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2019.11.24

世界に認められた「出汁」のチカラ。注目すべき、和食ならではの特徴と健康視点

kencom公式:管理栄養士・圓尾和紀

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日本で1000年以上前から現代まで受け継がれ、発展してきた日本食。その日本食の根底を支えているのが“出汁”です。

これからの連載では、当たり前にあるけど意外と知らない出汁の健康知識や暮らしにすぐに役立つ出汁の使い方などをお送りしていきます。ぜひご家庭での普段の食事に活かしていただけたらと思います。

海外の出汁と和食の出汁の違い

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出汁は和食だけの文化ではなく、世界各地の料理にもさまざまな出汁が使われています。しかし、その中でも日本の出汁は珍しい特徴を持っています。

その特徴の一つが、素材です。日本の出汁の代表食材といえば、鰹節と昆布、他にはいりこ(煮干し)や干し椎茸などがありますよね。
海外に目を移すと、例えばフランスにはフォン・ド・ボーという、骨付きの牛すね肉や仔牛の骨、さらに香味野菜などを炒めて煮出す非常に複雑な出汁があります。また中国には湯(タン)と呼ばれる、こちらも肉や魚介類、野菜などで出汁をとるものがあります。これらをご家庭でとろうすると、まず生の肉や魚、多種類の野菜が必要ですし、とるのにも何時間もかかり大変です。

それに比べて日本の出汁は乾物なので、一度買っておけば保存がききます。しかも昆布であれば水に浸けておけば勝手に出汁が出ますし、鰹節は沸騰した湯に入れてたった3分で本格だしがとれてしまいます。

最近ではインスタントの顆粒だしなどを使う家庭が増えていますが、日本の出汁はもともとがインスタントにできているのです。本物の出汁が家庭で手軽にとれてしまう日本は恵まれているなあと感じます。

世界に認められた和食の健康効果

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そんな日本の出汁は世界でも注目を浴びています。象徴的な出来事が、2013年の「和食」のユネスコ無形文化遺産への登録です。農林水産省が作成した資料では、和食を「素材の尊重」「栄養バランス」「季節性の表現」「食生活と年中行事との関わり」の4項目で紹介しています。

栄養バランスの項目において、『一汁三菜を基本とするスタイルは、理想的な栄養バランスと言われてる。うま味を取り入れることで、動物性油脂の少ない食生活を実現し、日本人の長寿や肥満防止に役立っている』という記述があり、まさに和食の健康に対する良さが世界に認められたといっても良いでしょう。

日常の食事が欧米化し日本食離れが進む一方で、生活習慣病や肥満の問題が増えている今だからこそ、伝統的な出汁の魅力を改めて見直したいですね。

出汁をとることで甘いものや脂っこいものを控えられる

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では、具体的に出汁の健康効果はどこにあるのか。私がもっとも重要だと考えるのは、「食生活全体を整える力がある」ということです。

出汁が持つうま味にはグルタミン酸やイノシン酸などのアミノ酸や核酸があり、これが舌の味を感じる細胞にくっつくとヒトはうま味を感じます。ちなみにうま味を世界で初めて発見したのも日本人で、海外でも“Umami(うま味)”で共通語になっています。

京都大学の研究*によって、出汁の利いたエサを与えたマウスでは油脂の摂取量が減少したことが分かりました。ヒトが病みつきになる味は砂糖の甘味と油脂のこってりした味、そしてうま味の3つがあるのですが、普段から出汁のうま味をとっている人は、甘いものやこってりしたものの摂取量が少なくなるとも考えられる結果です。

生活習慣病や肥満の原因となっている砂糖や油のとりすぎは、日頃から出汁を使った食事をとることによって抑えることができるかもしれないのです。実際に私も家庭で出汁をとり始めてから甘いものや脂っこいものをそれほどとらなくなりましたし、食事指導を行ったお客さんからも多数そのような声をいただいております。出汁は自然と食生活を健康的なものに整えてくれる救世主とも言えるのではないでしょうか。

出汁を生活に取り入れてみよう

良さは分かったけど、それでも昆布や鰹節は扱いにくそうでハードルが高く感じる…。そういう方もいらっしゃるかもしれませんが、決してそんなことはありません。そこで次回の記事では、天然の素材でありながらさらに手軽に出汁をとることができる“出汁パック”の活用法についてご紹介します。

先人が到達したうま味の結晶、出汁。その叡智を家庭で活かすことで日々の健康づくりに活かしていただければと思います。

参考文献

伏木亨『だしの神秘』朝日新書,2017

著者プロフィール

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■圓尾和紀(まるお かずき)
“日本人の身体に合った食事を提案する”フリーランスの管理栄養士。日本の伝統食の良さを現代の生活に活かす「和ごはん」の考え方を伝えている。『一日の終わりに地味だけど「ほっとする」食べ方』がワニブックスより発売中。

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