値につながるといえるのです。

あるいは、事務的な業務においても、これは例外ではありません。

私たち人間というのは、個性はもちろんありますが、皆、似たような傾向を持っています。交通事故が起こりやすい交差点があるように、多くの人がミスをしやすいポイントというのがあるのです。

ある人が事務作業の中で犯したミスは、もしかしたら、「誰もがミスしやすいポイント」かもしれません。そこに「ミスを繰り返さない仕組み」をつくり、導入すれば、「ミスした人」ではなく「ミスをなくす仕組みをつくった人」になります。そうした日常業務における一工夫こそがクリエーティビティーであり、仕事の付加価値である、というのは言うまでもありません。

3つ目の理由は、ちょっとしたミスや失敗が起こる職場のほうが、得てして活気があっていい雰囲気だからです。完璧主義者ばかりがそろえば、失敗やミスは確かになくなりますが、同僚同士の会話も減り、なんだか暗い雰囲気になりがちです。ちょっとしたミスに対する叱責も強くなりがちで、仕事をするにも息が詰まってしまうでしょう。

実際、雑談では、失敗談を話すと場の空気がほぐれる、親近感が生まれるなんてことが、ビジネススキルとして言われます。

「ああでもない」「こうでもない」とわいわい言いながら乗り越えるからこそ、チームとしての連帯感や達成感につながるのではないでしょうか。

また、普段からミスや失敗が起こる職場は、いい意味で、ミスや失敗に「慣れて」います。ここ数年、「過去経験のないような大きな災害」が日本中で起こっていますが、そのたびに被害が出てしまうのは、「過去に経験がないから」です。

ちょっとしたミスや失敗を経験し、それを皆で乗り越えた実績があれば、いざ、「過去経験のないような大事件」が起きたとしても、「まずどのように対処すべきか」という基本動作ができるはずです。もちろん、大きなミスや失敗、事件や災害は起こらないに越したことはありません。しかし、何が起こるかわからない以上、できる限りの対策を取っておく必要があるのではないでしょうか。

小さなミスや失敗は、やがて起こってしまうかもしれない大きな事件のための「避難訓練」ともなるのです。

誰でも失敗はなくせない……ならば

このように、ミスや失敗は、職場の雰囲気をよくし、個人の能力向上のきっかけや新しいものを生み出すチャンスにもなりえます。ですから、ミスや失敗に的確に対処することで、職場における評価もぐんぐんと上げていくことができます。


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ただ、多くの人は、失敗やミスをしてしまった時点で、焦って保身に走ってしまいがちです。失敗やミスをしたとき、絶対にしてはいけないのは、「焦る」「言い訳する」「隠す」なのですが、実に多くの人が、失敗した瞬間に焦って、ギリギリになるまで隠し続けます。場合によっては、自分の見える範囲だけで取り繕おうとし、バレたら言い訳し始める……という行動をとります。

確かにミスや失敗をしたら、誰でも焦ってしまうでしょう。それはやむを得ないことです。しかし、失敗やミスは、積極的に克服を目指すことで、前述の3つのメリットを得られるわけです。ミスや失敗で強烈な焦りが湧いてきたら、とにかく一呼吸おいて、積極的な解決を目指しましょう。

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飯野 謙次:スタンフォード大学工学博士、東京大学特任研究員。

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