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2019.11.01

「おひとりさま」が60歳から年金を増やす方法|老後1円でも多くもらうためにはどうするか

東洋経済オンライン

50代・一般職・年収450万円……そんな女性が「おひとりさま」で迎える老後に、年金を1円でも多くもらうコツとは?(写真:Ushico/ PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/310925?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

50代・一般職・年収450万円……そんな女性が「おひとりさま」で迎える老後に、年金を1円でも多くもらうコツとは?(写真:Ushico/ PIXTA)

「いったい私は、何歳まで働けばいいのでしょう?」

ファイナンシャルプランナーとして、個人のライフプラン相談を受けている筆者のもとにお見えになったAさんは、開口一番、ため息まじりに話しました。

Aさんは、56歳の独身女性。都内の短大を卒業後、金融機関に就職しました。仕事は忙しく上司から叱られることも多かったけれど、時代はバブル絶頂期、華やいだOL生活だったようです。同期や職場の先輩など女性数人で海外旅行にも頻繁に出かけました。

「仕事がとくに好きだったわけでもないのですが、何となく結婚することもなく、気づいたらこの歳になっていた、というのが正直なところです。友達も私と同じような境遇なので、あまり疑問にも思わずここまで来てしまいました。でも、最近、テレビでは年金が足りないとかいろいろ言っているし、のんきな友人たちでさえ、会えば必ず老後の話、いったい何歳まで働けばいいのか、と不安になったんです」

年収450万円、事務職のベテラン世代に迫る不安

Aさんの現在の年収は450万円。「うちの会社、男性はみんな年収が高いんですけど、私くらいの年齢の女性は役職もありませんし、仕事も事務職なので年収ってこんなもんなんです。男女雇用機会均等法とか女性活躍推進法などで、女性にも男性と同等のポジションを、といった動きはありますが、その対象は私たちより若い世代です。とくに重要な仕事を任されることもなく、時間だけ経っているんです。まあ、お給料をいただけるだけましなのでしょうけれど、正直いってぜいたくなんてできません……」

Aさんのマンションは家賃10万円で、支出の約半分を占めています。食事は基本自炊、洋服なども計画的に買うなど、賢くやりくりして、楽しみの旅行費用を捻出している様子がうかがえます。

Aさんのねんきん定期便を拝見しました。「こんな金額しかもらえないなんて、ショックです」と、Aさんは浮かない顔です。なるほど、年金見込み額は年間157万円ですから、月にならすと13万円余り。今の家賃を払うと手元には毎月3万円くらいしか残りません。

「ねんきん定期便の見方がイマイチわからない」というAさん。書いてある年金額は「現在の給料が60歳まで継続することを前提とした見込み額」だとお伝えしました。さらに、昭和38(1963)年生まれのAさんは、特別支給の老齢厚生年金が63歳から支給されます。

「65歳ではなくて、63歳から特別に年金がもらえるんですか?でも金額は年間77万円……。これでは生活ができません、やっぱり働くしかないのか」

「年金を受け取りながら働きすぎる」と損する制度

Aさんの会社は定年が60歳です。しかし多くの先輩たちは雇用延長で職場に残るのだそうです。Aさんも「よく知った職場で、慣れた仕事をして、収入が少なくなっても、働けるのであれば働きたい」と言います。Aさんの場合、仮に月20万円で65歳まで働くと、老齢厚生年金が年間6万5000円増えます。すると、老齢基礎年金も合わせた年金額は163万5000円となります。

しかし、「先輩から『定年後も働くと年金が損するからやめたほうがいい』と言われたのですが、どういうことでしょうか」とAさん。気になっているのは、「在職老齢年金」という制度のことです。

定年後も会社員として働き続けると、受け取れる年金が一部カットされたり、まったく受け取れなくなったりします。とくに65歳より前段階の在職老齢年金は、年金が受け取れるかどうかの判断基準が28万円と低めに設定されているので、影響を受けた人も多いのです。給料と老齢厚生年金(ここでは特別支給の老齢厚生年金)の月額の合計金額が28万円を超えると、その半分が支給停止となるのですから、Aさんが気になるのも無理がありません。

