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2019.11.21

「身体を動かすスイッチ」甲状腺ってどんな臓器?【甲状腺の働き前編】

kencom公式ライター:松本まや

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食べ物をエネルギーに変え、生きていくのに不可欠な「代謝」。この代謝機能を促進するホルモンを分泌しているのが、鎖骨の上にある小さな臓器「甲状腺」です。身体活動に大きく影響する重要な臓器でありながら、甲状腺の疾患は非常に身近な存在。
そんな甲状腺の役割、甲状腺疾患の概要と向き合い方について、虎の門病院内分泌センター長の竹内靖博先生に教えていただきました。

竹内 靖博(たけうち・やすひろ)先生

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虎の門病院内分泌センター長。
1982年東京大学医学部卒。米国留学、東京大学医学部腎臓内分泌内科講師などを経て、現職。日本内科学会評議員、日本内分泌学会・日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会理事など。内分泌疾患全般、特に副甲状腺疾患、代謝性骨疾患を専門とする。

身体を司る小さな臓器「甲状腺」の役割とは

内分泌器「甲状腺」

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甲状腺とは、喉仏と鎖骨や胸骨の間にある重さ15~20グラム程の内分泌器官です。首にあるとイメージされることが多いため、リンパ節の腫れなどを甲状腺の腫れと勘違いされる方も多いですが、もう少し下、どちらかといえば「鎖骨の上」と覚えておく方が正確です。皮膚のすぐ下にあるため、正常な状態でもほとんどの人は触れることができるのが特徴です。

ところで「内分泌器官」とは何でしょうか。内分泌器官とは、「ホルモンを生成する器官」のことで、内分泌器官から分泌されるホルモンは、ヒトの身体を一定の状態に保つために大事な役割を果たしています。

生命の維持に不可欠なホルモンの役割

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ヒトの身体には様々な種類のホルモンが存在しています。それぞれのホルモンは特定の内分泌器で合成・分泌されて血液によって全身に運ばれ、受容体(レセプター)のある組織・器官で決まった作用を起こします。ホルモンの受容体はそれぞれ決まっていて、受容体のないところでは作用することができません。

糖尿病の治療に用いられることでよく知られる「インスリン」は、膵臓で分泌されるホルモンのひとつで、血糖値を下げる作用があります。また、女性ホルモンとしてよく知られる「エストロゲン」と「プロゲステロン」は卵巣で分泌され、肌つやを良くしたり、女性らしい身体つきを保ったりする働きもあると言われています。

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これらのホルモンの分泌は、少なすぎても多すぎても身体を正常な状態に保つことができなくなってしまいます。そこで身体には、ホルモンの作用を適切な状態に保つための「フィードバック」の仕組みが備わっています。
エアコンの温度を調節するサーモスタットをイメージしてみてください。気温が高くなれば下げるように作動し、低くなれば上げることで快適な気温が保たれていますよね。同じように血液中のホルモンの濃度が高すぎれば分泌を抑制し、低すぎれば促進する仕組みが働いています。
視床下部からホルモンの状態の情報を受け取り、状態に応じて内分泌器官を刺激するホルモンを分泌しているのが、名前の通り脳の下方にある下垂体です。

それでは、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンはどのような役割を持っているのでしょうか。

甲状腺ホルモンの働きは2つ

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甲状腺で分泌される甲状腺ホルモンには大きく分けて、2つの役割があります。1つが「全身の代謝を活性化すること」、もう1つが「交感神経の活動性を高めること」です。

①全身の代謝を活性化する

甲状腺ホルモンは、全身の代謝を活性化する働きがあります。代謝が活性化すると、身体の脂肪をエネルギーに変える活動が促進され、コレステロールや中性脂肪が溜まりづらくなります。

②交感神経の活動性を高める

交感神経とは自律神経のうち、身体の緊張を高めて活動的な状態に持っていく働きをしており、「昼の神経」などと言われることもあります。甲状腺ホルモンには、この交感神経の活動性を高める働きがあります。

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甲状腺ホルモンによって代謝が促進され、交感神経の働きが活発になると、太りにくくなったり、より活動的になったりと、良い作用ばかりあるように感じてしまうかもしれません。ですが、休まず全力で頑張り続けてしまうと疲れるだけでなく、身体への負担も大きいですよね。逆に甲状腺ホルモンが不足すると、元気が出ず、やる気のない状態に陥ってしまうことがあります。甲状腺ホルモンの量は多すぎても少なすぎても、身体活動に悪影響を及ぼしてしまいます。

甲状腺のホルモンの分泌量が適切に保たれるようコントロールしているのが、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン「TSH」です。血液中の甲状腺ホルモンの量が少なくなると、TSHが多く分泌され、甲状腺ホルモンの分泌量を増やすよう甲状腺を刺激します。

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甲状腺の異常はどう検査するのか

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身体が正常な状態であれば脳下垂体によって適切な量が分泌されるようにコントロールされている甲状腺ホルモンですが、様々な原因によって異常が生じることがあります。

甲状腺の異常は、まず血液中のホルモンの量を検査することで明らかにできます。主に調べられるのは、脳下垂体から全身の甲状腺ホルモンの量に応じて分泌され、甲状腺ホルモンの分泌を促す役割のあるTSHと、甲状腺ホルモンのT4ホルモンの2種類です。
甲状腺機能が亢進し、過剰に甲状腺ホルモンが分泌されている場合は、T4ホルモンの値が上昇し、甲状腺の機能を促進するTSHの値は減少します。逆に甲状腺機能が低下している場合、T4ホルモンの量は少なくなり、分泌を促すためTSHの値が上昇します。

その他では、超音波を使用した検査や核医学を使用した検査もあります。例えば甲状腺機能が亢進する病気の1つ、バセドウ病の場合は血流が速くなっていることが超音波検査によって明らかになります。

代謝を司る「甲状腺」に問題が発生したらどうなる?

このように甲状腺の異常は検査によって比較的簡単に発見することができます。そして早期発見できれば、生活に大きな支障をきたさずに治療をすることも可能な病気です。
次の記事では、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されたり、逆に十分に分泌されなかったりした場合に具体的にどのような影響が出るのか、そしてどのように治療が行われていくのかについて解説します。

■これって甲状腺の異常?自己チェックと付き合い方

著者プロフィール

■松本まや(まつもと・まや)
フリージャーナリスト。2016年から共同通信社で記者として活躍。社会記事を中心に、地方の政治や経済を取材。2018年よりフリーに転身し、医療記事などを執筆中。

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