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2019.10.31

便の悩みをスッキリ解決! 過敏性腸症候群の最新治療法【過敏性腸症候群・後編】

kencom公式ライター:森下千佳

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しょっちゅう下痢を繰り返しているのに、体質だからと諦めていたり、市販の下痢止め薬でその場をしのいでいませんか?
命に関わる病気ではないけれど、QOL(生活の質)を著しく下げる過敏性腸症候群。
適切な治療を受ければ、治すことができます。今回は、具体的な治療法を過敏性腸症候群の最先端の研究を手がけている、慶應義塾大学病院消化器内科専任講師の正岡 建洋(まさおか たつひろ)先生にお話を伺いました。

お腹の調子が劇的に改善することも!過敏性腸症候群の治療と予防

過敏性腸症候群の検査方法

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過敏性腸症候群の治療では、まず問診、視診、触診などの診察が行われいます。問診では、排便回数や、便の状態、困っている症状や既往歴などを確認するとともに、普段の生活スタイルや、社会環境、人間関係など心理面についても詳しく聞いていきます。

過敏性腸症候群と疑われる症状があっても、まずは大腸がんなどの他の病気が隠れている可能性もあるので、そうした病気と識別するために大腸内視鏡検査や血液検査などの検査を行います。検査の結果、大腸がんや腸炎などの病気が見つからなかった場合に過敏性腸症候群だと診断します。

過敏性腸症候群の最新治療

治療の基本は、困っている症状を和らげる薬を使う薬物療法と、生活習慣の改善を行っていきます。不調の原因がはっきりしている場合は、それを取り除くことが最大の改善方法になりますが、現実的には仕事や試験など避けられない場合も多くあるので、うまく付き合っていく方法を探っていきます。

薬物治療:薬で下痢・便秘の悩みを改善

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薬は基本的に「腸に作用する薬」を症状に合わせて使い分けていきます。

腸に作用する薬としては、下痢を起こす患者さんに使われるセロトニン受容体拮抗薬や、便を軟らかくする粘膜上皮機能変容薬、腸の動きをコントロールして下痢を抑制したり便秘を改善したりする消化管運動機能調節薬、腸内の環境を整える乳酸菌製剤などが使われます。
また、これらが効かない場合に抗うつ薬や抗不安薬といった自立神経を調節する薬が使われます。

過敏性腸症候群は慢性の病気なので、「薬を一生飲まなくてはいけないの?」とよく聞かれますが、そうではなく習慣の改善もしていきながら徐々に薬を減らしていき、最終的には薬がなくても生活できるところを目指します。

食事療法:最新の食事療法『低FODMAP食』

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薬に合わせて欧米で注目されているのが食事療法の『低FODMAP食』です。
FODMAPとは糖類のうち「単糖、二糖、オリゴ糖、多糖の一部」を指し、低FODMAP食とはこれらを控えた食事のことです。これらの糖類が多く含まれた食品が小腸で十分に吸収されないまま大腸に入ると大腸内で発酵して腹痛、下痢、おなかの張りなどを起こす原因になることが最近分かってきました。

控えたい食品は、ソンビトールや、マン二トール、果糖、乳糖が含まれた加工食品(食品表示を確認)小麦、たまねぎ、カシューナッツやピスタチオ、牛乳やヨーグルトなどの乳製品、豆類、など。

ただし、これらの食品は栄養素を豊富に含むものも多く、まったく食べないように勧めているわけではありません。また、個人の判断で実践することは危険ですし、逆にストレスになったり、なかなか継続も難しいことがあります。実践してみたい場合は医療機関に相談しながら進めて行きましょう。
ちなみに、和食は低FODMAP食に近い食事だと言われています。

生活リズム改善がお腹を労わるベターな方法

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生活リズムが崩れると、体内時計が狂います。そうすると呼吸や血液循環、消化器の働きなどを調節している自律神経のバランスが乱れ、心身に変調をきたすことがあります。前にも触れた通り、自律神経のバランスの乱れは腸の働きにも影響します。
1日のリズムが乱れている人は起床時間、食事の時間などできるだけ毎日一定にするように心がけましょう。睡眠や休息を十分に取ることはストレス解消にもつながり、過敏性腸症候群が起こりにくい身体に整えることができます。

