メニュー

2019.11.07

時間をどうやって確保するのが正しいのか【定時帰りのライフハック#2】

kencom公式:心理学ジャーナリスト・佐々木正悟

記事画像

いつも時間がないと感じることはないでしょうか?
特に仕事が忙しい方に多いですが、やりたいことがあってもなかなかその時間を取れずにずるずると時間が経ってしまい、結局できなかったり駆け足でやる羽目になったりすることがあるはずです。
これは、時間の取り方に問題があるのかもしれません。一緒に見ていきましょう。

時間は常に「現在」に確保することを心がけよう!

「マニャーナの法則」に見る時間の取り方とは

「マニャーナの法則」というタスク管理手法をご存じでしょうか?
マニャーナとはスペイン語で「明日」のことを意味します。同名の書籍(※1)があるのですが、この本、書きっぷりがかなりユニークで、ちょっと理解されてない印象があります。

一言でいうとこの手法は

「今日発生した仕事(タスク)は原則として明日やることとして、今日という日をなるべく空白にしておく」

という方法論なのです。

これだけではなぜ有効な方法であるかわかりにくいでしょうが、実際にこの手法を厳守するようにすると、非常に強力な方法論であることがわかります。
これは、私たちがつい忘れがちな二つの事実があるからです。それは、

1.時間を現に使うという際に、使っている時間はいつでも「現在」
2.未来のある時間帯が「空いていて使える」という保証が100%になることは決してない

ということ。
いつでも使っている時間は「現在」で、しかも「予定通りに行動できる保証が100%ではない」ならば、何かの活動をするための「今」という時間を埋めてしまってはまずいという考え方なのです。
なるべく、あてにならない「未来の時間」に何でも置くことによって、いろいろなやるべきことの中でもいちばんやるべきこと「だけ」を、常に「現在」でこなせるようにしておかなければいけません。

だからいつもいつも「現在」が埋まっているようではいけないのです。現在は空白であればあるほどいいわけです。少なくとも時間活用の観点からすれば。

無理にでも今日を空けることで仕事をする余白ができる

他に同様の考え方で書かれたものに、『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術 』(借金玉著・KADOKAWA刊)という本(※2)があるのですが、その中でもなかなかすごかった方法として、散らかっている机を一瞬で片付ける方法が書いてありました。

とにかく机の上にのっている物を全部、腕で床下に落とす、というのです。

こうでもしないと机を片付けられない人は、「作業場」を確保できないというわけでしょう。時間に関する仕事術の基本も、実はまったく同じことなのです。
強引にでも何でもいいから、とにかく「現在」を空ける。
「現在」に空白を作るのです。そうすることによって、その空白時間が作業する場となるわけです。

まさに「マニャーナの法則」における「仕事は原則明日とする」というやり方は、「明日」という床下に仕事をすべて落としてしまうことによって、「今日」という机の上から物(タスク)を一掃することが意図されているのです。
タスクが多すぎて、何から手をつけていいかわからなくなったり、テンパったりしたときには、とにかく「現在」を空けること。
そのためのいくつかの手法が、仕事術と呼ばれているものなのです。

マニャーナの法則であれば何度か述べたとおり、「明日」を使って「今日現在」をあけます。

頭の中のスペースに空白を作るのも作業を進めるコツ

GTD(Getting Things Done)という有名なアメリカ発の仕事術であれば、「2時間まるまる使って、頭の中の気になることをすべて書き出す」というやり方があります。

これがGTDのすべてではありませんが、いちばん有名なのはこの部分です。まさにこれこそ、「気になることを全部書き出す」ことにより「今現在の頭の中」を「空っぽ」にするのが目的なのです。
今現在の頭の中こそが、仕事の「作業スペース」なのですから、それが気になることであふれかえっていては、物が山のように散乱している机で作業ができないのと同じで、仕事が進みません。

マニャーナ流儀で仕事を原則明日にすることにしたとしても、一見したところ仕事は進まない。というより、可能な限り仕事が「後ろ倒し」になるばかりで、ますます停滞しそうに思うでしょう。
しかし、やってみるとわかるとおり、現実はその逆になります。何でも前倒しにして、何でもすぐにやろうとするのは、「いますぐやらないと!」という気持ちの焦りを招くばかりで、仕事は進まなくなってしまうのです。

GTDの入り口のところで「書き出し」作業をするだけでも頭がスッキリするというのは、実践者がよく語ることです。
もちろん、仕事を書きだしたからと言って仕事は進みません。そんなことをする暇に仕事を進めたほうがいいように思うでしょうが、これまたやってみるとわかるとおり、実際には書き出してスッキリした方が仕事が進み始めるのです。これこそが、空白を作るということになります。

現在の時間を空けて、仕事に集中しよう!

作業をするには作業スペースが必要なのです。
仕事をするための時間のスペースは、現在という時間しかあり得ません。ぜひ、一度今日発生した仕事を全て明日に回してみてください。
その捗りぶりに驚くかもしれませんよ。

参考文献

※1:マーク・フォースター著・青木高夫訳、『仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則・完全版』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、2016

※2:借金玉著、『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』(KADOKAWA)、2018

著者プロフィール

記事画像

■佐々木正悟(ささき・しょうご)
心理学ジャーナリスト。「ライフハック」の第一人者。専門は認知心理学。1997年獨協大学を卒業後、ドコモサービスに入社。2001年米アヴィラ大学心理学科に留学。04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。05年帰国以来、「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求し続けている。
著書にベストセラーとなった『ビジネスハックス』『スピードハックス』などのハックシリーズ(日本実業出版)のほか、『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)、『やめられなくなる、小さな習慣』(ソーテック社)などがある。

この記事に関連するキーワード