男性の場合、特別支給の老齢厚生年金は昭和36(1961)年4月1日生まれ以前が対象ですが、女性は5年遅れの昭和41(1966)年4月1日生まれ以前が対象です。Aさんの場合、特別支給の老齢厚生年金の額は月6万4000円、つまり給料が21万6000円以上にならなければ年金はカットされません。

仮に給料が30万円であれば、老齢厚生年金と合わせると36万4000円で、28万円を8万4000円オーバーしますから、その半分の4万2000円がカットの対象です。その場合、年金がカットされるのはショックですが、総収入は増えますし、働いて増やした厚生年金は65歳以降受け取れます。この在職老齢年金制度は「高齢期の就労意欲を阻害する」という理由で、現在見直しが検討されています。

もし、Aさんが特別支給の老齢厚生年金を受給するとしても、生活費には使わずに貯めたいところです。63歳から65歳まで老齢厚生年金を貯めれば約230万円となります。さらに65歳からの国民年金と厚生年金も受け取らず、70歳まで「繰り下げ」をすると、Aさんは70歳以降に余裕が出てきます。

65歳からのAさんの公的年金は年間157万円。仮に65歳まで働くとさらに6万5000円年金が増えますから年間163万5000円になります。これを65歳から受給せず70歳まで繰り下げると142%増の年金額になり、年間232万円に増えます。月にならすと20万円弱です。

「えっ、そんなことができるんですか」とAさん。どうやら繰り下げ受給を知らなかったようです。年金受給を繰り下げると月単位で年金の増額が行われ、その増額率は一生変わりません。Aさんが65歳から年金受給せず繰り下げると、月0.7%ずつ年金額が増えていきます(税金など控除されるので手取り金額の増額率は異なります)。

「70歳から年金を月20万円もらえるなら、田舎のほうに引っ越して家賃を抑えたり、節約したりすれば何とかやっていけそうです」と、Aさんは表情が明るくなりました。

「老後のチャレンジ」は50代のうちに始めよう

Aさんが70歳まで年金の繰り下げをする場合、65歳から70歳までをどう暮らしていくかが問題になります。仮に月20万円の生活費を貯蓄で賄うとすれば、5年間(60カ月)で必要な額は1200万円です。


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聞けば、Aさんは定年後、「退職金で1000万円はもらえそうです」とのこと。会社に問い合わせをして、金額をしっかり把握するようお願いしました。また貯金も500万円ほどあり、さらに若い頃から続けてきた一般財形が「ひょっとしたら500万円くらいありそう」と。「私の老後は何とかなりそうですね」と、Aさんは初めて笑顔になりました。

ここで、筆者はAさんに違う質問をしてみました。「人生100年というと、これからまだ50年近くありますよね。Aさんは今のお仕事が好きなわけじゃないっておっしゃいましたが、好きなことって何ですか?」。するとAさんは「料理が好き」と言うのです。「誰かに料理を振る舞い、喜んでもらえる仕事がいつかできたらって、ちょっと思ったりした時もあったんですよね」。

Aさんは65歳まで今の職場で頑張れば、老後の暮らしは何とかなりそうなメドが立ちました。でも、ほかにやりたいことがあるのであれば、チャレンジしてみるのも今のうちなのではないかとも思うのです。それをお伝えすると、「介護施設とか学校の給食とか、70歳になっても働ける場所ってありそうですね。どうせなら、やりたいことをやってお金がいただけるような人生にしたいですね。将来に生かせるような資格の勉強もします」と、Aさんは意欲満々になりました。

ファイナンシャルプランナーが一生懸命アドバイスして、どんなプランを立てたとしても、結局お客さま自身の気持ち次第です。お金の管理の仕方、年金の知識をほんの少しお伝えしただけですが、「これからに少し自信が出てきました」とAさん。「いつまで働いたらいいのかとため息をつくより、楽しみながら働いていける自分になりたいですね」と、帰り際の笑顔が印象的でした。

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山中 伸枝:ファイナンシャルプランナー(CFP®)

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