定期的な運動は改善効果大

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運動は非常に重要です。運動といっても激しい運動をする必要はありません。毎日の散歩や、ジョギング、サイクリング、プール歩行など、定期的にできる無理のない有酸素運動を取り入れてみましょう。運動をすることにより、乱れた自律神経のバランスが整ってくるので、ストレスが解消されまうす。腸自体の働きの改善にも役立ちます。

実際に、過敏性腸症候群の患者さんに運動を続けてもらうと、症状が改善される方が多いので、ぜひおすすめします。

食事から食物繊維を多めに摂る

果物や野菜、きのこ、海藻などに多く含まれる食物繊維を取ることは、下痢型、便秘型のどちらにも大変重要です。食物繊維には、水溶性と不溶性があるのでバランスよく両方を取ることをおすすめします。

レタスやなどのサラダに入っているような野菜や、きのこ、芋類など、普段私たちが食べる野菜は一般的に不溶性の食物繊維が多いので、玄米などの穀物、わかめ、ひじき、こんにゃくなど水溶性の食物繊維を意識して取るようにしましょう。

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便秘型はストレッチも有効

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ストレッチは便秘に大変効果あります。
便秘で悩む方の中には、お腹の中で大腸が異常にねじれている「腸の形態異常」が起きている人がいます。腸がねじれていると便が通りづらく、排便をするために大腸が強く動く必要があるので、排便の際に痛みを伴うこともあります。

こういう方におすすめをするのは、お腹をひねる運動やストレッチ。ヨガや、ダンス、テニス・ゴルフなどが効果的だと思います。また、お腹をマッサージして刺激を与えることも効果的です。

トイレは洋式より和式を

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最近のご家庭は、腰掛けるタイプの洋式トイレがほとんどですが、実は和式トイレでしゃがむ姿勢というのはいきみやすく、便を出すのにすごく良いことがわかっています。もし、便が出づらくてトイレタイムに選べるような環境があれば、和式タイプを選ぶと良いと思います。

また最近は、洋式トイレのご家庭でもしゃがむ姿勢が取れるように、洋式トイレ用台が販売されているので、試してみるのも良いかもしれません。

腸に良い生活で全体の健康も向上させよう

過敏性腸症候群に良い生活習慣はどれも、全身の健康につながるものばかり。取り入れてみると、体重が減ったり、肩こりが治ったりと思わぬ副産物もあるかもしれません。

ただ、自己判断で、過敏性腸症候群だと決めるけるのは危険です。実は大きな病気が隠れていることもあるので、慢性的にお腹の調子が悪い方は一度は消化器科内科に相談をしてみましょう。

正岡 建洋(まさおか たつひろ)先生

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1997年 慶應義塾大学医学部卒 慶應義塾大学病院内科での研修の後、慶應義塾大学医学部内科学(消化器)に入局。
関連病院や慶應義塾大学病院救急部を経て、2008年よりベルギー・ルーヴェン大学に研究留学。
2012年より慶應義塾大学医学部内科学(消化器)助教。2016年より同専任講師。専門は上部消化管疾患、機能性消化管疾患。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
お茶の水女子大学理学部卒。2000年に東海テレビ放送に入社し、主に報道記者として事件、事故を取材制作。女性ならではの目線で取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。2009年に家族の転勤で、ニューヨークに渡り4年間移住。当時日本ではなかなか手に入らなかったオーガニックのベビー商品、コスメなどを日本に届けるベンチャー起業を立ち上げに関わる。2013年帰国し翌年に女児を出産。2016年より子宮頸がん検診の啓発活動と健康教育を手掛ける一般社団法人の理事を務める。2019年よりフリーのエディターとして、主に女性と子供の健康、子育てに関する取材、発信している。

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