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2019.12.13

風邪対策、医師が教えるホントのところ

kencom編集部

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風邪対策というと何を思い浮かべますか?
手洗い、うがい、マスク、空気清浄機に除菌スプレー、さらにはビタミン剤やマヌカハニーなどなど、情報が溢れていて、実際何がいいのか迷子になっている人も多いのではないでしょうか?
そこでkencom監修医・石原藤樹先生に、巷で言われている風邪対策をジャッジしてもらいつつ実践しているものについて伺ってみました。
風邪が本格的に流行りだす前に、ぜひ参考にしてみてくださいね!

手洗い・うがい・マスク、三種の神器の有効性とは?

絶対やるべきは手洗い!

手洗い・うがい、そしてマスクの着用は、昔から風邪予防として当たり前のように言われていますよね。
ですが、日本以外で風邪予防として認知されているものは手洗いだけなんです。

風邪の感染経路として、もちろん飛沫感染もありますが、意外に多いのは手からの感染。
私の場合は病気の患者さんと接触する機会が多いこともあり、手洗いはかなりの頻度でしています。

では、手洗いの風邪予防効果はどの程度のものなのでしょうか。

2012年にPreventiveMedicine誌に発表された手洗いのインフルエンザ予防効果を検証したスペインの研究(※1)によると、1週間の手洗い回数が1~4回の人と比較して、5~10回の人は35%、10回を超えている人は41%、インフルエンザによる入院リスクが有意に低下。
また、不潔な場所に接触した可能性がある時に、帰宅してすぐ手洗いをする習慣のある人は、ない人と比較して35%有意に低下しているという結果がでています。
このことから、手洗いの習慣は風邪予防に効果があると言えるでしょう。

ちなみに上記の結果に対し、アルコール消毒剤や薬用石鹸などの使用の有無は、あまり影響を及ぼさないようです。

手洗い後の拭き方も大事

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また、公共のトイレによくある温風で手を乾かすハンドドライヤーは、病原体を含む水滴を周囲にまき散らすというリスクがあるため、極力使用を避けたほうがよいでしょう。
同じく、何度も同じタオルやハンカチを使用したり家族間で共有することも、雑菌がわきやすく不衛生なのはもちろんのこと、感染予防の観点からもおすすめではありません。
私が自宅や院内で手洗いした際は、ペーパータオルで水気をきちんとふき取り、すぐに捨てるようにしています。
この方法がいちばん衛生的で、感染予防にも効果があると思います。

風邪予防に『緑茶でうがい』は賛否両論!?

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うがいの習慣は日本では定着していますが、海外では口をゆすぐぐらいで、うがい=風邪予防といった考え方はあまりなく論文なども発表されていません。

お茶に含まれるカテキンには抗ウイルス作用があり、培養細胞においてはインフルエンザウイルスの感染力を弱めた、という報告もありますが、うがいを水でしてもお茶でしても、現状明確な差はなさそうです。
さらにうがい薬も、病気でない健康な人での明確な感染予防効果は確認されていません。

とはいえ病原体が付着しやすい場所を洗い流すというのは決して悪いことではないので、帰宅後に水でうがいをする程度の習慣があればよいと考えています。

マスクは風邪をひいている人がするべき

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風邪予防のためにマスクを着用している人をよく見かけますよね。
ですが、健康な人がマスクを着用して予防につながるのかというと、そのような報告は殆どなく疑問が残ります。
勿論医療従事者のように、感染する機会の多い人は、マスクによる予防が必要ですが、一般の方ではそこまでの必要性はないのではないでしょうか。

一方で風邪をひいている人がマスクを着用することで、ウイルスの拡散を防ぎ感染リスクが低下するのは確実です。
咳エチケットという考えは世界的にも広まっていますので、風邪をひいてしまったり咳がでているときは、必ずマスクを着用しましょう。

風邪予防に有効な栄養素とは?

ビタミンC摂取の真実に迫る!

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ビタミンCには抗酸化作用や抗菌作用があるため、風邪予防のために積極的に摂取している人もいるのではないでしょうか。

風邪予防とビタミンCの関係性は多数の臨床試験が行われており論文なども発表されています。
2013年に発表された最新のコクラン・レビューのレポート(※2)によると、1日200㎎以上のビタミンCを継続的に使用した場合、偽薬と比較して風邪の罹患率は3%低下する傾向を示したものの、統計的にギリギリ有意とはなりませんでした。
ですが、マラソンランナーやスキーヤー、兵士など肉体的ストレスにさらされている人を対象としたデータでは、52%有意に低下していたと報告されています。
さらに、ビタミンCを常時摂取することにより、風邪症状の持続期間が成人で8%、小児では14%短縮していることも確認できており、特に小児では1日1000㎎から2000㎎という高容量を摂取した場合では18%の短縮がみられ、重症度も低下していることが認められています。

ビタミンCによる風邪予防効果は、一般的な人はわずかながら、風邪をひきやすい小児やスポーツをされている方は一定あるのではないかと言えそうです。
ただし症状を発症した後に摂取した場合は持続期間や重症度に影響を及ぼさなかったことも報告されているので、上記はあくまで予防として継続摂取した場合に限ります。

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ちなみにビタミンCを多量に摂取しても大丈夫なのか疑問が沸くと思いますが、過剰に体内に溜まることはなく尿として排泄されるため、実害はほぼありません。
ただし尿としてたくさん出ることにより結石になりやすい人もいるので、体質によっては注意が必要です。

日本ではまだ認知度の低い亜鉛の有効性とは?

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亜鉛は体内で生成できない栄養素なので欠乏しやすく、欠乏すると味覚障害や感染症などを発症しやすくなります。
特に後者の知見により、亜鉛を風邪の治療に使えないか?という考えが生まれ、臨床試験が行われるようになりました。

海外では風邪薬として亜鉛ドロップという飴が使用されている地域もありますが、実際のところはビタミンCと同様に、統計的な有意性は確立されていません。
ただし、論文によっては風邪をひいている時に亜鉛ドロップ(1錠に亜鉛13~23㎎含有)を2時間ごとに使用したところ、症状の持続期間が1.3日~6.9日短縮したというような報告もあります。

そのことから、風邪予防というよりは、症状を軽減したり回復までの期間を短くする効果は多少なりともあると言えそうです。
通常1日の亜鉛摂取量は10㎎程度あれば十分ですので、風邪症状を軽減するためには高容量の摂取が必要なことも同時に覚えておきましょう。

私も一時期、亜鉛のサプリメントを服用していたことがあります。
食事から高容量の亜鉛を摂取するのはなかなか難しいため、サプリメントを上手に活用するのもいいのではないでしょうか。

咳の症状を和らげるには、はちみつに注目!

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風邪の症状である咳は、身体の防御反応によるものなので害はないですが、つらいので症状を緩和するため咳止めを使用したくなりますよね。
ですが、2017年に医学誌『チェスト』で掲載された論文(※3)によると、市販の咳止めはほぼ効果がないと発表されています。
その論文内で効果があったとされるものは、先ほどの亜鉛ドロップとはちみつでした。
寝る前にはちみつを飲むと、咳が減り、夜目覚める回数も減ったとの結果が出ています。

はちみつには鎮静効果や抗菌・抗ウィルス作用があると言われていますので、その作用によるものだと思われます。

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はちみつは単体でもいいですし、コーヒーにも咳をおさえる鎮静効果があるので、私は咳でつらい時にはちみつコーヒーを飲むこともあります。
眠れなくなって困る方はカフェインレスコーヒーに入れるのもおすすめです。

100%の予防法はないからこそ基本を確実に!

データを基に色々な風邪対策をご紹介しましたが、絶対風邪をひかないということはありえません。
規則正しい生活や手洗いなど、基本中の基本を習慣付けることが予防の近道だと言えるのではないでしょうか。

▼参考文献

<監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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